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嘘つき英雄と嘘の妹 ~旧版~  作者: 野良犬タロ
ロキウス編
57/101

#57 代償

 

 ~ウルド 収容所~


「走れ走れッ!」

 基地の警報が鳴る中、ライに先導されるまま俺たちは基地の正面出口目指して走っていた。

 幸い奴ら、事態に気づいて時間が経っておらずまだ完全に対処しきれていない。

 外の警備員が集まってはいるが数は十数人程度、けどこっちは満足に戦えない捕虜たちがいる。

 無茶はできない。

「撃てぇ!!」

 隊長と思わしき警備員が合図すると警備員たちは銃を撃ちまくる。

「くそッ!!」

 弾幕を張られちゃたまらず、全員物陰に避難する。

「おいどうするんだよ!!」

「まあ待て。」

 ライは文句をつける俺を諭すように手をひらひらさせると通信機に手を掛ける。

「サン、起きろ(アウェイク)。」

 通信機越しにサンに命令する。

「ぅ・・・ぁ・・・・・・了解・・・ご命令を(マスター)。」

「俺に向かって銃撃ちまくってる奴ら誰でもいい! 片っ端から狙撃しろ!」

同意(アグリー)。 制圧射撃に意向、識別確認、発射(ファイア)。」

 通信機からまた鈍い銃声がすると警備員の一人が倒れる。

「なんだ!?」

「何が起きた!?」

「狙撃だぁ!!」

「何処からだ!?」

 突然の事態に警備員たちが慌てている間にまた二人、三人と撃たれていく。

 だが奴らの悲劇はそれだけでは終わらない。

「正面がお留守だぜぇ!!」

  ライは銃で狙いを定めると一人、二人と次々に撃っていく。

 結局警備員たちが混乱している間に決着はつき、行く手を阻む警備員たちは全滅した。

『次の指示を、(マスター)。』

眠れ(スリープ)。」

『了解しました、機能停止します。』

「うし・・・逃げるぞ!! GO GO!!」

「犬か俺達は!!」

 ブリーダーのように走りながら指示を出すライに獣人がツッコミを入れつつもみんなついていく。



『ライ兄!! 危ないッ!!』



「!!」

 突然のディグの警告に危機を察知して止まると目の前に何かが落ちて来て爆発したかのような轟音が辺りに響く。

「なんだこいつ・・・!」

「『奴』だ・・・!」

 目の前に出てきたのは全身鋼鉄で覆われた巨人のような何かだ。

「ゾルガ!? 何か知ってんのか!?」

「ああ、俺らは奴にやられた・・・!」

「チッ、『ガーディアン』か・・・めんどくせぇ。」

「ライッ!! なんだよあれは・・・!」

「『A(アサルト).A(アーミー)』、ロキウスで最近開発されてる新兵器だ。」

「兵器・・・!!」

「まいったな・・・()()()()()()()()()()・・・。」

「・・・。」

 そう、奴()は三体もいる。



『脱獄囚、及び脱獄幇助の現行犯に告ぐ!!』



「!」

 A.Aから人間らしき声がする。

 ・・・人間がアレに乗って動かしてるのか?

『すみやかに抵抗をやめ、降伏せよ! 繰り返す! すみやかに降伏せよ!』

「・・・。」

 確かに状況は思わしくない。

 降伏した方が賢明な気さえする。

 だがせっかく救出したのに此処で諦めるのはあんまりだ。

 いっそのこと強引に戦うか・・・!



『ライ兄!! 大丈夫だよ!! ()()()()()!!』



「え?」

「おお! ナイス!!」

 俺が戸惑うのもお構いなしにライは目を輝かせる。

 なんだ!?



『ッ!!? なんだ!?』



 機械の音声は戸惑いの声を上げる。

 A.Aの背後から銃弾が嵐の様に飛んで来たからだ。

「え? 今度はなんだよあれ!?」

 銃を撃ったと思われるのは別のA.A、みたいだが少し見た目が違う。

 俺達を取り囲んでいるA.Aは重装備な感じで重みのある雰囲気だが不意打ちを仕掛けた側はそれに比べて細身でスマートな感じのデザインだ。

『援護する!! 今のうちに逃げろ!!』

「サンキュー愛してるぜッ!! オラ、行くぞぉ!!」

 味方のA.Aが銃で撃ちかかり、敵のA.Aも負けじと応戦している間に俺達は走る。

「こっちだ!! 早く!!」

 収容所の出入り口を抜けると人が何人も乗れそうな大型の貨物車が止まっていた。

「よし!!」

 俺達は急いで車の後ろの貨物舎に乗る・・・だが。

「ッ!? おい、何してんだよゾルガ!!」

「・・・。」

 グラを背負ったゾルガは何故か車に乗り込もうとしない。

「何してんだッ!! 追手が来るぞ!!」

「・・・こいつは一体何処に行くんだ?」

「何処って・・・。」

「俺達の基地だ、一先ずそこなら安全・・・。」



「それじゃダメだ!!」



「はあ!?」

 何言ってんだゾルガ!?

「もしかしてグラ・・・。」

「ッ!?」

 何故か事情に気づいたのはメロだ。

火神(アグニ)の限界が近いのですか?」

火神(アグニ)の限界!? おい、メロ! 何を知ってるッ!!」

 たしか火神(アグニ)って上昇(ライズ)の効果を高める獣人の戦闘技術(スキル)・・・それに何かがあるのか?

 そういえば・・・!



『お前火神使ったろ。』


『つー訳で、お前『一回休み』だ。キッチリ()()しとけよ。』



 不意にゾルガの言葉を思い出す。

 まさか・・・!

『そういえばお兄ちゃんは知らなかったね。』

「!?」

 ルタも何か知ってる・・・!?

火神(アグニ)には大きな代償があるの。使った時に出来る紋章のような痣、それが時間経過で濃くなるほど体温調整が効かなくなるの。』

『なんだと!?』

『上がる体温は上限を知らず、泉に入って浄化しなかったら人体発火・・・身体が焼き尽くされるんだ。』

『嘘だろ・・・!』

「そうだ・・・! こいつ、無茶して火神(アグニ)使って戦った後に捕まって丸一日浄化してないんだ・・・分かるんだ・・・背負ってるだけで背中が燃えるように熱い・・・! もう発火まで時間がない、一時間も持たずに痣に焼き尽くされるんだッ!! だからアステリオンに連れて行ってくれ!!」



『それはオススメ出来ない。』



「ッ!?」

 突如冷酷な判決を下したのはフレッドの声だ。

「なんでだよッ!!」

『大方アステリオンとロキウスの国境の関所から通るつもりなんだろうけどあそこは獣人が破壊した事で警備が厳重態勢になってる。その貨物車で通ろう物なら一発で包囲されるだろう。』

「ふむ・・・。」 

 ライは考えるように手を顎に当てる。

「おい、どうすんだよッ! このままじゃグラが・・・!」

「ゾルガ・・・だっけ?」

「あ?」



「グラをその場に置いて車に乗れ。」



「・・・・・・は?」

 おい、聞き間違いか!?

 信じられない事を言いやがったかこいつ!?

「てめぇ・・・!」

「今なんつったぁッ!!!」

 ゾルガよりも早く食って掛かり、俺はライの胸倉を掴む。

「てめぇ、命をなんだとおもってやがんだッ!!!」

「・・・ぷッ!」

「ッ!?」

「ぷっはっははははははは!!!」

「・・・!!!??」

 信じられねぇ!!

 あんな事言いやがったのに笑ってやがるぞこいつ!!!

「何笑ってやがるッ!!!」

「セイセイ落ち着け、ドウドウ!」

「落ち着いて何になるッ!! お前の言ったことは



「誰が『グラを見捨てろ』って言った?」



「・・・え?」

「サン、どうだ?」

『うん、もうすぐそっち着くよ! 回収すればいいんだよね!』

「ああ。途中のあれこれはこっちでなんとかする。」

『りょかーい!』

 ライは通信を切る。

「え、え?」

 固まる俺を見てライはだんだん顔をにやつかせだす。

「『イノチヲナンダトオモッテヤガンダー』。」

「ッ!?」

「『オチツイテナンニナ

「あーあーあーッ!!!! キコエナーイッ!!」

 ライの誰だか知らないモノマネに俺は耳を塞いで叫びまくる。

「なんなんだ! どういう事だ!!」

 通信機を着けていないゾルガは訳が分からずがなり立てる。

「そいつは俺の連れが回収して泉に連れて行く、だからお前は安心して乗れってことだ。」

「だったら俺もここに残る!!」

「いやお前は乗れ。」

「なんでだよ!!」

「あんたが今付けてる首輪、そいつは最近ロキウスで開発された囚人用拘束具『ウィークネス』。付けた奴の神経に働きかけ、運動神経及び臓器の衰弱化による体力の低下、今はその娘背負うのはおろか立ってるのがやっとの状態だろう?」

「マジか。」

 悪趣味過ぎる。

 作った奴の顔が見てみたいな。

 ていうか獣人達そんなもの付けられながらここまで走ってこれたのか・・・すげぇな。

「ハッ! こんな首輪・・・引きちぎって・・・!」

 ゾルガは首輪に手を掛けて今にも引きちぎろうと力を込める。

『ダメだ!! ライ兄止め



「ぎゃああああああああぁぁぁ!!!」



 何故かゾルガは叫びだして首輪から手を放す。

「ハァ・・・ハァ・・・!」

 目を見開いて息を切らすゾルガ。

「・・・そいつは木が根を張るように神経に繋がってるからな、無理矢理引きちぎろうとすれば全神経に激痛が走る。」

「うわぁ・・・。」

 作った奴とことん性格悪いな。

「な? これで分かったろ?」

「ぐっ・・・!」

 状況を思い知らされてゾルガは言い返せないみたいだ。

「そんな状況で追っ手が来るかもしれないこんなところに突っ立ってるなんざジャンキーも引くぐらいのマゾヒスト野郎だぜ? 護衛が必要なら俺が



「護衛は私がやるのです!!」



「「・・・は?」」

 何故かメロが割って入り、ライと俺の反応が被る。

「メロ!! お前何言ってんだ!!」

「珍しく意見が合うなぁ、俺もそいつは反対だ。ピクニックに行くのとは訳が違う。命の保証はできねえぞ?」

「そんなの分かってるのです!! でもやりたいのです!!」

「危険だっつってんだろ!! 何をそんなに意地になってんだ!!」

「・・・。」

 メロは目を逸らす。

「!! まさかお前・・・!」

「・・・これで罪滅ぼしできるとは思ってないのです・・・けど、このまま何もしないで・・・グラとお別れなんて嫌なのですッ!!」

 メロは真っ直ぐに俺を見る。

「・・・。」

 くそ、この眼はよく知ってる。

 何度も見た眼だ。

 ()()()の眼だ。

 一度決めた事を何があっても曲げない『頑固者の眼』だ。

「ハァ・・・あぁもうわかったよ!」

「いいのか? お師匠さん。」

「その名で呼ぶなッ!」

「けどさっきも言ったが命の保証はできねえぞ?」

「ああ、だから俺もついていく。」

「師匠・・・?」

 メロは呆気に取られてぽかんとする。

「前にも言ったろ、『連帯責任』だって。」

「は、ハイです!」

「おいおい。残りの獣人共(こっち側)は俺一人かよ、泣いちゃうぜ?」

『そっち側は安全ルートだから別に護衛一人で行けるでしょ?』

「へいへい、分かってるよ。おらおっさん、出すから早く乗れ。」

「グラをこっちに。」

「・・・。」

 ゾルガはすっかり観念したようで渋々グラを背中から降ろす。

「ッ!?」

 グラを背負おうとして触れると異変に気付く。

 熱いッ!

 とにかく熱いッ!

 沸騰した鍋に触れたみたいに熱いッ!

 ゾルガのおっさん、こんなのを背負ってたのか!!

「ぐっ・・・ぅぅ・・・!」

 それでも背負った。

 熱いが我慢した。

「・・・。」

 ゾルガは見透かす様に俺を見ると、車の方へ向く。

「早く乗れ! 敵さん待っちゃくれねぇぞ!」

「・・・。」

「?」

 ライに急かされたがゾルガは黙って俺の肩に手を置く。

「!」

 その手に力が籠り、俺の肩を強く握った。

「・・・。」

 首輪のせいか少し弱々しいがそれでもその意志は痛いほど伝わった。

 数秒とせずに手を離すと、ゾルガはそのまま車へ向かった。

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