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嘘つき英雄と嘘の妹 ~旧版~  作者: 野良犬タロ
アステリオン編
40/101

#40 介入者


~??? 密林~


「よぉ、例の反応はこっちで間違いないか?」」

 密林の茂みの中、俺は耳に付けた通信機に向かって話しかける。

『うん、確かその先は猪族の村がある所だよ。』

 通信機の向こうからは変声期にも入っていない年端のいかない少年の声が聞こえる。

 あらかじめアステリオンの各地に飛ばしていた偵察機から昨日の夕方から南から所属不明の反応をレーダーでキャッチしたのを確認して調査を始めた。

 昨晩、レーダーの反応の近くまで迫っていたが運悪く敵と鉢合わせて戦闘になり、反応を喪失(ロスト)してしまった。

 恐らく戦闘音を聞いて警戒されたのだろう。

 今朝も移動していたようだが獣人の村にいるって事は・・・。

『もしかして・・・獣人達と交流してる・・・?』

「だろうな。」

 昼間に村に入っている以上、他に考えようがない。

『そんな馬鹿な! 獣人は野蛮でまともにコミュニケーション取れる相手じゃないよ! ましてや反応があるのは只人(ヒューム)嫌いの『ゴ族』の村だ! 余所者が来たら最悪殺される!』

 通信機の向こうの仲間の声は焦っている。

 まぁ無理もない。

 何も分かってもいない相手に死なれでもしたら折角調査に来た意味がない・・・。

 仲間も相手に対し、今にも『無謀な事してふざけるな』と言い出しそうだが・・・。



「気に入った。」



『・・・は?』

 仲間は困惑の一声を上げる。

「最高にイカれた奴だ。」

『そ、そうだね。イカれてるね。で、今ライ兄なんて言った?』

「俺らの目的にはあんな奴が必要だろ?」

『・・・。』

 仲間は黙り込む、恐らくは俺の言葉に呆れて居るんだろう。

『確かに僕等のやろうとしてることはイカれてるけどさ・・・。』

「だったら問題ナシだ! 引き続きナビは頼むぜ!」

『ハイハイ・・・。』

 仲間の声はため息混じりに呆れていた。



~ウルド クガル村~


 村長のゴトマは言った。

 『相応しい決闘場(リング)に案内してやる』と。

 その決闘場(リング)は村の中心に堂々と佇んでいた。

 直径僅か十数メートルの円状に敷かれたしめ縄。

 そしてその真ん中には『此処から始めろ』と言わんばかりの平行に並ぶように引かれた白い線・・・ってこれ。



『まんま相撲じゃんッ!!』



 って突っ込もうとして口の先まで出かかった声をなんとか飲み込む。

 クガル村にとってこの喧嘩は神聖な物らしく、静かに見守らなくてはならないらしい。

 村人は皆、あぐらをかいて座り、二人の登場を今かと待っていた。

「ひがぁ~しぃ~! クガル村~ゴト~マ~!」

 笹の葉で作られた仰々しい衣装に身を纏った試合を取り仕切る行司と思わしき猪男がゴトマの名を読み上げる。

 すると近くに人が一人居るのがやっとな程の小さな小屋からゴトマが現れ、決闘場(リング)である土俵に上がる。

 村の入り口で見たときはそこそこ体を隠す布地のある服だったが今はほぼ全身をさらけ出すように布は纏っておらず、腰回りに相撲の礼装である『回し』を付けているだけだ。

 その体系は猪族に共通する事だが恰幅が良いのだがその肉体は脂肪を筋肉に代用したかのように無駄の無い頑丈さをありありと見せつけている。

 さらに言えばゴトマは年老いた顔に似合わず途轍もなく筋骨隆々でその肉体は巨大な鎧を彷彿とさせる程の迫力があった。

「にぃ~しぃ~! マカ村~ゾル~ガ~!」

 行司が名前を読み上げると向かいの小屋からゾルガが現れる。

 ゾルガもゴトマに比べて細身だが、その肉体は確かな強大さを見せるような筋肉を見せる物があり、ゴトマに負けない威圧感がある。

「・・・。」

「・・・?」

 ゾルガの表情がおかしい。

 何故か機嫌が良さそうに見える。

 だが()()()()でその理由は察した。

 回しをチラチラ見ているからだ。

 何故かは知らんがどうも気に入っているみたいだ。

 ゾルガとゴトマは土俵に上がるなり土俵の角に息、そこから塩を掴んで土俵に巻きながら中央の線に行く。

「ゾルガ。」

「あ?」

 線の中央に立つと、何故かゴトマがゾルガに話しかける。

「何のつもりで他の村にも殴りこんだか知らんが、俺は他の村程いかんぞ?」

 思いっきりガンを付けて威圧する。

 あれ程の体系の大男にこんなことされれば例え同族であってもすくみ上りそうなものだが・・・。

「ああ、そういうことか!」

 何故かゾルガは楽しそうににかっと笑う。

「心配すんなって! 俺が勝っても悪いようにはしねぇからよ!」

 勝っても悪いようにはしない?

 何言ってんだ?

 けどなんとなく分かる。

 明らかに自分が勝つ前提で物を言っている。

 図ってか図らずか、それが明らかな挑発になっていることも分かる。

「てめぇ・・・!」

 挑発に乗せられてか、ゴトマはより一層睨みを強くする。

「・・・見合って見合って!」

 一通りのやり取りが終わっているのを見越してか、行司が開始準備の合図を掛ける。

 すると二人は腰を落として線に拳を置いて構える。

「はっけよぉいッ!」

 行司は開始の合図を掛ける。

「の

「「ッ!!」」

 行司が声を発した時、既に闘いは始まっていた。

  こった残った残ったぁッ!!」

 行司が掛け声を上げている中、ゾルガとゴトマは全く同じ行動を取っていた。

 頭を押し合う形でぶつけ合い、互いの両手を掌から鷲掴みにするように掴み合いながら押し合う形で硬直していた。

 相撲の競技上のルールでは土俵の外に押し出されるか地面に身体の膝から上の部分が地面に着けば負け。

 つまりは相手を地面に着ける為に崩しを入れたり突飛ばしたりしてもいいはずなのだがこの二人にそのつもりは全くないのだろう。

 明らかな力勝負だ。

 これは俺の想像に過ぎないが多分お互いに分かっているのだろう。

 下手な小細工に頼ったらその時点で押し負けると。

「グウウウウウウゥ!!」

「ウウウウウウウウゥ!!」

「!」

 二人が唸り始めると空気が変わった。

 更に土俵の土が少し歪んだかと思うとヒビが入り始める。

 おいおいどんな馬鹿力で押し合ってんだこいつら・・・!

 ただ押し合っているだけなのに途轍もない迫力があった。

 まるで山のように巨大な怪獣同士、いや、具体的には巨大な猪と狼がぶつかり合って戦っているような感じだ。

 しかしそうは言ってもただただ押し合っていて状況は変わらない。

 このまま硬直が続くと思われたが変化は突如訪れた。

「!」

 仕掛けたのはゴトマだ。

 押し合っていた頭を急に下げて頭をかち上げるように突き出す。

 その頭はゾルガの胸元に当たり、そのまま相手の懐を取るような形になる。

 この状態はマズイ!

 今ゴトマはゾルガより態勢が低いので力が入りやすい。

 そう思った矢先にまたゴトマは勝負を仕掛けてきた。

 掴み合っていたゾルガの手を放し、ゾルガの回しに手を掛けた。

「くッ!」

 ゾルガも負けじとゴトマの回しに手を掛けるがそれでは駄目だ。

 互いに回しを取った状態だがゴトマが先に回しを取ったのでゴトマの腕の方が内側だ。

 腕が外側のゾルガは内側のゴトマの腕がある分手が回しから離れて充分に掴めないので圧倒的に不利だ。

 勝利を確信してゴトマがほくそ笑むと、そのまま大きなハンドルを回すように体を傾けてゾルガを投げに掛かる。

「ッ!!!」

 しかしゾルガはそれをさせまいと両足に力を込めて踏ん張りながら踏みとどまる。

 だがそれだけでは終わらない。

「ッ!?」

 ゴトマは青ざめる。

 無理もない。

 ゾルガはゴトマの回しを持ったまま()()()()()()()()

 いやおかしいだろ!

 相撲でこんなの普通は不可能だ!



「だああああああッ!!」



 ゾルガはそのままゴトマを地面に叩きつけた。

「・・・。」

 マジで勝ちやがった・・・!

「・・・。」

 俺の周りにいた猪男たちも黙りつつも視線でどよめき出した。

「聞けええぇッ!!」

「!」

 ゾルガは土俵のど真ん中に立って高らかに叫ぶ。

「我らが怨敵、ロキウスはク族、ゴ族構わず拉致して洗脳して人形にしているのは知ってるなッ!!」

「・・・!」

 ゾルガの言葉に周りの猪獣人たちの目つきが険しい物に変わる。

「奴らを憎むのは部族に捕らわれず皆同じだ!!」

「・・・。」

 獣人の一部は視線を逸らす。

 未だに納得できない何かがあるのだろう。

「故に俺は奴らの懐に殴りこむッ!! お前たちの村の長を倒したこの俺の力に敬意があるのならばついて来い!! 俺はお前たちを拒まないッ!!」

「・・・。」

 ゾルガの言葉は力強かった。

 その咆哮の如き演説はまさに戦士の雄たけびだった。

「・・・なんだ、てめぇもそういうクチか。」

 ゴトマは何故か呆れ起き上がる。

「あ?」

「俺も同じ目的で既にいくつか村にカチ込んで同盟相手がいる。」

「マジか!」

 ゾルガは口を開けて驚きの一声をあげる。

「てめぇもそのつもりならそいつらも纏めてロキウスに殴り込みだ!」

「そいつぁいいや!」

 ゾルガは笑いながらゴトマの手を引いて立たせる。

「みんな聞いたか! 此処に同盟が結ばれた! 一時だが俺らは仲間だ!!」

「へっ、何が仲間だ!」

 一人の猪獣人が声を上げて立ち上がった。

「偶々同じタイミングで殴り込みに行くだけだ!」

「俺らの方がお前らより沢山ロキウス兵ブッ殺してやっからな!」

 獣人達は次々に立ち上がってゾルガに減らず口を投げつける。

 だがゾルガはそれに腹を立てた様子もなく満面の笑みだ。

「おうよ! 俺らもおめぇらごときに負けねぇからな! けどどっちが勝とうが負けようが全部終わったらそこでまた喧嘩祭りだ!」


「「「上等だあぁッ!!」」」


 他の獣人達も咆哮と共に立ち上がった。

 いつの間にか辺りは歓声のようにも聞こえる怒号に満たされ、静かに見守らなければならなかった決闘の場は猪獣人達の叫びで埋め尽くされた。

「ハァ・・・。」

 俺だけはこの様子を溜め息混じりに呆れて見ていた。

 本当に獣人ってバカげているな。



~メロ 密林~


「意外だったのです・・・!」

「・・・。」

 密林を歩く中、ルタをまじまじと見ているとルタは目をあからさまに逸らしてきたのです。

 まさかルタの弱点を知ることになるなんて思いもしなかったのです。

「まぁ弱点なんて人それぞれだしいいんじゃね?」

「・・・るさい。」

「俺も弱点あるぜ? 蛇とかキライだな!」

「え? グラって蛇がキライなのですか?」

 そうは見えないのです。

「ああ、小さい頃に生きたまま食おうとしたら舌噛まれて毒で死にかけた。まぁ気合で治したんだけどよ!」

「・・・それってホントに弱点なのですか?」

 グラって実は化け物か何かなのでは?

「そう言えばルタってなんで水が苦手なのです?」

「・・・。」

 ルタは黙り込む。

「まぁそりゃ言いたくねぇよな! 自分の弱点とか。」

「いや・・・グラ堂々と言ってたのです。」

「・・・小さい頃。」

「「え?」」

 ルタが話し始めたのです。

「小さい頃、親に虐待されてよく水被せられてたの。」

「え? それって父親なのですか?」

「そ、飲んだくれの。」

「そうなの・・・ですか・・・?」

 あれ、でもそれって確か・・・。

「それってプロテアで話してた事なのですよね?」

「うん。」

「でも師匠が旅の目的が『母親を探す為』って言うのが嘘ですよね?」

「なんでそう思うの?」

「だって師匠のその話、私に正体を隠してた時に話してた事なのです。結局それって正体を明かさない為のでっち上げなのですよね? だったらその飲んだくれの父親って言うのもブムッ!?」

 突然ルタが私の口を塞いできたのです。

「メぇロぉ~?」

 ルタは笑顔のまま私の数センチ前まで顔を近づけると目を見開く。

「勘のいい子は長生きしないよぉ?」

「・・・!」

 目が殺る気(マジ)なのです・・・!

「それとぉ・・・今回の事は他言無用ね?」

「・・・!」

 恐ろしさのあまり頷いたのです。

「なんかよく分からんが仲間うちで揉めるなよ!」

「ごめんごめん! こうやって口止めしとかないとこいつすぐ喋っちゃうから!」

 急に手を放してグラの方に向き直っていつもの調子でルタは話始めるのです。

「所でさ。」

「うん!」

「ウルドの()()ってなんだ?」

「あ・・・!」

 ルタが急に固まったのです。

「ふっふっふ・・・。」

 知らないとは愚かなのです。

「何を隠そう、師匠は世界を脅かしたあの魔王を倒ムゴッ!?」

 私が真実を話そうとするとルタが思いっきり私の口を塞いできたのです。

ちょ(モゴ)ルタ(ムガ)!?」

「ちょっと待ってね~♪」

 そのまま引きずられる様に木陰に連れてかれるのです。

「ひっ!?」

 木に叩きつけられたかと思うと顔の横に思いっきりドンと手を着かれたのです。

(メロぉ? お兄ちゃんが正体隠したいの知ってるよねぇ?)

 ルタは思いっきり私を睨みつけながら小声で話すのです。

(あ・・・!)

 そうだったのです・・・!

 私にも必死に隠してたぐらいだから当然だったと言えば当然なのです。

(ここでのお兄ちゃんはただの冒険者のウルド、オーケー?)

(オーケーなのです・・・。)

(よし。)

 話が纏まるとまたグラの前に立つのです。

「ごめんね! お兄ちゃんにとって恥ずかしい秘密だからどうしても話せないの!」

 ルタは手を合わせて拝むようにグラに謝罪する。

「そう言われると余計気になるな。」

「・・・ぅ!」

 うわ最悪の反応なのです!

「ダメッ! 話したらお兄ちゃんに怒られるからッ!」

 ルタが必死に説得しようとするのですが・・・。

「それならお前らの身体に直接聞くまでだぁ・・・!」

 そう言うとグラは狂気的な笑みで手をわきわきさせだしたのです。

「マズいッ! メロ! 逃げるよ!」

「は、はいなのです!!」

 ルタと私は一気に走り出すのです。

「馬鹿がッ!! 獣人の足から只人(ヒューム)如きが逃げられるかぁッ!」

「ひぃッ!」

 確かに言う通りなのですッ!!

 でも逃げないと・・・ってあれ?

「「「え・・・?」」」

 グラを含め、私たちは一度に目の前の光景に凍り付くのです。



「村が・・・燃えてる・・・!」




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