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嘘つき英雄と嘘の妹 ~旧版~  作者: 野良犬タロ
ロキウス編
59/101

#59 和解


~メロ アステリオン 浄化の泉~


「ぷはっ!!」

 水面から一気に顔を出して息を大きく吸い込むのです。

 数秒とせずにグラも顔を出したのです。

「あ!」

 グラの痣の色が薄くなって、肩までかかっていたのが段々頬まで縮んで言ってるのです!

 火神(アグニ)の痣が浄化されたのです!!

「グラ・・・!」

 これでグラは大丈


「へぶっ!!?」


 突然左頬に鈍い衝撃が走って転び、右半身から水面にダイブしたのです。

「ぶはッ!!」

 再び水面から顔を出すのです。

「ぐ、グラ・・・!」

 間違いなくグラが殴ったのです。

 あまりに瞬間的だったから気づかなかったですけど。

「グラ・・・。」

 やっぱりグラはまだ私の事を・・・。

「うん。」

 グラは何故か私を殴った右手をグーパーさせたりして眺めながら頷くのです。

「グラ?」

 何か納得してるみたいですけど意味が分からないのです。



「レガの事はもう忘れろ。」



「・・・・・・・・・へ?」

 グラ、今なんて言ったのですか?

「俺もお前のやったことは忘れる。」

「いや、ちょ、え??」

 いやいや意味が分からないのです!!

「グラ! 自分が何言ってるのか分かってるのですか!?」

「あ? 言ってんだろ? レガの件はもうチャラだ。」

「な、なんでそんなあっさり許すのですか!? レガは大事な・・・!」

「ああ、レガは俺の大事な弟分だ。」

「それを私は・・・!」

「お前が()ったのはレガじゃない。」

「な、何言ってるのですか!? だって私は殺した時・・・!」



「お前がやったのはレガ()()()狂戦士(バーサーカー)だ。」



「グラ・・・!」

 それって・・・!

「それでいいのですか?」

「何がだ?」

「そんな屁理屈で私の事を許すのですか!!?」

「・・・へッ。」

「?」

 グラが何故かほくそ笑んで目を逸らすと、私を殴った右拳に視線を落とすのです。

「親父に言われてたんだ。『とにかく一発思いっきりぶん殴れ』って・・・で、殴ってみたら分かった。」

「な、何がです?」


「すっっげぇスッキリしたんだ!」


「スッキリって・・・。」

 確かに言われてみればグラの顔、すごい爽やかなのです。

 しっかり熟睡した人みたいに目もキラキラしてるし、ロキウスに村を襲われた直後に比べるとまるで憑き物が落ちたみたいに清々しい顔なのです。

「結局、お前のやったことなんてその程度で許せる事だったんだよ。殴って分かった。」

「グラ・・・。」

「そんで俺のやるべき事も分かった。」

 そう言うとグラは拳を強く握ったのです。

「許せねぇのは狂戦士(バーサーカー)を作ってる奴らだ。本当の意味で俺からレガを奪ったのは奴らだ。奴らは今も笑いながらレガみたいな救われない戦士を作ってる。奴らは絶対許さねぇ。」

 そう言って皮肉そうに鼻で笑いながら拳を緩める。

「結局、俺のやる事なんて変わらなかったんだよ。それを脇道逸れて余計な奴に怒りぶつけてさ! 馬鹿みたいだよな?」

「ば、バカじゃないのですッ!!」

「そうか?」

「グラの感情は人として当然の感情なのです!! だから私のやったことは・・・。」

「あ~。」

 グラはめんどくさそうに頭を抱えながら前髪を掻き始めるのです。

「あ~もう、結局その話に戻るのかよ。んじゃ~、まぁ、アレだ。」

「アレってなんですか?」

「アレだよ! 申し訳ないとか思うんなら、せっかくだから手伝え!」

「手伝うって?」

「俺らの敵をぶっ潰す事だよ! 『仲間』だろ?」

「仲間・・・!」

 グラ、そんな風に私の事を・・・!

「仲間だと・・・思ってくれるのですか?」

「ああ? 何言ってんだ! 村の中で同じ飯食ったじゃねぇか!」

「グラ・・・ぅ・・・。」

 グラ・・・!

 私・・・!



「うわああああああぁぁぁぁんッ!!」



「なッ!?」

 グラが驚くのもそっちのけで私はみっともなく泣いたのです。

「なんだよッ!! なんで急に泣くんだよ!!」

「ああああああああんッ!!」

「ちょ、おい!! なんで抱き着くんだ!! 交尾か!? 女同士でやってもガキ出来ねぇぞ!?」


「グラァァ、うあああぁぁぁんッ!!」


 月に照らされた湖の中で私は声を上げて泣いた。



~ウルド アステリオン 密林~


「うぁ・・・くそ・・・!」

 頭がガンガンする。

「ウルドっち大丈夫?」

 荷台の横の運転席からサンが心配するように声をかける。

「大丈夫じゃねぇけど大丈夫・・・。」

「どっちだよ。」

 深淵魔法の反動は半端じゃない。

 カザに居たときに二度と魔法は使わないって決めてたせいか魔法の鍛練は結果的にサボってたしな・・・。

「悪いな、乗せてもらって・・・。」

 あれこれの下りから今更だが俺は今サンのホバーバイクに乗っている。

 メロに置いてかれて少ししたら修理を終わらせたサンが追い付いてきた訳だ。

「ディグ、メロは泉に着いたか?」

『着いてるみたいだけどレーダーの情報だけじゃ詳しい状況は分からない。メロも途中通信機落としてたみたいで音声が拾えないんだ、申し訳ないけど直接確認お願い!』

「アイアイリーン!」

「なんだ『リーン』って。」

 少しするとホバーバイクは止まり、サンは荷台から双眼鏡を出して泉の方角と思わしき方角を見る。

「うん、成る程!」

『どう?』

「グラは無事!」

「そっか、はは・・・!」

 最悪の事態を免れて安心したせいか無意識に笑い声が漏れた。


「無事なんだけど・・・。」


「ん??」

 引っ掛かる言い方だな。

「今は行かない方が良いかな・・・。」

「は? どういう事だ!」

「ん。」

 俺が双眼鏡を引ったくろうとしたのを察してかサンは俺の手にすんなり渡してくる。

「くそ、なんだ一体・・・!」

 まさかあの時みたいにグラがメロに殺しかかって来たり・・・いや、待て。

「・・・・・・・・・ふっ。」

 二人がいる泉に位置を合わせ、双眼鏡のピントを合わせると僅かだがつい鼻で笑ってしまう。

『何? どうしたの?』

「確かに、行かない方がいいな。」

 双眼鏡には泣きながらグラに抱きつくメロと、呆れた顔でメロの頭を撫でるグラが映っていた。



~ライ 搬送車内~


「よぉ、耳の穴かっぽじってよく聞いてたか? 獣人の紳士淑女諸君。」

 搬送車の中で俺は通信機の音声をアンプに繋いで車内全体に聞こえるようにしておいた。

 つまりあいつらの紆余曲折、笑い有り涙有りの救出ショーは獣人達の耳に全部聞き渡っていた訳だ。

「ん?」

 獣人共の様子がおかしい。

 なんか踞ってる?

 て言うかどいつも小刻みにプルプル震えてんぞ?

 こいつら大丈夫か?



「「「よっしゃあああああああぁッ!!!!」」」



「うぇッ!?」

 なんだこいつら!!

 急に喜んで騒ぎ出して殴り合い出したぞ!?

「流石ウルドだ!!」

「マジで只人(ヒューム)にしとくには惜しいぜッ!!」

「あのチビ助もやるじゃねぇか!!」

「くっそぉ!! 今度()り合いてぇ!!」

 なんか頭のネジがぶっ飛んだ物騒な物言いだがグラが助かって喜んでんのは確かだ。

 まぁやれやれだ。

 とりま当初の予定通り、獣人の信頼はこれで鰻登り間違いなしと・・・。

「ゾ、ゾルガ・・・!」

「ん?」

 連中がどよめき出して向き直るとゾルガが俺に向かって床に胡座を描いて座っている。

 手は拳を握って床につけている。

「なんだよ。」

 俺が聞くや否やゾルガは深々と頭を下げる。


「狼族、族長として・・・マカ村の戦士の長として・・・一人の親として感謝するッ!!」


「よせ。」

 即座に礼を拒否する。

「それは基地に戻ってウルド達(あいつら)に言いな。」

「だなッ!」

 即答するとゾルガはすぐに頭を上げてにかっと笑う。

「よぉしッ! 持ってきた食料の中に酒あったよな! あいつに飲ませようぜ!」

「「うぇ~い!」」

「おいおい。お前ら捕まってた時に食料全部取られたろ?」

「あ、そっか・・・じゃあ、どっかから奪ってくるか?」

「目立つから却下。」

「なんだよそれぇ!!」

「「ブーブーッ!!」」

 ったく、獣人って部族間でギスギスしてるって聞いたけどガセじゃねぇのか?


 これの何処が仲悪いんだよ。



~ウルド アステリオン 浄化の泉~


 とりあえず空気を読んでメロが泣き止んだ頃に合流した。

「一先ずグラは無事・・・。」

 なんだけど・・・。

「? ウルド、どうしたんだよ!」

 然り気無く視線を逸らす俺にグラは()()()()()()声をかけてくる。

「ウルドっち~? なんで()()()()目ぇ逸らしてるのかな~?」

「くっ・・・!」

 このマセガキ・・・分かってて聞いてやがるなッ!?

 そう、サンもお察しの通り今俺がグラを見るのは()()()()倫理的にマズいからだ。

 何故かって?

 さっきまでの状況を説明するぞ?

 メロとグラは泉の中にいた。

 で、泉から上がって今、俺たちと一緒に泉の近くの水際にいる。

 つまり()()()()()()()()()()()()()()()()()

 これが意味するものとはつまり・・・。

 察しのいい世の中の青少年諸君はもうお気づきだろう。

 つまりだ・・・。



 見えてんだよッ!!!



 グラの着てる服(って言うか布切れ)が濡れてるせいで透けて胸の先端の、男が口に出したら性犯罪者確定の部分とか下のそれこそ詳しく言ったらアウトな部分とかが丸見えなんだよッ!!

 ちょっとは隠せよッ!!

 グラ(こいつ)に恥じらいと言うものは存在せんのかッ!

 ・・・いや。

 出会って二日目に体の関係迫った奴だ。

 あるわけがないな。

『お兄ちゃんのムッツリ~!』

『黙れッ!!!』

 くっそぉ、ルタの奴・・・!

 やけにさっきから大人しいと思ったらここぞとばかりにイジりやがってぇ・・・!

「グラ・・・。」

 メロもグラの格好に気づいてか目を手で覆って塞ぎつつ、右手の人差し指と中指の間からグラを見ていた。

 前から思ってたけどこいつだってムッツリだよな?

「さーて、ウルドっちの我慢もそろそろ限界みたいだし! 戻ろっか!」

「ウルド? なに我慢してるんだ? ションベンか?」

「違うわッ!! あと女が男の前で『ションベン』とか言うなッ! とにかく戻るぞッ!」

 グラにツッコミつつサンに続いて立ち上がる。

「んじゃウルドっち! お願いね☆」

「お願い? ・・・あぁ、あれか。」

 サンにお願いされたが呆れて溜め息つきつつ頭をかく。

「お前なぁ、あれそんなにポンポン撃てるもんじゃねぇんだぞ?」

「ダメ?」

「ダメだダ・・・メ・・・。」

 断ろうとしたが然り気無く視線を泳がせて今いるメンツを確認する。

 ガキ。

 ガキ。

 首輪つきの捕虜。

「・・・ハァァァ、もう。」

 再び深く溜め息をつく。

「仕方ねぇなぁ・・・。」



~ロキウス警備隊長 関所~


「被害状況確認急げ!」

 全くもってついてない。

 獣人が攻めて来たからアステリオンの方ばかり向いて目を光らせていたのにまさかロキウス側から襲撃を受けるなんて・・・!

「くっそぉ、一体なんだったんだアレは・・・。」

 A.Aですら簡単に両断する謎の光の柱のような剣。

 まさか新型のビームサーベルか!?

 一体何処でそんなものが開発されたんだ。

「ハァ・・・どうしよう。」

 とにもかくにも警備を突発された時点で始末書物だ。

 減給かな・・・。

「報告!」

「なんだ!?」

「アステリオン側より所属不明の生体反応あり!」

「何ィ!?」

 言われるがままアステリオンの方角を見ると・・・。


「は・・・ははは・・・!」


 これは夢だ。

 俺は夢を見てるんだよな?

 あの時の光の柱が見えるんだけど夢だよな!?

「ははははは!」

「隊長! お気を確かにッ!」



「もう嫌だあああああぁッ!!!」



 その光の柱はまた倒れ込んできて俺の現場を無惨に破壊し尽くした。

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