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嘘つき英雄と嘘の妹 ~旧版~  作者: 野良犬タロ
ロキウス編
53/101

#53 決起


~ウルド 抵抗組織(レジスタンス)


「う・・・ん・・・?」

 目を開けてぼやけた視界の焦点が合うと、自分が目を覚ましたのは抵抗組織(レジスタンス)の基地のあの部屋だと理解するのに数秒とかからなかった。

 そうだ、あの時ライにやられて・・・。

「・・・今度は()()()かよ。」

 自分の着ているものに目をやると案の定、寝ている間にサンにやられていた。

 今俺が着ている服は上下ともに白のナース服だ。

 胸もあの時のバニーのようにまたデカくされている。

「ふざけやがって・・・。」

「お兄ちゃん!」

「!」

 右からルタの声が聞こえたので振り向くとそこには同じようにナース服を着たルタがベッドに寄りかかるようにして俺を見ていた。

「何でお前まで・・・。」

「お兄ちゃんが着させられているのを見てたら着たくなっちゃった!」

「あっそう・・・。」

「どう? 似合う? カワイイ? 萌え死ぬ?」

 そういって立ち上がってくるくると回って俺に見せつけて来る。

「その残念なセリフがなけりゃな・・・。」

 そう言ってやれやれとばかりにベッドから起き上がろうとした時だ。

「!?」

 俺の手は 手枷をつけられベッドに固定されていた。

 一瞬なんでだと思ったがすぐに疑問は晴れた。

「・・・脱走者への罰ってか。」

「そうみたいだね。」

「じゃあ何でお前は繋がれてねえんだよ。」

「え? もしかしてお兄ちゃん・・・ベッドに拘束されて動けなくてもがいてる妹が見たかった!? ドSだと思ってたけど そこまで変態さんだったなんて・・・!」

「ちげーよ馬鹿!! ふざけてる場合か!!」



「妹ちゃんがお利口だったからだ。」



「!」

 声がする方を向くとそこにはライを始め、フレッドやサンとディグ、あと

「師匠!!」

 メロと最初に起きたときに看病していたあの女の子も入ってきた。

「? なんでナース服着てるのですか?」

「聞くなッ!」

 メロに突っ込みつつフレッドを見る。

「・・・謝らねぇぞ。」

「ああ、結構だ。その代わり、ゆっくり話を聞いてもらうぞ?」

「なんだよ。」

「まずは今の状況だ。君が一日眠っている内に獣人達は鎮圧され、街を襲った暴徒として収容された。」

「一日も寝てたのか・・・俺。」

「ディグ特性の麻酔薬だ。像でも眠らせられる優れ物だぜ?」

 ライがへらへら笑いながらあの時俺に撃ち込んだと思われる注射器を指の間でぷらぷらさせながら見せつけてくる。

「お前よくそれ人体に注入しようとか思ったな。」

 『死んだらどうする』って言いたい所だが話が進まないので聞き流す。

「政府は今にでも彼等を証人として獣人を害獣指定しようと準備をしている。まさにB.R.A.I.Nの思惑通りの展開だ。」

 フレッドは淡々と状況を話す。

「まずいだろそれは! だから俺は獣人(あいつら)止めようとして・・・!」

「落ち着きなって、彼等が捕まるのは僕たちにとっても都合が良いんだ。」

「なんだよそれ・・・獣人達をみすみす猟犬(ハウンド)にする気か!?」

「・・・。」

「・・・?」

 フレッドは何故か呆れたように笑みを浮かべたまま黙って俺を見る。

「・・・なんだよ。」

「君がやったことと同じことをこれからやろうとしているんだがね・・・。」

「俺が・・・?」

 俺がやったこと・・・俺、何かしたっけ?

「彼等は今、奴らに捕まって今にも絶対絶命。しかも今収容されている施設はそう簡単に脱出出来るものじゃない。」

「じゃあ助けにいかないと・・・!」



「ああ、助けにいこう。」



「は?」

「何かおかしな事言ったかな?」

 フレッドはにこりとしながら平然と話すが何故かそれが馬鹿にされてる気がしてならない。

「いや、あいつら捕まるように仕向けた癖になんで助けるのは賛成なんだよ!」

「もぉ~! お兄ちゃんの鈍感!」

「あ?」

 ルタが突然割り込んでくる。

 しかも得意げに腰に手を当てながら俺の額に人差し指を突きつける。

「い~い? 今助けに行ったら獣人達に恩を売れるでしょ? そしたらB.R.A.I.Nの事をちゃんと聞いてもらえるし協力関係も結べるってこと! 分かりましたか? 出席番号1番ウルド君!」

「やかましいわッ! ナースか教師かハッキリしろ!! ハァ・・・でもまぁやりたいことは分かったよ。わざわざ恩を売れるタイミングまで事態を静観してたってのは俺的には頂けないけどな。」

「バッカお前、んな綺麗事言える状況か?」

 俺の倫理観を笑い飛ばしながらライが口を挟む。

「いきなり会って『手を組め』って言っても俺らも一応『ロキウスの人間』だぜ? 協力してくれる所か殺しに来るのがオチだ。」

「そーそ! 交渉には取引材料は不可欠! 恩を売るのは当然当然! コスプレ撮影もモデルとの交渉が命なんだよ! いくらいい機材やコスを用意してもモデルがゴネたらそもそも撮影にならないからね!」

「サン、お前はこっちがゴネる余地もなく無許可で着せてるよな? あと何気にその小さなカメラでパシャパシャやるのやめろ。」

「まぁ、とにかくだ。」

 話の脱線を断ち切るようにフレッドは軽くぱんと手を合わせる。

「次に我々がするべき目的は獣人(かれら)の救出だ。ただし、すでに時間が無い。」

「・・・。」

 確かにそうだ。

 B.R.A.I.Nもいつまでも表の収監施設に獣人達を置いておくほど甘くない。

「ではこれより!」

 突如フレッドが手の平を目の前に突き出す。



作戦(オペレーション)『獣人お助け! 我々今日だけ動物愛護団体!』の作戦会議に入る!」



「なんだその気の抜ける作戦名ッ!!!」

「発案者はサンだ。」

「あぁ・・・ソウデスカ・・・。」

 自慢げに俺に向かって両手にピースをするサンを見ながら俺は掠れた声で魂の抜けきった人形のように脱力して肩を竦めた。



~??? プロテア宮殿~


「訓練終了!」

 兵達へ号令を出すと兵士たちは疲れた表情を浮かべつつも兵舎へ戻っていく。

 訓練所がもぬけの殻になった瞬間・・・。

「はあああああぁぁぁぁぁぁぁ・・・・・・。」

 物凄くため息をついて脱力する。

 副団長として、バンズ団長のように気合を入れて訓練するのも楽じゃない・・・。

 でも団長がいないからって兵達が気を抜いて緩み切ってる中に団長が戻ったら俺が大目玉くらうからなぁ・・・。

「正直向いてないんだよなぁ・・・。」

 思えば騎士になって最初に先輩になったのがバンズ団長、それがそもそも俺がここまで来てしまった原因だ。

 当時から鬼のようにスパルタでしごかれてあの人を怒らせないように訓練やら勉学やら必死こいてやってたらいつの間にかあの人に引きずられるように副団長なんて重い仕事につく羽目になったんだよなぁ・・・。

 いや、一人の騎士として王国の民を守っていきたいって気持ちはあるよ?

 でもそれ副団長なんて重い仕事に着かなくても出来るからなぁ・・・。



「そこで腑抜けているのはネルス副団長か?」



「はいッ!?」

 突如後ろから声が聞こえて肩をびくっと跳ね上げる。

 で、その声のする方を見ると。

「ッ・・・ツ、ツインズ団長! お疲れ様です!」

 すぐに背筋を伸ばし、左胸に手を当てて敬礼する。

 『ゲッ!』って思わず言いそうになった!

 あぶねぇええええええぇ・・・!

 ある意味バンズ団長以上に苦手なんだよなぁこの人・・・。

「フン、全く・・・兵が居なくなった途端に気を抜くとは情けない。」

「め、面目次第もございません。」

「これだからバンズにも言ったのだ。『辺境の町なんぞに現を抜かしてないで王宮につけ』とな。」

「団長にそのような事を・・・。」

 まあ、団長はこの人がそんなことを言おうが迷わず町を優先するだろうけど・・・。

「こんな腑抜けの副団長に王宮を任せるなど、全く持ってあの男は見立てが悪い。」

「はぁ・・・。」

 それには大いに同意。

 向いてないって前々から思ってたしな。

「全くあの男は前から団長職には向いてないと思っていたのだ。下賤の平民如きが王宮で仕えるなぞ分不相応も甚だしい。加えて判断も悪い無能だ。」

「・・・!」

 いや、なんで団長を馬鹿にする流れになってるんだよ!

 おかしいだろ!

「あの男は昔からそうだ。『剣に誓った心得があれば身分など関係ない』と、現実を見れば守るべき相手を見誤り、本来仕えるべき王を捨てて辺境の町に出るのだからな。」

「・・・。」

 俺はそうは思わない。

 だって騎士は王だけじゃない、民も守らないといけない。

 そういうものだろう?

 『民が居なくなれば王がいても国は成立しない、つまりは民を守る事も結果的に王を守る事だ』。

 あの人はそう言ってその信念に従って騎士として生きて来た。

 俺だってその信念は立派だと思うしそれに似た思いで平民上がりだったけど此処まで頑張って騎士になったんだ!

 それをこの男は・・・!

「何が『剣に誓った心得』だ。笑わせる!」

「ッ!!」

 怒りが頂点に達し、今にも殴りかかろうとした瞬間・・・。



「こ~れはこれはツインズ団長! 予定より早く訓練所へ来るとは精が出て何よりだなぁ!」



「!?」

 誰かが俺とツインズ団長の間に割って入る。

「キリア団長・・・!」

 俺を背に向けてツインズの前に立ちはだかった女性は王立騎士団第一師団の団長、キリア団長だ。

 家柄も良く、文武両道に長け、その上部下や民に慕われる程の人望、正に騎士になるために生まれたような人だ。

「キリア団長か。こんな場所まで何の用かな?」

「いや、偶さか近くを通りかかっただけだ。それより聞いたぞツインズ団長。魔導研究室に配属されるのだそうだな。」

「・・・。」

 魔導研究室。

 今度新設される王宮の学者専用の施設だ。

 騎士達は施設の警備のみならず、魔法の研究にも携わるらしい。

 つまりは武術のみならず学も納めて居なければ出来ない職務だ。

「ふむ、耳が早い。私にしてみれば実に王は適した場に私を寄越したと思うよ。」

「いやはや士官学校を首席で卒業した実績は伊達ではないな。立派な活躍をしているようで。」

「フッ。」

 ツインズは満足げに鼻で笑う。

「ッ・・・。」

 なんだよおべっか使いやがって・・・!

 なんだよなんだよ・・・!

 結局平民風情は貴族のご機嫌取っとけってことなのかよ・・・!


「立派と言えばバンズ団長もそうだな。」


「?」

 え?

「あのものが何か?」

「彼はカザの町だけでなく、その周辺の村まで目を行き届かせてうまく警備している。それにカザの町のギルドの冒険者ともうまく折り合いをつけて連携を取っていると報告に上がっている。民衆に考えの近い彼だからこそ出来るのだろうな。」

「・・・!」

 キリア団長の言葉にツインズ団長は眉を潜める。

「王も大変喜んでいるそうだ。彼をカザに派遣して正解だったとな。」

「王が喜んでいるとて所詮は田舎町の警備だろう。褒められたところでどうというものでもあるまい。」

「これは噂なんだがな・・・。」

「む?」

「カザの町は王のご親友の故郷らしい。」

「ッ!」

 ツインズ団長の顔が段々苦虫を噛み潰した様に歪んでくる。

「だとすればこれは相当重要な任務だ。王もよほど彼を信頼しておられるのだろうな。」

「ッ・・・!」

 ツインズ団長は悔しそうに歯軋りをする。

 うわぁ、さっきまで俺に対して散々イキってたのが嘘みたいだ・・・!

「フンッ、所詮噂は噂だろう。私は信じんぞ? 仮にも王である方がそんな田舎町に知り合いなんぞおるわけが無いからな!」

「信じる信じないは各々の自由だ。デマだと思うなら好きに吹聴すればいい。」

「ハッ、下らん。実に不愉快だ。そんな噂の真偽にかまけている程私も暇ではないのでな。私も配属先の件で忙しいのだ。とんだ茶番に時間を食わされた! これにて失礼する。」

 そう言ってツインズ団長は不機嫌そうに去っていった。

「・・・ふっ、嫌味を言いに来るほど暇なくせにな。」

 ツインズ団長が見えなくなってからキリア団長はボソリと皮肉を吐いた。

「・・・。」

 余りに突然すぎる展開にただポカンと突っ立っていた俺を尻目にキリア団長は振り向く。

「!」

 相変わらず綺麗な人だ。

 白い肌に長く靡く金色の髪、透き通るような青い瞳。

 鎧姿だが彼女はそれすら自分専用のドレスの様に着こなしている。

 この容姿と実力とカリスマ性、親しみやすい性格も相まって彼女は騎士達の間では男女問わず人気が高い。

 密かに非公認で彼女のファンクラブすらあるらしい。

「あ、あの・・・。」

「なぁに、気にするな。私はありのままを話しただけだ。彼の実力は私も認めている。此処の連中は知らないだろうが彼はちょくちょく城下町にも顔を出して治安維持に尽力している。お陰で城下町には余計なトラブルも少ない。」

「は、はい。自分もそれはエレノア補佐官から聞きました。」

 やっぱり見てる人は見てるんだなぁ。

 それにこんな綺麗な人に此処まで認められる団長が男としてちょっと羨ましい!

「彼はカザでも上手くやっている。それに君もだ、ネルス副団長。」

「!」

 美人に誉められて素直に嬉しいのだが、俺はすぐに視線を反らす。

「じ、自分は・・・その・・・。」

「うん?」

「ッ!?」

 キリア団長は心配そうに顔を横に傾けて俺の顔を覗き込んでくる。

 顔が近くて思わずドキッとする。

 顔が熱い!

 絶対今俺顔が赤いぞこれ!

「そ、その・・・半分くらいはあの男の言う通りです・・・自分が無能なのは自覚ありますし・・・。」

「はは、何を言っている! 無能な奴に彼が王宮に残した兵を任せるもんか! でもまぁ、彼が君にこの仕事を任命したのは単純に信頼って訳じゃないかもな・・・。」

「え?」

「これは君への彼なりのスパルタなのだろうよ。自分が突然いなくなった事態に備えてのな。」

「はは・・・あの人なら考えかねません・・・。」

「それに君の『我慢強さ』を見込んでの事だろう。」

「我慢強さ?」

「君は新人の頃から彼の下で働いていたのだろう? 彼も初めての部下は君だと聞く。だったら彼のスパルタに一番長く耐えてきたのは君だ。我慢強さは折り紙つきだろう?」

「は、はぁ・・・。」

 なんか素直に喜べないような・・・。

「王宮にはツインズ団長の様な平民上がりを良しとしない貴族連中も沢山いる。そう言った連中に先程の様な嫌味を言われることもある。それを捌くのもこの王宮でやっていくには必要なことだ。彼は上手く捌いていたが君にも慣れて貰いたいのだろう。」

「言われてみればそうかもしれません。」

「ああ、だからそんなに卑屈になることはないぞ! 君なら大丈夫だ。我慢強いからな!」

 彼女は屈託のない笑みで俺の肩に手を置く。

「・・・キリア団長って。」

「うん?」

「バンズ団長のこと、よく見てるんですね。」

「え?」

 キリア団長は不意打ちを食らったかのように硬直する。

「ッ!」

「?」

 突然キリア団長の顔が赤くなった。

「い、いや、とと、当然だろうッ!」

 そう言って急に俺から少しだけ距離を取る。

「騎士として、同僚の優秀な部分を認めるのは当たり前だッ! 彼を特別扱いしているわけでは、断じてッ! ないッ!」

「・・・。」

 あれ~?

 これもしかして・・・。



「団長!! 探しましたよッ!」



「?」

 突然入り口の扉が開いたかと思うとまた騎士の女性が入ってくる。

「れ、レシスか、どうした?」

 キリア団長は先程の動揺からすぐに建て直して彼女の方を向く。

 彼女はレシス。

 キリア団長の補佐官で、見た目は美人タイプのキリア団長に比べて弱冠可愛い感じの見た目だ。

「た、大変なんですッ!」

「どうした!?」



「獣人の暴徒が城下町を襲撃してるんですッ!」



「城下が!?」

「行くぞ! ネルス副団長! 兵を集めろッ!」

「は、はいッ!」

 キリア団長はすぐに駆け出し、俺も兵士達を集めるために兵舎へ向かった。

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