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嘘つき英雄と嘘の妹 ~旧版~  作者: 野良犬タロ
ロキウス編
51/101

#51 無力


~ウルド ロキウス市街~


「撃てぇッ!!」

「くそがぁッ!!」

「うおっ!?」

 指揮官が号令を掛けると兵士が一斉に銃をぶっ放してきて俺はグラの腕を掴んで近くの建物の陰へ隠れる。

「おいッ!」

「なんだよ・・・!」

 グラが非難気味に声をかけて来る。

「お前どっちの味方だよッ!」

「お前の味方じゃなかったら助けるかッ! ちょっと待ってろ!」

「?」

 グラが戸惑う中俺は手に持っていた瓦礫の破片を捨てる。

「は?」

 グラが声を上げるのも無理はない。

 俺は手を両手に上げて奴らの前に出る。

「・・・どういうつもりだ。」

 指揮官の女は今にも銃を撃とうとしている兵士に手をかざして『待った』の合図を掛けながら俺を睨む。

「どういうも何も見たまんまさ。こーさん、俺にお前らと戦う意思はねぇよ。」

「獣人・・・ではないな? 他国の人間か?」

「ああ、一応ルヴァーナから来たモンだ。」

「アステリオンの南隣の国か・・・他所の国が何故獣人に加担する!」

「いいや、()()()は獣人に加担してない。」

「な!!?」

 グラが物陰から声を上げる。

「やっぱりてめぇ裏切ってたのか!!?」

「うるせぇッ!! 最後まで話を聞けッ!!」

「ッ!!?」

 俺が注意するとグラは言葉に気圧されて怯む。

「おいそこの眼鏡のねーちゃん!」

「!? な、なんだ、変な呼び方で呼ぶな!!」

 女は顔を赤くして俺を非難する。

「あんたがその部隊の指揮官か。」

「・・・だったらなんだ!」



「『B.R.A.I.N』って組織知ってる?」



 俺が一番やりたかったことはこれだ。

 そして俺の読みが正しければ恐らくは・・・。

「・・・?」

 女の眉間が歪み、今にも『は?』と言ってしまいそうな程口の締まりが悪くなっている。

 顔色一つ変えずに即座に口先で『なんだそれは?』と言われれば甚だ疑問だがこのリアクションは恐らく何も知らない顔だ。

「・・・そうか、やっぱりか。」

「何の話をしてるんだッ! それになんだその組織は!!」

「聞けッ!!」

 俺が一歩前に出ると兵士たちは即座に銃を構えなおす。

「お前らと獣人は踊らされてるんだよッ!!」

「何を言っているッ! ・・・まさか、適当な事を言って私達を混乱させる気か!?」

「違ぇッ!! 獣人がこの町を荒らして何も知らないお前らがそれを鎮圧すれば獣人はただの暴徒扱いされる!!」

「そ、それがどうした!! 扱いも何も今この場で罪もない市民を虐殺しようとしている獣人が暴徒以外のなんだと言うんだ!!」

「獣人達は自分たちを守るためにロキウス(こっち)に攻め入ってきたんだッ! B.R.A.I.Nのやってる



「なぁにやってるの? ケディ少尉?」



「ッ!?」

 ケディと呼ばれた彼女に後ろから声を掛けたのは・・・!

「てめぇ、ビリー・・・!」

 あの時のオカマ野郎だ・・・!

「ビリー大尉! 申し訳ありません!」

 ケディはビリーに敬礼する。

「暴徒に手を貸してる時点でそいつも暴徒でしょん? さっさと撃っちゃいなさい! どうせ当たっても麻酔弾なんだし。」

「し、しかし・・・奴の口からは我々の知らないような情報が・・・!」

「そんな物、悩むよりも・・・。」

「ッ!?」

 ビリーは兵士の一人から銃を奪う。



「捕まえて聞いちゃった方が早いでしょん?」



「ッ!!」

 俺に向かって銃を構えるビリーの顔は笑みが浮かんでいた。

 だがそれはかなり邪悪な物だった。

 そしてそれがすぐに『馬鹿な奴を嘲笑う笑み』だと理解できた。

 でなきゃ辻褄が合わない。

 先程から後ろにいたのならケディに聞かせた俺の話を聞いてるだろうが、それを即座に『暴徒の言葉』として早めに切り上げて実力行使に出たからだ。

 まるで()()()()()()()()()()()()ように・・・!

 恐らく奴は・・・!!

「くそぉッ!!」

 銃の弾幕が張られる中、すぐに先程の建物の陰に逃げ込み、グラの手を掴む。

「おい!?」

「逃げるぞッ!!」

 グラの手を引き、小道を走って逃げようとするが・・・。


「ッざけんな!」


「!?」

 グラは俺の手を振り払う。

「お前さっきから訳分かんねぇぞッ!」

「詳しい話はあとでするッ! 今は


「なぁにぃ? 鬼ごっこするんじゃないのぉ?」


「くっ!」

 ビリーは部下を率いて追い掛けてきていた。

「とにかく逃げるぞッ!!」

「な!? おいッ!!」

 強引にグラの手を引いて狭い路地裏を走る。

 幸い道が入り組んでいるので追っ手を撒くには最適だった。

「ハァ・・・ハァ・・・!」

 必死に走っているうちに追っては見えなくなり、さらにしばらく走ると少し開けた場所に出る。

「ハァ・・・ハァ・・・。」

「ゼェ・・・ハァ・・・!」

 落ちつけそうだったので止まって膝に手を着いて息を落ち着かせる。

 グラも同様に尻餅を着いて大股開きで天を仰ぐ。

「お前・・・さっきからなんなんだよ・・・!」

「・・・ああ、今なら説明できそうだな。実は


「あ~ら、鬼ごっこはもう終わり?」



「ッだああああああああああああああぁぁぁぁぁもうッ!! うッぜぇんだよこのオカマ野郎さっきからぁッ!!!!!」




 空気読めこのオカマ野郎ッ!!!

 流石に三度も会話遮られりゃキレるわッ!!!!

 いやホントキレてる場合じゃないんだけどな!

 ビリーは何故か俺たちの進行方向の前に腕組みをしながら立っていた。

「くそっ・・・あの時の加速か・・・!」

 恐らく奴が最初に現れた時に俺たちの前で見せた謎の加速だろう。

「あたしから本気で逃げられると思ってたの?」

「くッ・・・!」

 確かにその通りだ。

 どういうからくり使ってるか知らんが俺達より奴の方が圧倒的に足が速い。

 他の兵士はともかく、こいつから逃げ切るのは不可能かもしれない。

「はっ・・・上等だ。」

「おい!?」

 グラは立ち上がって槍を構える。

再戦(リターンマッチ)だ。」

「あ~ら、そうくる?」

 ビリーも鉄鋼を仕込んでいると思われるグローブの拳を構える。

「おい馬鹿やめろッ!!」

 すぐにグラに制止をかける。

「あの時手も足も出ないの忘れたのか!!」

「ウルド・・・。」

「あ?」



「お前は行け。」



「・・・!」

 何言ってんだ・・・?

 いや・・・!

「まさかお前・・・殿(しんがり)のつもりか!」

「行けっつってんだよッ!!」

「何言って

「俺に言おうとしたこと・・・。」

「!?」



「仲間に会ったら伝えてくれ。」



「いや、出来るかそんなの!」

「頼むッ!!」

「・・・ッ!!」

 『頼む』。

 普段のグラからは想像も出来ない言葉だ。

 それぐらい切羽詰まっているのが痛いほど伝わってくる。

 グラの言葉に押されて判断が揺らぐ。

『お兄ちゃんッ!!』

「!?」

 腕輪からルタの声が聞こえる。

 声がなんだか怒鳴り気味だ。

『どの道奴から逃げるのは無理! グラの判断が正しいの分かるでしょ!?』

「・・・うぅ。」

 ルタの言うことはご尤もだ。

 でも俺は・・・!

「行けよ馬鹿野郎ッ!!」



「くそおおおおおおおおおおおおおおおおぉぉぉぉッ!!!」



 悔しさを噛みしめながら走った。

 ビリーは脇を走る俺をにやりと笑いながらあえて何もせずに見送った。



~グラ ロキウス市街地~


「ぷッ・・・あっはっはっはっは!」

 オカマ野郎は急に笑い出す。

「泣かせるわねぇ! 自らを犠牲に仲間を助けるなんて!」

 一頻(ひとしき)り笑い終えると息を落ち着かせるて俺を見る。

「まぁ、あの坊やが何しても無駄だと思うわよ? 何せこんな騒ぎだもの、みんなあんたみたいに話を聞く余裕なんてないわよきっと。」

「はっ・・・馬鹿かお前!」

「あぁん?」

 オカマ野郎は俺の一言に形相を変えてメンチを切る。 

()()? 今犠牲って言ったか?」

「あ~ら、聞こえなかった? じゃあ何度だって言ってあげるわよ?」

「安心しろ、負ける気なんざさらさらねぇよ。」

「何? まだあんたあたしに勝てる気でいるの? この間の戦いで散々思い知ったはずだけど?」

「あの時は本気出して無かったんだよ。こちとらそうそう使える本気じゃないからな。」

「へぇ~、強がりもそこまで来ると大したものねぇ?」

「強がりかどうかは・・・。」

 俺は槍を地面に着きたてて固定して手放す。

「見れば分かるぜ・・・。」

 腰を落とし、瞬時に全身に力を溜める。



「ガアアアアアアアアアアアァァァァァァッ!!!!!!」



 魔覚と全神経に意識を集中して力を溜めると体温が上がるのが分かる。

 チリチリと肌を焼く音と共に頬に紋章が浮かぶ。

「へぇ・・・。」

 オカマ野郎はにやりと笑う。

「ケルディウスちゃんが言ってた『小隊を全滅させた獣人』・・・あんたの事だったのね?」

「能書きはいい・・・さっさとかかってこい。」

 ゆっくりと状態を起こし、人差し指で招きながら俺は挑発した。



~ウルド ロキウス市街地~


「ハァ・・・ハァ・・・!」

 走れど走れど・・・。

「ハァ・・・ハァ・・・!」

 周りは戦火ばかり。

「・・・!」

 獣人達を見つけた!

 しかし・・・!


「ロキウスを許すなぁッ!!」

「暴徒を鎮圧しろぉッ!!」


 ロキウスの兵たちと争っている。

 無論相手は何も知らない兵達だ!

「やめろおおおおおおおぉッ!!!」

 俺は奴らに叫ぶ。

 だが銃声と武器のぶつかり合う音、建物の崩れる音、引火して炎が上がる時の爆音、何よりも・・・。

「クソロキウスがぁッ!! 思い知れオラァッ!!」

「獣人風情が調子に乗るなああぁッ!!!」

 憎しみに満ちた怒号。

 こんな余計な雑音ばかりでは俺の言葉なんて耳に入らない・・・!!

「くそっ・・・!」

 分からないのかよ・・・!

 お前ら良いように戦わされてるんだぞ・・・!

「うわああぁんッ!!」

「!」

 子供の泣き声が聞こえてそっちを向くと酷い光景だった。

 その子供の親と思われる女性が頭を瓦礫の下敷きにされて死んでいた。

「ロキウスのクソ野郎共ぉッ!!」

「侵略者めぇッ!!」

「!」

 戦ってる奴らは見向きもしない。

「おい・・・ふざけんなよッ・・・!」

 こんな不幸な親子が目の前にいるんだぞ・・・!

 いいのかよそれで!!

 これが『戦争』だってのかよッ!

 ふざけんじゃねぇッ!!



「やめろぉッ!! やめろっつってんだよこの馬鹿どもがぁッ!!!」



 キレ気味に叫ぶ。

 しかし戦いの雑音は無情にも俺の声を奴らには届けちゃくれない。

「くそぉッ!!」

 こんなにも無力感を味わったのは魔王と戦ったあの時以来だ・・・!

 俺はどうすることも出来ないのか・・・!

「ッ!!?」

 突如するどい痛みが俺の首筋に走る。

 何か鋭い針で刺されたみたいだ。



「無理無理、やめとけって。」



「・・・!」

 後ろに居たのは・・・!

「ライ・・・ッ!?」

 なんだ?

 目の前が・・・視界がグラグラする・・・歪んで・・・!

 くそ・・・麻酔か・・・!

『お兄ちゃんッ!!』

 ルタの声・・・すまん・・・俺は・・・!

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