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嘘つき英雄と嘘の妹 ~旧版~  作者: 野良犬タロ
ロキウス編
56/101

#56 新しい武器


~ウルド 収容所~


「ビリー大尉・・・!」

「てめぇッ!!」

 丁度俺の真後ろにいたビリーから距離を取る。

「な、なんだ!?」

「そいつ敵かよ!!」

 獣人達もどよめいた後に身構える。

『嘘!? 魔力感知でこいつの魔力感じなかったよ!?』

『まさか・・・。』

「あんた達まさかロキウス(この国)の連中がどいつも『魔覚の『マ』の字も知らない連中』とか本気で思ってたのかしら?」

「・・・。」

 『魔力鎮静』だ。

 油断した・・・!

「くそ・・・いつ尾けられてたんだ・・・!」

「あんた達が本棟に入って来てからずっとよ。本棟の中は電波妨害(ジャミング)で通信は出来ないし、あんた達異国人(よそ者)が魔力感知で周囲を感知するのは分かってたからね。」

 会議の時から魔覚に関してみんなノータッチだったから魔覚に関しては考えなくても良いと思ってた・・・。

 だからもしもの戦闘の頭数にメロも加えていたがそれが仇になった。

 多分メロの魔力を感知されて俺達の侵入がバレていたんだ!

「あんた達分かりやす過ぎよ。大方獣人達と手を組もうとか考えてる抵抗組織(レジスタンス)ってとこでしょ? あんたら・・・それに。」

「ッ!」

 ビリーの視線を受けてケディは縮み上がりながら後退りする。

「ケディ少尉? ダメじゃない、囚人が外に出ちゃ。」

「ビリー大尉・・・貴方は一体・・・!」

「事情は大体把握済みだ。ついでにお前の正体もな、オカマ野郎。」

「どうせ薄々勘づいてたんでしょ?」

「やっぱりてめぇB.R.A.I.Nだな!?」

「フン、あんたがそこの鼠と結託するのは此方としても予想外だったけどねん。」

「ははッ! 『鼠』か! 確かに昔はドブネズミみたいな生活してたから言い得て妙だな!」

「・・・。」

 ビリーの侮蔑を込めた呼び方に対してライは笑いながら返す。

 よくもまぁ頭に来ないもんだ。

「あ~ら、そんな惨めな生き方を望んだのはあんた達でしょ? 脱走なんかせずB.R.A.I.N(こっち)に残ってればそれなりに良い生活出来たでしょうに。」

「冗談はそのガタイとキャラのギャップだけにしてくれよ! お前らの実験鼠(モルモット)になるくらいならドブネズミになって路地裏で汚いカラス共とダンスってる方がマシだっつの!」

 ライは尚も笑って返す。

「口が減らないわねぇ『初期実験体(ファーストシリーズ)007号』!」



「その名で呼ぶんじゃねぇッ!!!」



「ッ!!?」

 ライは急に激昂するとビリーに何かを投げつける。

 銀の筒状の何かだ。

「フン。」

 ビリーは鼻で笑うとそれを殴り払・・・ったが?

「!?」

 筒が急に破裂して黒い煙をまき散らし、部屋中があっという間に煙だらけになった。

「逃げるぞ!!」

「え、お、おう・・・!」

 先程激怒したのが嘘みたいに冷静に手を引かれる。

 獣人達も後に続いて部屋を後にする。

 だが・・・。



「こんな蚊が刺したような小細工で逃げられると思った?」



「ッ!?」

 部屋を出てすぐの通路の進路にあのオカマ野郎は立っていた。

「くそぉッ!」

「どけぇッ!!」

 獣人が二人、ビリーに殴りかかるが・・・。

「ふん、遅い動きが更に遅いわ、ねッ!」

「「ぶがぁッ!」」

 二発、三発と躱しながら皮肉を吐き、ビリーは悠々と殴ってきた獣人を殴り飛ばして返り討ちにする。

「オーライ、下がってな獣人共。」

 ライは前に出てビリーに向かって銃を構える。

「あぁ!? てめぇに指図される謂れは

「イキんな。」

「あぁ!?」

「その首輪で弱ってんだ。逃げる事だけ考えろ。このオカマ野郎にケツの穴掘られたいなら構わんが。」

「なぁに~? カッコつけちゃって『俺が残るから逃げろ~』とか言っちゃうわけ?」

「ハッ! 何が悲しくてお前みたいなむさ苦しいオカマと取っ組み合ってガチムチレスリングなんざするんだ、よッ!!」

 ライは皮肉を言いきる前に引き金を引いて弾丸を放つ。

 だがビリーは弾道を即座に見切って紙一重で回避しながら詰め寄る。

「・・・。」

 一瞬ライの口許がにやりとつり上がる。

「ッ!」

 ビリーはその意図に気づく。

「ハァッ!」

 メロが割り込んで右からビリーに斬りかかったからだ。

 だがビリーはすぐに身体を反らして最初の縦振りを回避して直ぐ様しゃがんで二撃目の横振りを回避する。

「ふぇッ!?」

 メロは突然身体がグラッと横に傾いたことに気づいたがもう遅い、ビリーが足払いをかけていたからだ。

「あぅッ!」

 メロは派手に転ぶ。

「チッ。」

 ライが追撃させまいとビリーに向かって撃つがまたも弾道を見切られて手の鉄鋼で防がれる。

()()も『陽動』。で?」

 何度も撃つライに応戦しながらながらビリーは俺を見る。



(トネル) (エペ)・・・。」



()()()が『本命』ッ!!」

 ビリーはライを無視して一気に俺の元へ詰めよって右拳を引いて振りかぶる。

「師匠ッ!!」 

 メロが叫ぶ。

 魔法の詠唱が間に合わないからだ。

 だが・・・。



「な~んつって。」



「え?」

 呆気に取られたビリーに剣を向けたまま俺は()()()を引く。



ーーー夕方。


「その剣であの的に魔法を撃って見てください。」

「お、おう。」

 俺とディグがいたのは弓の訓練でもするかのような射撃場だった。

 前の剣が折れたこともあり、ディグに武器を頼んだら『最近丁度良さそうな物を作ってました』と渡されたのが妙な剣だった。

 刃渡りは前の短刀(ショートソード)と代わらないが形状はアステリオンに侵略していたロキウス兵の使っていた短剣(ナイフ)と同じ、ここまでは普通だ。

 だが柄の部分に銃で使う引き金やら変なボタンやらがある。

(トネル) (エペ) 放出(ホレッシ)・・・雷の矢(サンダーボルト)。」

 剣を構えて魔法を詠唱すると、剣の先から雷が放たれ、人の形をした黒い的に飛んでいく。

 雷が当たると的に軽く穴が開き黒く焦げたような煙が上がるこれがどうかしたのか?

「今度は魔法を放った瞬間に手前側のボタンを押してみて下さい。」

「???」

 まぁやってみるか。

(トネル) (エペ) 放出(ホレッシ)

 魔法を詠唱する。

雷の矢(サンダーボルト)。」

 雷が剣の先から放たれる瞬間、言われた通りにボタンを押す。

「ッ!?」

 雷が剣に吸い込まれるように戻ってきてそのまま刃に吸収される。

 魔力を吸収した剣はそのまま雷を帯びるのかと思ったがそんなことはなく、まるで何もなかったかのように消えていく。

「・・・なんだこれ。」

 え、これで終わり?

「成功ですね。」

「え・・・もしかして『撃ったけどやっぱナシ』的な感じ? これだけ?」

「はは、そんなわけないじゃないですか!」

「あ、ああ・・・そうか?」

 んな訳ないよな・・・はは。

「今度はまた魔法を放つように構えたまま引き金(トリガー)を引いてください。」

「? こうか?」

 先程魔法を放った時のように構えて引き金を引く。

「な!?」

 突然雷が発生したかと思うと剣の先に集まり、球体の様な形状になると一気に放たれる。

「うわっ!?」

 手で大砲でも撃ったんじゃねぇかって反動で思わず後ろに倒れる。

 雷の球体は咄嗟に照準がずれたか中心を外れて右側の端スレスレに当たる。

 しかし先程の魔法とは違い、まるで爆発でも受けたかのように当たった部分は吹き飛んでいた。

「・・・おいおい。」

 なんだこの物騒な武器・・・。



「よし・・・よしよしよし!! よおおおおぉしッ!!!」



「ッ!?」

 え、ディグ!?

「やはり僕の理論は正しかった! 魔法石を引き金(トリガー)に合わせて発動させる原理も間違っていなかった、あぁ、魔法使える人間はロキウスに居ないから試せなかった理論がついにここに証明

「おーい。」

 なんかおかしなテンションでガッツポーズをとるとディグがブツブツ魔法の詠唱のように独り言を言い始める。

 声をかけてもびくともしない。

「魔法石を埋め込むのが難点だったけどそこは流石僕だ、抜かりはない、これは新たな武器にも使えるぞぉ! まずは銃にでも応用しようかいやしかし

「ディグさぁん!! おぉい!」

「ハッ! 失礼! 嬉しくてつい・・・。」

「お、おう・・・。」

 強めに声をかけたらなんとか正気に戻ったみたいだ。

「結局これなんなんだ??」

「ハイ、魔法を吸収して撃ち出す剣です。名称を着けるなら・・・そう、『魔砲剣』って所ですかね。」

「魔法を吸収・・・じゃあ相手から撃たれた魔法も?」

「そうです。って言ってもあまり大容量は取り込めないですけどね。それにその運用よりは自分で撃った魔法を吸収させるのが基本的な使い方になると思います。あぁ、因みに吸収してストックした魔法は凝縮されて今みたいに威力が上がるんです。まぁ簡単に言えば水鉄砲と同じ原理ですよ。」

「撃った魔法を一旦剣に入れて撃ち出すって・・・一々めんどくさくないか?」

「ふふ、確かに馬鹿正直に相手の前でそんな事してたら隙だらけですよね? でも・・・。」

「でも?」

 ディグは不敵な笑みを浮かべて眼鏡をくいっと上げる。

()()()()()()()()()()()()()()()()()()・・・ですよね?」

「あ・・・。」




ーーー「ッ!?」


 剣の先から雷の弾が放たれ、ビリーの腹部に命中する。

「ぎゃあああぁッ!!?」

 電撃が身体中を駆け巡り、ビリーは悲鳴を上げて倒れる。

「・・・ざまぁみろ、クソオカマ。」

 うつ伏せに倒れて動かないビリーに俺は皮肉を吐く。

 此処に来る前からもう既に剣の中に魔法はストックしていた。

 『一発だけだが魔法を詠唱無しで撃てる』・・・『魔法は詠唱しなければ撃てない』と理解してる相手にこれ程の奇襲攻撃はないだろう。

「ありがとな、ディグ。」

「へっ!」

 通信機が使えないので剣を額に当てて感謝を捧げるとライがからかい気味に背中を軽く叩く。

「うしっ! 逃げるぞッ!」

 ライが合図するが・・・。

「待て、ビリー(こいつ)も連行しよう、B.R.A.I.Nなら何か情報を持ってるはずだ。」

「・・・。」

 俺が引き留めるとライは視線を落としたまま固まる。

「・・・ライ?」

「いや、今は逃げるのが最優先だ。行き掛けの駄賃も良いけど脱出は荷物が少ない程良いからな。ほら行くぞ!」

「あ、おい!」

 ライが走り出すと獣人達も続いて走っていくので仕方無くついていった。



~ビリー 収容所~




 ・・・・・・。



「・・・やれやれね。」

 囚人達が逃げてしばらくすると何も無かったかのように体を起き上がらせる。

 あの雷坊やのことはケルちゃんから事前に聞いてたからね、ゴム製の防弾チョッキ着てて正解だったわ。

「さあて・・・こうなった以上さっさとお暇させてもらわないとねん。」



―――鉄の螺旋階段を降りながら本棟の裏口から外に出る。


『ビリー。』

「!」

 胸元に常備させていた通信機から声が聞こえるので手にとって耳に当てる。

「あ~ら()()、ご機嫌いかが?」

『首尾はどうだ。』

「言われた通りやったわよ。全く・・・()()()()()()も楽じゃないわねぇ。」

『まあそう言うな、こうでも建前を付けて邪魔したフリでもしておかないと彼女も納得しないからな。』

「あの子も困ったもんよね。『収容所の獣人を早く連れてこい』って言い出したら聞かないんだから。」

 そう、最初っからあいつらを止める気なんかさらさらなかったのよあたしは。

「まぁ欲を言えばぁ? あの昔なじみの鼠を捕まえて手土産にすればご機嫌取れたんだけど、上手く騙されてくれなかったわねぇ・・・。」

『あいつは飄々としちゃいるが頭はよく回る。疑り深さも折り紙付きだ。』

「まぁ、『捕まえられればいいや』的な感じだったし、別にいいけどね。」

『彼女には悪いが奴らには一旦逃げてもらわなきゃ困る。』

「はいはい、あの子トサカでしょうけどここは素直に怒られてあげるわよ。」

『すまんな。』

「この貸しは高くつくわよぉ? 覚えておいてね☆」

『・・・善処する。』

 そう言ってボスは通信を切った。

「さぁてと・・・。」

 あの子達はうまく逃げ切れるかしらね・・・。

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