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嘘つき英雄と嘘の妹 ~旧版~  作者: 野良犬タロ
ロキウス編
48/101

#48 記憶


~グラ 密林~


 夜が明けて俺達は早速武器や食料を持ってロキウスへ向けて進軍していた。

 昨晩の怪我は引き摺っていて全身包帯まみれだが羊のゴ族が薬草を特別に調合していた霊薬とやらを飲んで多少は動けるようにはなっている。

 途中、狂戦士(バーサーカー)を引き連れたロキウス兵に出くわしたが戦力を集めた俺達ではどうということは無い。

「大分奴らとの戦いも慣れて来たな! こりゃ楽勝かもな!」

「あ、お前死ぬな! そうやって油断してる奴ほど先に死ぬんだ!」

「何をぉ!? そういうお前はビビッてイモ引いてるだけなんじゃねぇのかぁ!?」

「おぉん!?」

 獣人達もさっきからこの調子だ。

 元々血の気の多い連中だ。

 戦いが終わったあとでも喧嘩は絶えない。

 こんな時()()()がいたら止めに入るんだろうな・・・。


「・・・!!!」


 すぐに頭を掻きまわして今の事を忘れようとするけど頭から離れない!!

 ああもうッ!!

 なんだよ、もやもやするッ!!

「なぁに悩んでんだ、お前らしくもねぇ!」

 歩いている列の後ろから親父が追いついて来て俺の頭に手を乗せる。

「親父・・・。」

「お前が男を引き摺る時が来るなんてなぁ・・・。」

「そ、そんなんじゃねぇ!!」

「まぁ行っちまったんなら仕方ねぇさ。でも惜しいよなぁ・・・あんな強い奴中々居ないのになぁ・・・。」

「だからそんなんじゃぁ・・・!」 

「お前の気持ちも分からんでもないさ、レガもお前に鍛えられてちったぁ見ごたえも出てきてた奴だ。それを殺されりゃ俺だってな・・・。」

「・・・。」

 いつまでも勝手に話を進める親父。

 何言っても無駄だから何も言わないだけだ。

 親父にはあれから全て話した。

 あのチビ助がレガを殺したこと、それをウルドが庇って俺達の元を去った事全部だ。


「殴れ。」


「・・・は?」

 何言ってんだ親父?

「『許せない』ってのは『ムカつく』って事だろ?」

「ん? んん、そう、だよな???」

 なんか違うような・・・いや、間違ってもないような・・・ああもうッ!!

 頭がこんがらがってきた!!

 もういい同じだ同じ!!

「だったら今度会ったときぶん殴れ。一発思い切りどかぁんとな!!」

 そういって親父は思いっきり空気に向かってアッパーカットを放つ。

「そんで、そのあとの事はそのあと考えろ!」

「・・・。」

 如何にも親父がやりそうな事だ。

 まぁ、確かに俺もそれはやりたいと思うからおかしいとは思わないけど。

「それでもし・・・。」

「あ?」

「もしそれでも許せなかったら?」

「それもその時考えろッ!!」

「わっ、やめろ親父ッ!! やぁめぇろぉ!!」

 親父はそのデカい手でわしゃわしゃと俺の頭を撫でまわす。



「着いたぞ!」



「お!」

 奴らの関所が見えて来た。

 第一の山場だ!



~メロ ???~


「・・・。」

 目を開けても風景は変わらなかったのです。

 あの地獄の中。

 私、死ぬのですか?

 このままこの氷の世界の中で・・・。


『ぐッ・・・がふッ・・・。』


「!」

 何か声が聞こえてきたのです。

 でもなんか苦しそうな・・・!

「・・・。」

 起き上がると案外何ともないのです。

 おかしいのです。

 確か剣のような物で腹部を貫かれた筈。

 いや、そんなことはどうでもいいのです。

「何処ですか!?」

 声の主を探すのです。

「・・・!」

 また目の前に人影らしき(もや)があるのです!

 でもその人影は上体が低い・・・倒れてるのです!

「しっかり!」

 駆け寄って人影の身体を抱き起こすのです。

『何を・・・してる・・・のデスか?』

「!」

 聞き覚えのある声・・・やっぱりなのです。

 こいつ、あの時の・・・!

「どうして・・・弱ってるのですか!?」

『どうでもいい・・・答えるのデス・・・! これは・・・なんの真似・・・デスか?』

「・・・!」

 そうなのです・・・。

 こいつは私を・・・!

『お前を殺そうとした・・・私を・・・どうしてこんな・・・!』

「・・・るさぃ。」

『・・・?』

「うるさいのですッ!!」

『!?』

「苦しんでる人を放って置くなんて・・・私には出来ない・・・師匠も、父も母も絶対同じことするですッ!!」

『放って置いたって別に大丈夫なのデス・・・此処は精神の空間・・・精神が回復すれば私も元通りになれるの・・・デス。』

「え、そうなのですか?」

『お前のやってることは・・・無駄・・・なのデス・・・。』

「・・・。」

『だから・・・放すのデス・・・。』

「・・・。」

 『放せ』と言われると・・・なんだか・・・。

「・・・。」

『何をしてる・・・のデスか?』

 私は人影を抱きしめていたのです。

「あなた・・・友達いないのですか?」

『な!?』

「こんな場所で・・・ずっと一人だったのですか?」

『お、大きなお世話なのデスッ!』

「えへへ♪」

 人影が身じろぎをすると私はそれに逆らって抱きしめる手を離さない。

「それで?」

『?』

「誰にやられたのですか?」

『・・・お前の師匠とやらデスよ。あと一歩まで追い詰めたけど勝てなかったのデス。』

「そっか・・・やっぱり師匠は強いですね。」

『・・・。』

「・・・。」

 しばらく沈黙が続くけど・・・。

「一人が嫌なら・・・私が此処にいるのです。」

『え?』

「あなたは外に出て・・・師匠やルタ・・・色んな人に出会って、そしたら一人じゃないのです・・・。」

『・・・それでお前はどうするのデスか?』

「私は・・・ずっと此処に居てもいいのです・・・私は許されないことをしたから・・・みんなの前からいなくなった方が。」

『・・・。』

「ッ!!?」

 突然人影に突飛ばされると体が急に上に引き寄せられるような・・・いや!

 重力が真逆になったかのように地面から離れていくのです!

『そんな綺麗事・・・許さないのデス。』

「ちょ、これ、どうなってるのですかぁぁぁ!?」

『お前はその『罪』と向き合い、『答え』を見つけるのデス・・・そうすれば・・・。』

「何!? どういう事ですかぁ!?」

『心配しなくていいのデス! お前とはいずれ会えるのデス!』

「!」

 その人影は顔も見えない。

 姿も見えないのに表情が分かるのです。

 笑ってたのです!


 いや、そんな事どうでもいいのですッ!!


「わああああああああああッ!!!!!!!!」

 かなり高い所まで()()()()()と、扉のような物を通り過ぎて外に放り出されていくのです。

「!」

 見覚えのある風景が見えるのです。

「あ・・・!」

 ふと右を見れば泣いてる私を囲んで言い争っているローブの男の人と鎧の女の人・・・あれは!

「お父さん・・・お母さん・・・!」

 見てると辛くなって来るのです・・・。


 そうだ、だから私は・・・!


「!」

 更に落ちて行くと今度はギルドの中での私なのです・・・。

 叱り着ける頭目(リーダー)だった剣士(ソードマン)の男、蔑む様に笑う魔術師(メイジ)の女、二人を諭しつつ私を慰めてくる野伏(レンジャー)の男。

 上昇(ライズ)も魔法も中途半端で役立たずだの言われ、馬鹿にされ、哀れまれ、惨めだったのです・・・。


 自分だけの力で両方極めようなんて無理だって思い知らされて・・・それで・・・!

 

「!」

 更に落ちて行くと一番見覚えがある光景なのです・・・!

 山道を抜けたようとしていた先に望遠鏡で()()()()を見ていた私・・・!

 望遠鏡の先では大きな雷を纏った剣で邪悪な鎧を纏った敵を圧倒したあの人・・・。

「師匠・・・!」

 噂を聞いてこの人しか居ないと思ってた・・・!

 この光景を見てこの人の他に居ないと思った・・・!

 だから私はこの人に教わりたいと思った・・・!

「うっ・・・!」

 落ちて行く私の背中から急に眩しい光が差し込んで来たのです!

 そして光に包まれ、何も見えなくなると・・・!



「はぶっ!!?」

「はぅッ!!?」



 起き上がると同時に何かにおでこを思いっきりぶつけたのですッ!?



~灰色髪の少女 抵抗組織(レジスタンス)基地~


「はぁ・・・。」

 タオルと水の入った桶を持って通路を歩く中、ため息を吐いた。

 私はなんでこんなにダメなんだろう。

 サンがいつもディグにやってること、初対面だからあの男の人にはやっちゃダメって言いたいけど口に出せない。

 結局私が部屋に入ったタイミングであの人が目を覚ましたからきっと誤解してる・・・。

 でも私も悪い。

 サンを止めること出来なかったから私もやったのと同じ・・・。

 それにさっきの女の子も勝手に目を覚まして何処かに行っちゃうし、私がついててあげないといけなかったのに逃げられちゃう・・・。

 本当にダメだな私・・・。

 今こうやって介抱してるのだって大体の事が終わったあと・・・。

 ディグが作った治療用の培養液の入ったカプセルに一晩入れて怪我がほとんど治ってる状態であとは目を覚ますまで安静にさせるだけ・・・。

 そんな簡単な事も出来ないから本当にダメな女・・・。

「・・・ッ!」

 首を横に振って気をまぎらわせる。

 兄さんが言ってた。

 『失敗したなら次頑張ればいい』って!

 だから切り替えないと・・・!

「・・・?」

 最後の小さな女の子が眠ってる部屋に入ったら何か聞こえる。


「う・・・ぅぅ・・・!」


「!」

 魘されてる!

 治療中に何か身体に異常があったのかな!?

 ああ、こんな時どうすれば・・・!

「あ、あのッ!」

 とにかく駆け寄って声をかける。

「だ、大丈、大丈夫ですかッ!?」

 慌てて噛みながらも声をかける。

「うぅ・・・ぁぁ・・・!」

「・・・!」

 ダメ、全然ダメ!

 やっぱり兄さんを呼びに行った方が・・・!



「はぶっ!?」

「はぅッ!?」



 女の子が急に起き上がって丁度顔を覗き込んでいた私とお互いにおでこをぶつける。

「痛ったぁ・・・!」

「うぅ・・・。」

 お互いに頭を押さえて踞る。

「・・・? ここ、何処ですか? って言うかあなた誰ですか!?」

「あ、えと・・・!」

 急に質問された!?

 えぇと此処が何処かって聞かれたからまずは抵抗組織(レジスタンス)の基地で、あとなんて聞かれたっけ!?

 どうしよう!

 頭がパニックで分からない!

 なんて答えたら・・・!

「えっと・・・あなたは・・・。」

 ああ、何も答えないから相手が困ってる!

 どうしようどうしようどうしよう!

「・・・ひっぐ。」

「え?」

 どうしようもなくて泣いてしまう。

「あ、あの、もしかしてさっき当たったの痛かったですか!? ごめんなさいですッ!!」

「・・・ちがぅ。」

「え?」

「違うんです・・・私が悪いんです・・・ごめんなさい・・・。」

「え?」

「ごめんなさいごめんなさいごめんなさいッ!」

 女の子に土下座して謝る。

「ちょっと! 謝らないで欲しいのです! 困るのです!」

 女の子は慌ててベッドから降りて私の前に座り込むと私の身体を起こしにくる。

「私、ホントにダメで・・・何やってもダメで・・・!」

「・・・。」

 女の子は少し固まると何故か笑顔になる。



「じゃあ私と一緒なのです!」



「え?」

「私も一緒なのです! ダメダメなのです!」

「え?」

「私、立派な冒険者になりたくて師匠に弟子入りしようとしてるけど師匠に全然認めて貰えなくて弟子にしてもらえないのです!」

「え、えと・・・。」

 こんな年で冒険者になろうとしてる時点で立派なような・・・。

「みんな出来ないことがあって当たり前なのです! だからこれから頑張ったら良いのです!」

「・・・!」

 兄さんみたいなこと言ってる・・・。

「あ、泣き止んだのです!」

「ご、ごめんなさい、お見苦しい所を・・・。」

「だから謝らないで良いのです!」

「はぃ・・・。」

「私はメロです! あなたは?」

 名前!

 名前だ、えっと・・・!

「ティ、ティルです・・・。」

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