#52 鎮圧
~ライ ロキウス市街地~
「ぅ・・・ぁ・・・!」
ウルドは白目を向いて前のめりに倒れる。
「・・・。」
俺は近づかず、敢えてその場で銃を構える。
すると・・・。
「ッ・・・!」
突然ウルドの腕輪が光りだしたかと思うとルタが現れて俺の目の前に立ちはだかる。
「・・・。」
「・・・。」
ルタは杖を構え、俺も銃を構え、互いに動かない。
だが・・・。
「・・・。」
「?」
俺は銃を降ろす。
ルタは不審そうに俺を見る。
「杖降ろせよ。」
「・・・聞くと思う?」
ルタは尚も構えを緩めない。
「お前とやり合うつもりはねぇよ。『猫』・・・。」
「・・・・・・ハァ。」
ルタは溜め息を吐いて軽く目を閉じると薄目で鋭く俺を見る。
「・・・知ってて気づかないフリなんて趣味が悪いですよ? 『死霊使い』。」
「てめぇが言えた口かよ。つかあんな監視に気付く奴がルヴァーナにそうそういるかっつの。」
「黒と銀の二対一体大型六発拳銃、『マグナムDH-0013』、通称『死神の鎌』、絶大な威力の代償に余りの重量で実用困難な骨董品。そんな酔狂な武器を使う人間も他にいるわけないでしょう?」
「ハッ、お互い自己紹介の必要も無さそうだな。」
「それで? 何で私達の邪魔をするんですか?」
「・・・。」
「この状況はあなた達にも好ましくないのでは? このまま獣人たちが暴徒として鎮圧されればロキウスの政府はあるがままに事実を世界に広め、獣人は害獣指定されるでしょう。」
「そうだな。」
「そうなればB.L.A.I.Nは大手を振って 獣人たちを狩ることができる・・・猟犬の量産体制が盤石になればますますB.L.A.I.Nには手をつけられなりますよ? いいんですか?」
「寧ろそう言う流れになってもらわんとこっちが困る。」
「どういうことですか? ・・・ッ!?」
ルタは驚く。
俺が杖を持っている腕を突如掴んで引き寄せたからだ。
「・・・なんのつもりですか?」
零距離まで顔を近づけるがルタは慌てもせず薄目で俺を睨む。
「・・・。」
「ッ・・・?」
俺がさらに顔を近づけるとルタは嫌そうに目をぎゅっと閉じる。
キスでもされるかと思ったのだろうが違う。
ルタが目をうっすらと開けると俺の顔はルタの横にあった。
「----------。」
耳元で囁くように耳打ちする。
「・・・ハァ。」
するとルタは呆れたように息を吐く。
「・・・なるほど。」
~グラ ロキウス市街地~
俺とオカマ野郎は同時に前に出る。
オカマ野郎が右拳を突き出すと俺はそれをかわし、後ろに回り込む。
そして身体を回転させ、右足の後ろ回し蹴りを放つ。
だがオカマ野郎もそれを見切り、俺の足をつかむ。
「むぅんッ!!」
そのまま近くの壁に向かって投げ飛ばす。
「へっ!」
だが俺はすぐに空中で体勢を立て直し、ぶつかるはずだった壁を蹴り奴の方へ跳んでいく。
その勢いを利用してオカマ野郎に飛び蹴りを放つ。
オカマ野郎は横に跳んで回避する。
その瞬間俺は、先ほどの飛び蹴りで砕け散って宙に舞った固い地面の瓦礫をつかみ、オカマ野郎に何発も投げ飛ばす。
だがオカマ野郎は 手に仕込んだ鉄鋼を利用してそれらを全て弾き飛ばす。
お互いに遠距離で戦う手段がなくなると、また前に出る。
今度はお互いに真っ向から殴り合う。
だが互いに己の拳が相手に届くことはなく激しい突きのラッシュは互いの拳同士でぶつかり合う
何十発ぶつけ合ったかわからないラッシュの撃ち合いの最中、俺は割り込ませるように左足のハイキックを放つ。
だがそれも相手と思惑は一緒なようで互いに蹴りは右の脇にヒットし、お互いに左側へ吹き飛ぶ。
だがこのぐらいでは俺も奴もダウンせず、すぐに立ち上がる。
「・・・どうやらさっき言ったことはハッタリじゃないみたいね。」
オカマ野郎はわずかに吐血した口を拭って皮肉を吐く。
「ったく・・・火神でも倒せねぇとかどんな化け物だよ・・・。」
息を切らす俺を眺めながらオカマ野郎はにやりと笑う。
「あんたを捕まえれば相当いい猟犬になりそうね。」
「はっ! 誰がてめーらの木偶人形になる成り下がるかッ!!」
「けどあんたも懲りないわね。」
「あ?」
何言ってんだこいつ?
「ビリー大尉!!」
「!!」
声のする方を見るとさっきの眼鏡の女が取り巻きを引き連れて銃を構えていた。
「チッ・・・!」
戦ってる間に追いついて来やがったのか。
「あんた頭に血がのぼりやすいんじゃない? 同じ手に引っかかるなんて学習能力ないわねぇ。」
「くそ・・・!」
『グラは確かに強いけど周りのことをよく見てないよ。』
レガに言われたことを思い出した。
そう言われた時、いつも俺は全員ぶっ飛ばしは同じだろって返して聞きもしなかったが今になってこの言葉が痛いほど胸に刺さった。
けど関係ねぇ!
ロキウスの奴らは全員ぶっ飛ばす、やることは変わらねぇ!!
「うわああああああああああぁぁぁぁ!!」
俺はやぶれかぶれにオカマ野郎に向かって行くがその瞬間辺りには数え切れないほどの銃声が響いた。
~メロ 抵抗組織基地~
「そしたら師匠、私の事馬鹿にしたみたいに『お前がアホ過ぎるだけだろ』って言うんですよ!」
「あはは!!」
起きてからしばらくティルと話をしていたのです。
私が師匠とのこれまでの旅の事を話すとティルは興味深く聞いてくれてたのでついつい喋り過ぎてしまったのです。
でも師匠の正体は師匠やルタから口止めされているので話さないですが、それでも話すネタは尽きなかったのです。
「・・・。」
「え? メロさん?」
私が黙り込むとティルは急に困った様に私を見るのです。
「も、もしかして、笑ったらいけませんでした?」
「いや、ティル、笑ったらカワイイのです。」
「え!! いや、あの・・・こ、困ります! そんなこと言われると・・・その・・・!」
「照れてる顔もカワイイのですぅ!」
「ちょ、ちょっとメロさん! くっつかないで!」
抱きついて頬ずりするとティルは泣きそうな顔で喚くけど関係ないのです!
「動くなッ!!」
「!!」
急に変な武装をした集団が銃を持って部屋に入ってきたかと思うと私たちを包囲してきたのです。
「なんなのですかッ!!」
「お前の連れが二人この基地から脱走した。」
「!!?」
師匠達が脱走!!?
「ど、どうして・・・!」
「お前も脱走する恐れがある。悪いが拘束させてもらう!」
兵隊の一人が私に近づくと・・・。
「ッ!」
ティルが両手を広げて兵士の前に仁王立ちしたのです。
「あの・・・えっと・・・。」
ティルは何か言いたそうだけど上手く言葉に出せないみたいなのです。
「ティル・・・気持ちは分かるが仕方ないんだ・・・だから・・・。」
兵士は宥めるようにティルの肩に手を置くけど・・・。
「ぃで・・・。」
「?」
「メロさんに乱暴しないでッ!!」
「ッ!? うわあぁッ!!」
突如兵士が何もされていないのに何かに殴られたように吹き飛んだのです。
「え、ええ!?」
それだけじゃないのです!
部屋に置いてあった絵の額縁やテーブルが宙に浮いて今にも兵士達に襲い掛かって行きそうになっているのです。
「ティル! 分かった! 落ち着け! 落ち着いてくれ!」
「あ!」
兵士が慌てて命乞いをするとティルは我に返るのです。
すると周りの額縁やテーブルがすとんと地面に落ちたのです。
「ご、ごめんなさい!! あぅ・・・また私・・・!」
ティルが謝ると兵士達はため息を吐いたり呆れたりしながら立ち上がるのです。
「分かった。」
「え?」
「その子と仲良くなったみたいだし、部屋からは無理矢理連れ出したりしない。その代わり、この部屋からは出さないでくれ。」
「はい・・・それでしたら・・・。」
「頼んだぞ。」
兵士たちはなんだか仕方なさそうに出て行ったのです。
「な、なんか・・・悪い人じゃなさそうな感じだったですけど・・・。」
「はい・・・ここの人達、ちょっと怖いけど、みんないい人たちです。」
「ところで・・・。」
「あ、はい! 兵隊さんたちに頼まれたのでごめんなさい。部屋から出ないでもらえると・・・。」
「は、はい・・・出ないです・・・。」
聞きたいことそれじゃないのですが・・・。
と言うか逆らうと後が怖そうなのです・・・!
師匠早く帰ってきて!!
~ゾルガ 市街地~
「おらどうしたどうしたぁッ!」
「くそっ!」
「弾幕緩めるな!! 来るぞぉ!」
ロキウスの奴らは何故か銃しか使わない。
まあおかげでやりやすいからいいんだけどよ。
「ぶぉらぁぁッ!!」
「ぐわああぁッ!」
猪共は自慢の突進力でロキウス兵たちを吹っ飛ばし・・・。
「風 杖 放出・・・風刃~!」
「痛い! ぎゃああ!!」
羊が魔法を唱えると風の刃が飛んでいき、ロキウス兵を切り刻む。
だがそこに・・・。
「くたばれッ!」
「んん?」
物陰から隙をついてロキウス兵が羊の奴に短剣を持って跳びかかる。
だが・・・。
「愚か者ッ!!」
鹿のク族が腕を掴んで投げ飛ばす。
「祈祷師、ご無事で?」
「ん~、いつも助かってるよ~。」
鹿のク族は羊のゴ族に従属している部族で所謂祈祷師の守護者の使命を持っている部族だ。
他の部族が盟約を破って羊族を襲わないとは限らないので代々護衛をしている。
そのせいか攻めるというより守る事に特化している。
まぁ、今この場で言ってもどうでもいいことだな。
で、戦況はと言うと、狂戦士がいないせいで奴らはどんどん押され気味になって 戦線が下がっていく。
全く、バカかこいつら!
「そろそろ奥の手出したらどうだ!!」
俺は銃を構えるロキウス兵共に仁王立ちして抗議する。
「何を言ってるんだ貴様ら!!」
「狂戦士は出さねぇのかって言ってんだ!! 俺らの国で散々消しかけてきやがったくせによ!!」
「何を言ってるんだ貴様らは!! 我々が何を消しかけて来たと言うんだ!!」
「おいおい、今更とぼけんのかよ・・・まあいいや、てめえらみたいな雑魚しかいないんならこのまま押し切るだけだ・・・ん?」
突如夜になったみたいに空が暗くなる。
見上げるとそこには・・・。
「何だありゃ!!」
猪の一人が声を上げると他の奴らもこぞってどよめき始める。
瞬間、大きな轟音とともに何かとてつもないデカい物が降ってきた。
「おいおいまじかよ・・・!」
それはとてつもない化け物だった。
門で見た小さな鉄人形どもと似たようなものだが、こっちは大きさがまるで違う。
俺の背丈の二十倍はデカい。
しかも手足があって、他の兵士のように銃を持っていたがその銃も奴の背格好に大きさを合わせてるもんだからバカみたいにでかい。
「はは、こりゃやべえな・・・。」
さすがの俺もこれには笑うしかなかった。




