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嘘つき英雄と嘘の妹 ~旧版~  作者: 野良犬タロ
アステリオン編
44/101

#44 目覚め


~メロ 岩山~


「グラ・・・此処にいたのですね。」

「・・・。」

 村の近くにあった岩山・・・。

 少し登った先に大きな岩があり、その上でグラは月を眺めるように天を仰ぎながら杯で酒を飲んでいたのです。

「・・・。」

 相変わらずグラは無言で何も喋らないのです。

「此処で・・・灯の儀をしたんですね・・・レガと・・・。」

 マカ村に戻って灯の儀について聞いたのです。

 大体の獣人は景色の良い場所を選ぶため、マカ村の獣人はこの岩山を使うと聞いたのです。

 だからきっと此処に来ると思っていたのです。

「・・・失せろ。」

 踏み込んではいけない話をしている・・・グラは当然のごとく悪態をついて私を突き放すのです。

「そう言う訳には行かないのです。」

「・・・失せろ。」

「聞いて欲しいのです。」

「・・・。」

 グラは突き放すのをやめたのです。

 話は聞いてもらえそうです。

「私・・・アステリオンに来る前に・・・獣人の狂戦士(バーサーカー)と戦ったのです。」

「・・・!」

 グラはピクリと一瞬耳を立てるのです。

「その時

「待て。」

「!」

 話す途中にグラに止められたのです。

「何を・・・何を話す気だ・・・?」

「あなたに謝らないといけないことがあるのです・・・!」

「・・・・・・・・・なんだ?」

 グラは未だに振り向かないけど俯きながらわなわなと震えているのです。

 きっと何を言うのか薄々勘づいているのです。

「アステリオンの関所の近くの村まで馬車に乗せられて向かっている途中・・・。」

 それでも・・・。

「三体の狂戦士(バーサーカー)に襲われたのです・・・。」

 それでも言わないといけないのです。

「私は・・・氷の魔法を使って彼らをなんとか彼らを()()()()()()()しようとしたけど・・・出来なかったのです・・・。」

「・・・・・・だからどうした。」

「そこにルタが現れて炎の魔法を使って・・・二体殺したのです・・・そのあと・・・仕留めきれなかった最後の一体を私が・・・殺したのです・・・!」

「そうか・・・・・・『派手な火の玉』ってやっぱりあいつか・・・じゃあお前かあいつなんだな・・・? レガを殺したのは・・・。」

「違うのですッ!!」

「・・・なんだよ、どう考えたって

「私が剣で刺し殺した獣人が・・・最後に言ってたのです・・・。」

「なんだよ・・・何が言いたい・・・!」



「『グラ、ゴメン』・・・って・・・!」



「・・・!!!!!」

「私が・・・わだじが・・・レガを・・・! レガを殺じだのでずッ! わだじが・・・うぐ・・・ッ!」

 涙が止まらないのです・・・!

「・・・・・・・・・。」

 グラは先程の震えも無くなって力なく俯いているのです。

「・・・ふ・・・はは・・・ははは・・・!」

「グラ・・・?」

「あッはッはッはッはッ!! ハッハッハッハッハッハッ!!」

「!!?」

 グラが急に大声で笑い出したのです。

「それで『ごめんなさい』って!!? わざわざお前それを言う為だけに俺のところに来たのか!!! ハッハッハッハッハッハッ!!」

「何が可笑しいのですか!!」

「ハッハッハッ・・・はーっ、あぁ・・・。」

 一頻り笑うとグラはまた静まり返るのです。

「グラ・・・?」

「・・・お前謝りに来たんだよな?」

「は、はい・・・。」



「じゃあ()()()()()()()()()()()()()?」



「ッ!!!」

 グラの言っているのは私の()・・・私は今、道中や戦うときの様に剣を腰に差しているのです。

「こ、これは・・・ッ!?」

 答えに迷っている内に一瞬カランと言う硬い物の上から木で出来た棒状の何かを拾う音と共に強烈な殺気を感じたのです。

 その瞬間、反射的に剣を腰から抜くのです。

 その時既にグラは()()()()()私に飛び掛かって来ていたのです。

「くっ!」

 グラの槍の振り下ろしを右に跳んで回避すると今度は横振りが来るので後ろに跳んで回避するのです。

 更に突きが来るので剣で軌道をずらしつつ左に身体をずらして回避したのです。

「!?」

 グラは何故か槍の矛先を地面に向けて縦に持って構えるのです。

 しかし次の瞬間、グラは槍を地面に突き立てたかと思えばその勢いを利用して天高く跳び上がったのです。

「分かってたんだろ?」

 そしてそのまま身を捩って横にずらすとそのまま自分を軸に槍を縦向きに一回転させて私の脳天目掛けて振り下ろして来たのです。

「ぐぅッ!」

 奇怪な動きに上手く反応できず、回避が遅れたので剣を二本とも構えて矛先を受け止めたのです。

 しかし・・・。

「ぅ・・・うぅ・・・!」

 重い・・・!

 元々強い獣人の筋力に、回転を使った遠心力、落下の重さをかけた一撃は強力で、まるで巨大な岩を受け止めさせられたみたいなのです・・・!

俺が殺しに来ること(こうなること)をよぉ!! えぇッ!!?」

 物凄く殺気の篭った眼で私を睨みながら槍を押し込んで来るのです。

「ぐくっ、うぅ・・・!」

 潰されそうなのです・・・!

 物理的にだけじゃなく、精神的にも・・・!

 でも・・・!

「うあああぁッ!!!」

「ッ!」

 必死に声を上げて殺気を押し返し、身体をずらしながら剣をずらして槍を住なしたのです。

「ガッ!?」

 槍を受け流され、体勢を崩したグラの側頭部に上昇(ライズ)を込めた蹴りを喰らわせるのです。

 しかし・・・。

「へっ・・・。」

「!!!?」

 グラは私の足を左頬にめり込ませたままにやりと笑う。

「ぁ・・・!」

 気がついた時には遅かったのです。

 既にグラは拳を堅め、右肘を後ろに引いて構えて居たのです。

「がッ!!!」

 身体が宙に浮いたかと思った時、その時ようやく自分が見事な腹部拳打(ボディブロー)を喰らっていた事に気づくのです。

「ゲェッ・・・!」

 口から胃液の混ざった唾液が出て来て宙に舞うのです。

 しかしそれだけでは終わらないのです。

「ぅがッ!?」

 グラが足を振り上げていると思った時、既に私は側頭部にさっき私がグラにしたのと全く同じ蹴りを喰らっていたのです。

 けど私とグラでは威力が全く違い、私は派手に数メートル先まで吹き飛ばされ、数回跳ねて無様に転がったのです。

「ぐく・・・・・・ッ!!?」

 痛みにのたうち回りそうになったけどすぐに高速で近づく足音が聞こえて前を見る。

 グラが既に私の身体に突き立てようと振り上げていたので急いで身体を転がして槍の軌道から逃れて起き上がって距離を取るのです。

「お前・・・訳分かんねぇな。」

「??」

 グラが突然よく分からないことを言い出すのです。

「レガを殺したことをすまないとか思いながらッ!」

「ッ!」

 言いながらグラは走って距離を詰めて槍を横に振ってくるので後ろに跳んで回避するのです。

 更に槍を振り下ろして来るので右に回避するのです。

「俺がこうやって殺しに来るの分かってた癖にッ!!」

 今度は連続で突きを放って来るのです。

 感覚上昇(センスライズ)で軌道を見切って何とか紙一重で回避するのです。

「そうやって抵抗するんだからなッ!!!」

「ッ!」

 更にグラは連続攻撃に振り下ろしや横振りを入れてきたので感覚上昇(センスライズ)で見切りつつ避けきれない攻撃を剣で防いでいくのです。

「まぁ別に・・・。」

「ッ!?」

 一瞬槍がふわりと宙に浮く。

「ッ!!」

 しまった!!

 気が付いた時にはグラの姿が消えていたのです!

「別に良いけどな。」

 グラはしゃがんでいたのです。

 それも私の視界に入らない程低く!

「ぐッ!?」

 グラはすぐに鷹の鉤爪の様に手を伸ばすと私の首を掴んでそのまま力任せに押し込んで私を叩きつけてきたのです。

 そしてすぐに槍を難なくキャッチするのです。

 グラは()()()槍を上に投げていたのです。

 私が感覚上昇(センスライズ)で極端に槍に視線を集中するのが分かってて・・・!

「お前なんか殺そうと思えばいつでも殺せるけどな。」

「ぐ・・・が・・・あぁ・・・!」

 喉を潰されて息が出来ないのです・・・!

「あとお前、ひとつ勘違いしてるからな?」

「・・・?」

狂戦士(バーサーカー)になっちまった奴を殺すのは悪いことじゃない・・・俺達だってそうする。」

「・・・!」

 だったらどうして・・・!

「けどレガは話が違う・・・。」

「・・・?」

 何を言って・・・!

「あいつは・・・あいつがもし狂戦士(バーサーカー)になったら・・・俺が・・・俺が殺さなきゃならなかったんだッ!!」

「!!」

「どうしてお前がやったッ!! どうして俺の大事な役目を奪ったッ!!」

「ッ!?」

 グラ・・・泣いてる・・・!

「お前だけは・・・お前だけは絶対に許さないッ!!」

 グラは槍を振り上げるのです。

「死ね・・・あの世でレガに詫びろ・・・!」

「・・・。」

 グラの怒りは最もなのです。

 私が此処でグラに殺されるのは仕方無いことなのです。

 でも、今この瞬間思うのです。

「・・・たく・・・な・・・・・!」

「・・・? 今更何言ったって変わんねぇよ・・・死ねッ!!」

 グラは無慈悲に槍を振り下ろして来たのです。

 嫌だ・・・!



 死にたくないッ!!!!



――――――


「・・・ッ!?」

 気が付くとグラは目の前にいなかったのです。

 しかも空は薄暗く、吹雪が吹き荒れ、背中に当たる地面は冷たかったのです。

 身体を起き上がらせるとそこは・・・。

「此処・・・何処ですか!?」

 私のいる場所は凍った地面の上、木々は一切生えておらず、近くの岩山も氷と見違えるくらい雪を被っているのです。

 私の故郷の北国ですら此処まで凍り付いた場所では無いのです。

「此処って・・・『地獄』・・・?」

 ああ、そうか・・・。

 きっとそうなのです。

 私、きっとグラに殺されて地獄に落ちたのです。

 天国に行くなんて虫が良すぎるのです。

『・・・いつまでそうしてるつもりなのデスか?』

「?」

 声が聞こえて立ち上がり、辺りを見渡すのです。

 しかし誰もいない・・・いや・・・。

「あなた・・・誰ですか?」

 目の前に何か人影のような『(もや)』が見えるのです。

 透明な筈なのにそこだけ人型に視界が歪んでいる・・・明らかに誰かがいるのです。

『私が此処にいるという事だけは認識出来るようデスね・・・しかしそれだけではあなたに資格は無いのデス。』

「資格・・・? 何を言ってるのですか?」

『何を言ってるのデスか? あなたが此処に来た時点で資格を求めて来た筈デス・・・まぁいいデス。』

「だから何を言ってるのですか!?」

『あなた、甘すぎるのデス。』

「甘い・・・?」

 急に何を言い出すのですかこいつは?

『罪悪感に苛まれ、剣を握っても相手を斬る事すら出来ない・・・。』

「・・・!」

 さっきのグラの事を言ってるのですか!?

「仕方ないじゃ無いですか!! 悪いのは・・・どう考えたって私・・・! だから

『だからその考えが甘いのデス。』

「なんでですか!!」

『自分が悪いと分かっていながらなんであなたは剣を持って来たのデスか?』

「それは・・・。」

『あなたはさっき答えを言っていたじゃないデスか。』

「!!」

『死にたくないから剣を握り、自分が悪いから相手を斬れない・・・あなた・・・何がしたいのデスか?』

「ッ・・・!」

 何も言い返せないのです・・・。

『剣を持って相手が武器を構えた・・・なら辿り着く真実は二つに一つなのデス。』

「真実・・・?」

『『自分が死ぬ』か・・・『相手が死ぬ』・・・それだけなのデス。』

「違うッ!! それは違うのですッ!!」

『何が違うのデスか?』

「私はただ・・・グラを止めたくて・・・!」

『それでグラを斬れず、グラに殺されようとしているこの体たらくでそれが言えるのデスか?』

「ッ・・・!」

 それは・・・!

『もういいのデス。』

「ッ!!?」

 突然腹部に激痛が走るのです・・・!

『お前は役立たずなのデス。』

「・・・!!!」

 血が・・・腹部から何かを貫かれて血が出ているのです・・・!



主導権(からだ)は『私』に任せてお前は此処で永久に眠っているがいいのDEATH(デス)。』




「・・・!」

 私を貫いたそいつの姿が少しだけ見えたのです・・・!

 そいつは青い氷の角を生やしていたのです・・・!



~グラ 岩山~


「死ねッ!!」

 チビ助の心臓目掛けて槍を振り下ろす。

 何の躊躇もない。

 まさに今にも殺しそうな時だった・・・。

「ッ!!!?」

 ガキィンと何か硬い物がぶつかり合う音が聞こえる。

「何ッ!?」

 奴の身体が氷に包まれていた。

 その氷は奴の首を掴んでいる俺の腕すらも氷に巻き込んでいた。

「くっ!!」

 なんとか氷を砕いて離れようとするが氷に手が張り付いて剥がせない。

「うああああああッ!!」

 無理やり手を引き剥がす。

 そのせいで掌の皮膚がはがれたが関係ない。

「ふ・・・ふふ・・・。」

「ッ!」

 違和感に気づく。

 奴は笑っていた。

 しかも普段のこいつからは想像つかないような不気味で気持ち悪い笑い方だ。

「なにがおかし・・・ッ!? うわあぁッ!!」

 奴は急に光りだした。



「・・・・・・!! なんだてめぇ・・・その姿・・・!」



 俺が目にした奴の姿は・・・!

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