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嘘つき英雄と嘘の妹 ~旧版~  作者: 野良犬タロ
アステリオン編
46/101

#46 決別


~ウルド 岩山~


「きひゃはははは!!」

 メロは右腕を突き出して襲い掛かる。

 押し潰すつもりだ。

 だが大味過ぎる。

 感覚上昇(センスライズ)を使うまでもなく右に跳んで難なく回避する。

DEATH(デス)ッ!」

 俺の横を通り過ぎた氷の腕は地面を凍らせ、氷の波を発生させる。

 だがそれも見た。

 上に飛んで回避する。

「ひははッ!」

 メロは左腕を突き出して迎撃する。

 ここだ!

 空中で氷の腕を捌き、メロに向かって斬りつけに行く。

「ッ!?」

 突如左から攻撃が来て吹き飛ばされる。

「ガハッ!?」

 なんでだ・・・!?

 奴の腕は足代わりになって地面に着いている筈なのに・・・?

「くそ・・・ッ!?」

 すぐに起き上がって構えると自分の目を疑う。

 なんとメロはあの巨大な氷の腕を持ち上げたまま自分の足で立っていた。

 ありえない。

 あんなでかい腕、あの小さい体で持ち上げるのは不可能だ!

 いや待て!

上昇(ライズ)か・・・!」

 考えれば自然な事だ。

 あいつは足に上昇(ライズ)を使うのが得意だった。

 恐らくは足の力であの巨大な腕を支えているんだ。

「あは、はは、ひぁはははははッ!!!」

 メロはゆっくりと回り出す。

 回転は段々と速くなり、ついには目にも止まらぬ高速の回転となり、その巨大な腕を振り回し始めた。

「アホかこいつはッ!!!」

 めちゃくちゃだ!!!

 『技』と言うにはあまりにもお粗末すぎる!!!

 でも近づけないのは事実だ・・・くそ、ふざけてやがるッ!

 しかもだんだんこっちに近づいてくるしふざけんなッ!!

「・・・。」

 だが腕から逃げているとすぐに理解する。

 足は遅いな。

「それなら・・・。」

 俺は走ってメロから離れる。

 メロも俺の位置がわかるようで追ってはくるが足は遅くどんどん引き離される。

 十分に距離を取ると俺は今度は奴に向かって走り、上昇(ライズ)を使って思いっきり跳躍する。

「・・・上ががら空きだぞ。」

 横回転攻撃の定番の弱点だ。

 俺は脳天に向かって剣を振り下ろす。

 しかしメロはすぐにそれに反応し、腕の遠心力を利用して右腕で俺に殴りかかる。

 けど俺にはそれは関係なかった。

 こいつを覆っている氷を破壊できるならどこでもいい。

 腕だろうがどこだろうがこの剣を叩き込むだけだ。

 俺は向かってくる氷の腕に向かって剣を振るう。

 効いている。

 氷の腕が剣に触れるとその部分から瞬時に溶け始める。

「くっ・・・!」

 だが半分溶せただけでもう半分は溶かせなかった。

「がぁッ!」

 無残にも俺は残った氷の腕に殴り飛ばされる。

「あはは、あは、あはははは!!」

 やつの腕はまだ再生し始める。

「くそッ!」

 もっと連続して当てないと駄目か!

 いやでもあの巨体に対してこんなわずかな効果だけで攻撃するとなると途方もなく手数が要る。

 さっきのルタみたいにでかい一撃をぶちかませるなら話は違ってくるだろうが今のルタではだめだ。

 魔力を吸われてるからとてもそんなことはさせられない。

 しかも俺の剣に使っている付与(エンチャント)魔法は維持するだけでも魔力を消耗する。

 この戦いは時間をかけられない。

 どうする・・・!

「!」

 もしかすると・・・。

(トネル) (エペ) 接続(コネクション)

 俺は魔法を詠唱する。

雷光の刃(ライトニングエッジ)

 剣が炎の上から雷を纏い始める。

 二つの魔法が同時に剣に付与(エンチャント)されている。

『お兄、ちゃん・・・?』

 腕輪の中のルタが戸惑う。

『何、してるの・・・? 氷には雷が・・・効かないの知ってるでしょ・・・?』

「分かってる・・・。」

 けど俺にはある仮説が浮かんだ。

 さっきのルタの巨大な火の玉でメロの腕や翼を消し飛ばしたのに俺の炎の剣ではそれが出来ないのは何故か。

 それは勿論火力の違いだ。

 それで火力の違いは炎の大きさ・・・。



 本当にそうなのだろうか?



 確かに魔法の相性はあるのだろうが、俺の読みが正しければ或いは・・・。

DEATH(デス)ッ!!」

 メロは勢いよく走ってきて氷の右腕を振り下ろしてくる。

 俺は何とか回避するが今度は左腕の攻撃が横から来るので後ろに跳んで躱す。

 更に右腕を突き出して来たのでわざと身体を倒して回避したあと、転がって距離を取ってから起き上がる。

 さすがに使える腕が二本になっただけあって手数が増えた分やりづらい。

メロも腕の重さに慣れてきたせいか奮ってくる腕も速くなっている。

 こりゃ攻撃の間の隙をつくのは無理だな。

 ならやることはひとつしかない。

 俺は全力で走りながら跳躍する。

「ぁははッ!」

 メロは腕を突き出してくるがもう俺は防御しない。

 その腕に向かって思いっきり剣を突き出す。

 氷の巨大な腕に押され、そのせいか剣にヒビが入る。

 だが関係ない。

 このまま押し切る!!


「ッ!?」


 メロは目を見開く。

 氷の腕が溶けるスピードが早いからだ。

 俺の読みは正しかった。

 ルタのあの巨大な火の玉は確かに効いていた。

 けど単純に炎が効いたからだけじゃない。

 ()()()()()がでかかったからだ。

 メロのあの氷の鎧が魔力に依るものなら放った魔法で打ち消し合えば壊れるのは必定。!

 それでルタが俺の剣にかけた付与(エンチャント)魔法の上に俺の付与(エンチャント)を上乗せすれば出力が上がって効果が上がると踏めば案の定上手く行った。

 だがメロも良いように腕を破壊される程甘くない。

 氷の腕は溶け始めるがそれに負けじと再生もしている。

 こうなるともうお互いの意地と意地のぶつかり合いだ。



「うぉあああぁぁぁぁぁぁッ!!!」



 剣に込められた魔力を全力で注ぎ込む為に気合いを込めて咆哮する。

 だが・・・。

「ッ!!!??」

 突如剣が折れた。

「ぐわぁッ!!」

 さっきのように押しきられて殴り飛ばされる。

「くっ・・・!」

 すぐに上半身を起こす。

 無理な使い方をした挙げ句に魔法による酷使。

 安物の短刀(ショートソード)じゃ折れるのは当然か。

 頼みの綱である炎の剣も無くなった。

 万事休すだ!

「ひひ、ぁははッ!」

 万策尽きた俺に止めを刺そうとメロはゆっくり近づいてくる。

 さっきから殴られ続けた負傷(ダメージ)で逃げる余力がない。

 メロが左腕を振り上げ、全てが終わったと思った瞬間だった。

「ッ!!!?」

 突如氷の腕にヒビが入る。

 するとそのヒビから駆け巡るように雷が走る。

「ぎ、が、ぎゃあぁぃあああぁあぁああぁッ!!!!」

 メロは叫びを叫び声を上げる。

「魔力が・・・残ってた?」

 どうやら折れてメロの氷の腕に刺さったままだった剣の刀身に俺の魔力が残っていたみたいだ。

 いやそれよりも・・・!

『雷が・・・効いてる・・・?』

 ルタも訳が分からないみたいだ。



「ちょっと溶けかけの水を含んだ氷ならまだしも・・・」



「・・・そうか!」

 ルタの言葉を思い出して確信する。

 氷が溶けて水になりかけた亀裂部分から感電したんだ。

 水は雷をよく通す。

 やがて雷は氷の腕は愚かメロの体中を鎧のように被っていた 氷にまで達し、全体を駆け巡る。

 さっきの攻防で全身の氷にも魔力が回って溶けかけていたみたいだ。

「ぎぎゃああぁあぁあぁあああぁッ!!!!!」

 雷と共に全身に駆け巡った魔力はメロの氷を内側から破壊し、氷は全て粉々に砕け散っていった。

 中身が露になったメロは天を仰いだかと思うとそのままその場に倒れた。

「メロッ!!」

 俺は駆け寄ってメロを抱きかかえ、生死を確認する。

「ぁ・・・ぅ・・・!」

 白目を向いて泡を吹いているが息はある、どうやら雷の感電で痺れて気絶しているだけのようだ。

 良かった・・・。

 いや白目を向いてるから一概に良かったとは言えんが・・・。

「ッ!?」

 突如後ろから殺気を感じ、折れた剣を背中に添えると派手に金属がぶつかり合う音がする。

「・・・。」

 俺は何も言わず振り向く。

 思った通りやったのはグラだ。

 グラは柄の折れた槍の穂先を俺に突き出していた。

 おそらく槍はさっきメロに殴り潰されていた時折れたのだろう。

 当の本人は身体中痣や血だらけで立ってはいるがフラフラだ。

「何の真似だ・・・っていうは野暮か。」

「そいつをよこせ・・・これは俺とそいつの問題だ。」

「悪いがそうもいかん。こいつは俺達の旅に勝手についてきた奴だけどな・・・それでも仲間だ、殺させる訳にはいかねぇんだよ・・・!」

「だったらお前も殺す。」

「ハッ・・・そうなるよな。」

 俺はグラに向かって折れた剣を構える。

「・・・。」

「??」

 様子を伺うがグラは一向に仕掛けてくる気配がない。

「・・・。」

 グラは俯くと突如槍の矛先を降ろす。

「どういうつもりだ。」

「・・・。」

 問いただすとグラは答えずにそっぽを向く。

「行け・・・。」

「・・・いいのか?」

「勘違いするな・・・お前と殺し合えば俺は間違いなく火神(アグニ)を使う・・・そうなったら明日ロキウスに殴り込めないからだ・・・。」

「そうかよ・・・。」

 俺はため息混じりにメロを背負って歩き出す。

「・・・・・・。」

「・・・・・・。」

 お互い背を向けたまま、これ以上言葉を交わさなかった。



―――メロを背負ったまま岩山を降りて密林を歩く。


 結構長く歩いた。

「・・・ハァ。」

 疲れたのでメロを木の下に降ろす。

 その拍子に膝を着くと、途端に疲れで力がどっと抜けて倒れそうになる。

「お兄ちゃん・・・!」

 ルタが急に現れ、倒れそうになった俺を受け止める。

「何してんだよ・・・。」

「だって・・・。」

「お前の方が辛いだろ・・・!」

 そうだ。

 さっき魔力を吸い取られながら魔法を使ったんだ。

 ルタの方が休まなきゃいけないのに・・・!

「心配・・・してくれるんだ・・・。」

「うるせえ・・・。」

「・・・お疲れ様。」

 ルタは笑いかける。

「・・・。」

 その頭に黙って手を乗せる。

 『よくやった』とか言う意味でやってない。

 こっちがヒヤヒヤするくらい無茶しやがったしな。

 ただ何となく手を置いただけだ。

「その言葉・・・熨斗つけて返してやるよ。」

 俺が皮肉気味に笑って悪態をつくと、それを合図にしたわけでもないのに同時に立つための最後の力が抜けてお互いにメロの方に倒れ込んだ。



~ライ 密林~


「さてと。」

 木の上からやつらの眠っている近くに着地する。

「ったく・・・。」

 いくら余裕がなかったとはいえこんなとこで寝るとか自殺行為だろ。

 まあいい、結局こいつらは獣人と仲違いをして同盟破棄。

 つまりは今フリーなわけだ。

 こいつらにとっては思惑が外れたんだろうが俺らにとってはむしろ好都合だ。

「ディグ、聞こえるな?」

 通信機でディグに連絡を取る。

「うん。」

「こいつらを回収する。」

『了解、ホバー機をそっちに向かわせるよ。』

「サ~ンキュ。」

 おそらく奴らも俺たちの存在に気づき始めている頃だ。

 長居は無用、さっさとおさらばさせてもらおう。

「引き上げるぞ、サン、お前もさっさと帰ってこい。」

『オッケイ♪』

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