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嘘つき英雄と嘘の妹 ~旧版~  作者: 野良犬タロ
アステリオン編
39/101

#39 嫌な事実


~レレ ギルド受付~


「・・・。」

 気まずい。

 今、目の前に例の騎士団の団長さんがいる。

 突然知り合ってもいない相手に当然の行動とは言え告白を振った相手って言うのは本当に気まずい。

「突然押しかけてすまないな。ギルド長にも今後の周囲の魔物の討伐の件で打ち合わせをしたかったからだ・・・うむ。」

 バンズさんはコホンと咳ばらいをして顔を逸らす。

 うん、そうだよね。

 別に告白されたからって四六時中私にばかりかまけているほどこの人も暇じゃない。

 大丈夫大丈夫。

 私が心配するような事態には・・・。



「とかなんとか言っちゃって、本当はレレに会いに来たんじゃないの?」



「「!!?」」

 バンズさんの後ろから驚かすようにルッカが現れる。

 後ろに立たれていたバンズさんが驚くのは勿論だけど、つられて私まで心臓が止まるかと思った。

 というか・・・!

「そんな訳ないでしょ!? この人だってそんなに暇じゃ・・・!」

「この御人の言う通りだ。」

「ええ!!?」

「此方に用事があったのは本当だ。だがレレ殿にも会いたかった。隠すつもりは無かったが言わなかったのは事実だ。すまない。」

「ちょ、何言ってるんですか!?」

 本当に何言ってんのこの人!?

「この御人が恋人と仲睦まじくしている姿を見ているとレレ殿の事を思い出し、居ても立ってもいられなかったのだ。」

「いやルッカ、あんたのせいじゃない!!」

「ごっめ~ん☆」

 ルッカは舌をぺろりと出しながら手を合わせてほとんど反省していない平謝りをする。

「しかし仕方ないのだ。私はこれまで騎士としての修行、民を守るための職務に専念するあまりに恋をしたことが無かった。そこへレレ殿のような可憐な方が目の前に現れてしまい、ついあのような事を口走ってしまったのだ。だが後悔はしていない。」

「・・・・・・!!!!」

 この人は・・・!

 この人はどうやったらそんな言葉を恥ずかしげもなく言えるの!?

 っていうかルッカの茶化しに此処まで開き直る人初めて見るんだけど!

 当のルッカはたじろぐ所か「ひゃあ~」って感じで顔を赤くして熱のある目で私達を見ていた。

 いや『これはこれで』みたいに楽しんでんじゃないわよ!!

「この間は見事に玉砕したが、別にそれで諦めた訳ではない。今はレレ殿に好かれていないかもしれないがいずれレレ殿に好かれるよう私も努力していくつもりだ。」

「いやホント困ります・・・そんな努力されても・・・!」

 正直時々家に来る訪問販売の商人の数倍困る・・・!

「今日はレレ殿の顔を見れて良かった。用事の件も兼ねてまだ此処に居たいがいつまでも現場を開ける訳にもいかないのでな。これにて失礼する。」

 そう言うとバンズさんは足早に去っていった。

「・・・。」

 しばらく硬直すると、今までの疲れを吐き出すように机に向かって頭を寝かせる。

「どうするよ? 諦めてないってよ?」

「マジで勘弁して・・・!」

 嵐が去ったあとで疲れてるからルッカ(あんた)の相手してる余裕ない・・・って言っても聞かないんだろうな・・・。

「どうした? 騒がしいが何かあったのか?」

「あ。」

 カウンターの私側の奥の部屋からドアを開けて誰か出てくる。

「お父さん。」

 そう、ギルドの制服を着たその人は私の父でこのギルドの責任者であるカウルだ。

「どうした? いつも何かあってやつれてるが今回は特にひどいな。」

「カウルさん! 珍しいね、こっちに出てくるなんて!」

 確かに父さんは私以上にギルドの運用や外務の関係もあって事務作業が多く、普段は受付を私に任せて奥の部屋に引きこもるように仕事をしている。

「ルッカ・・・はぁ・・・。」

 父さんはルッカを見るなりため息をつく。

「さてはまたお前か?」

 父さんもルッカが私にしている冷やかしに関してはよく知っている。

 と言うか家で散々私がルッカに関する愚痴を聞かせてるからだ。

「いやいや今回は違う違う!! 実はかくかくしかじかでね・・・。」

「何を言っとるんだお前は・・・。」

「ハーイ、ふざけてないで説明シマース!」

 ルッカは父さんにさっきの事を話す。

「そうか・・・レレ・・・。」

「?」

 父さんはため息交じりに私の右肩に手を乗せる。

 え、何?

 『任せろ、父さんが話をつけてやる』とか言ってくる感じ?

 いや変な出歯亀されると余計にややこしく・・・。

 それとも相手が騎士だから『いい話だから受けろ』とか言ってくる!?

 それはホントに勘弁して・・・!



「お前も父さんの子だな・・・。」



「へ?」

「父さんも昔そうだった・・・度々恋愛関係で訳の分からない変なトラブルに巻き込まれて毎日毎日気苦労が絶えなくて

「やめてぇ!! そんな変な同情いらないからッ!!」

 嫌すぎる!!

 しかも聞きように寄っちゃ私の男運が悪いみたいじゃないッ!!

「あ・・・あとお父さん一ついい?」

「え? 何ブォッ!!?」

 私は立ち上がり様に右フックで父さんの左頬を殴り抜く。



「来るのが遅いッ!! 色んな意味でッ!!」



「えぇ・・・。」

 父さんは殴られた頬を押さえ、理不尽だとばかりに弱弱しい視線で私に訴えかけた。



~ウルド クガル村~


「ぐぶぁッ!!?」

 突如鳩尾を殴り抜かれ、天高く持ち上げられ、猪男の一人は苦悶の声を上げる。

「てめッ!! 上昇(ライズ)使えるんじゃねぇかッ!!」

「お前らが忠告聞かねぇからだなぁ! 他人(ひと)の忠告は聞くもんだぞオラァッ!!」

 恐れおののく猪男の一人の脳天を思いっきり殴る。

「・・・へっ。」

「?」

 殴られた猪男は踏ん張りながら不敵な笑みを浮かべる。

「ぐぉらぁッ!!」

 猪男が殴り返してくるが感覚上昇(センスライズ)で見切って躱す。

「顔なんざ殴っても無駄だぁッ! 猪族の頭の外皮は他の獣人よりもグビァッ!!?」

 自分の体の特徴を誇示しようとした猪男相手に俺は空気も読まず容赦のない目つぶしを食らわせる。

「ぐあああぁッ!! 目が!! 目があああぁ!!」

 目を押さえて猪男は苦しみ悶える。

「なんだ、『頭全体が無敵』とかじゃねぇのか。」

「てめッ!! 人がしゃべってる時になんて非常識な・・・! しかも目つぶしとか汚ねぇぞッ!!」

 最後に残った一人が慌てて俺を非難する。

「戦いの最中にスキを見せるお前らが悪い。ってかそれ言ったらお前らも同罪だろ。」

 さっき俺の話聞かずに殴りかかってきたしな。

 それも含めて全部こいつらの自業自得だ。

 慈悲なんかくれてやる必要もないな。

「ふざけやがって・・・!」

 最後の猪男はまたさっきのように腰を低くして構える。

「なぁ、お前らのその構えみて思ったけどそれ・・・東国『スサノヲ』の体術の『相撲(すもう)』じゃね?」

「あぁ!? ふざけんな!! 只人(ヒューム)の国の体術なんざ知るかッ!! これは俺たちの村の祖先から代々伝わる村の体術だああぁッ!!」

 そう言うと猪男は先ほどの体当たりで此方に襲い掛かってくる。

「ッ!!」

 感覚上昇(センスライズ)で軌道を見切り、頭がぶつかる部分に構え、運動上昇(モーターライズ)で腹筋を強化して全身に力を込めて奴の頭を受け止める。

 十数メートル後ろまで勢いよく押されたが、木にぶつかる直前で止まる。

「てめぇッ・・・俺の『ぶちかまし』を・・・!」

「・・・やっぱ相撲じゃん。じゃあこれも分かるな?」

 俺は奴の後ろ首を掴んで地面に叩きつける。

 普通は地面に叩きつけられる程度の物だが上昇(ライズ)を腕に使っている。

 つまり・・・。

「ぶぐぉぁッ!!!!」

 地面に叩きつけられた猪男はそのまま地面に自分の体の倍ほどのクレーターを地面に作って地面にめり込む。

「『突き落とし』・・・なんでてめぇが使える・・・!」

「昔の仲間に稽古つけられた時に何度もやられたよ。そいつもスサノヲ生まれだったのさ。」

「なんでだ・・・俺たちの体術が・・・どうして・・・!」

「お前らの祖先ってさ・・・多分スサノヲに行って習うか見て盗むかして覚えたんだよ。多分村の体術って事にしたのは他の只人(ヒューム)嫌いの連中にスサノヲの体術使ってたのバレたくなかったんだろうよ。」

「そんな・・・馬鹿な・・・う、嘘だぁ・・・!」

 猪男は眼を見開いたまま硬直する。

 半分放心状態か?

 まぁそりゃショックだろうなぁ。

 何百年前か知らんが先祖が墓まで持っていった秘密がこんな変なタイミングで、しかもあろうことか大嫌いな相手に明かされたんだもんな。

 まぁそれはそうと・・・。

「で? お前ら言うことあるんじゃないか?」

「え? ぎにゃあああああッ!!!」

 猪男は猪らしからぬ悲鳴を上げる。

 俺が首を掴んだ手に力を込め、地面に向かって更に圧を掛けたからだ。

「ぐぉぉ・・・!」

 相手は首を絞められ、喉の空気の通り道を塞がれてほとんど息が出来ない状態だろう。

「地面に這いつくばって? 何するんだっけ?」

「ギ・・・ギブ・・・息が・・・!」

「謝るんじゃなかったっけ? 言うこと聞かないと死んじゃうよほらほら。」

 追い打ちをかけるように更に力を込めて猪男を地面にめり込ませる。

「ぐああぁ・・・ずみ゛ま゛ぜ・・・!」

「ん?」

 話せるぐらいに少しだけ力を緩める。

「ずみ゛ま゛ぜん゛でじだ・・・!」

「なら指輪返せ。」

「はい゛・・・!」 

 猪男は手に持っていた指輪を差し出す。

 俺は受け取ると猪男から離れて指輪を嵌める。

「?」

 途端に後ろから大きな拍手が一つ聞こえる。

「ブラボー!! 流石グラがつがいに選ぶだけはある!!」

「つがいじゃねぇッ!! つかあんたあいつの父親だろうがッ!! いいのかそんな・・・!」

「は? 強いなら問題ねぇだろ。」

「・・・。」

 俺は思わず目を手で覆い、項垂れる。

 娘も脳筋なら親も脳筋・・・いや、この国全体が脳筋だったから今更か。

 もうやだこの国・・・!

「やっぱりお前連れてきて正解だったな!!」

 ゾルガは先ほどの曇った表情が何処へやら、大笑いしながら愉快そうに俺を称賛する。

「なんだよ、わざわざ俺を連れてきたのは俺の実力を見るためか?」

「まぁ、それもあるんだけどな。理由はもう一つあるんだよ。」

「もう一つ?」

「俺はこれからこの村の長と一対一(タイマン)で殴り合う。けどそれやると村中から野次馬が集まっちまう。そうなったらつまんねぇ奴が横槍入れてくるかもしれねぇだろ?」

「あ~・・・大体把握した、つまり観客が参戦しないように俺には余計なことする奴らの人払いをお願いする訳ね。」

「そう言うことだ! 俺も戦えるし、お前もうまく行けば戦える!! お互いに良いだろ!!」

「いや、それ戦い大好きな奴ら同士の利害だからな? 俺別にあんたら程戦い好きじゃねぇから・・・。」

 そう、俺はあくまで『冒険者』。

 戦いは確かに生業の一つだが一ブロンズの金にもならない戦いなんて御免被る。

「またまたお前は、さっきあんなに生き生き戦ってたじゃねぇか!!」

「聞けよ俺の話・・・!」

 ゾルガは相変わらず俺の話を聞かずに背中をバシバシと叩く。



「うちの若いのが随分世話になったな。」



「!」

 奥から声が聞こえたかと思うと、先ほどの猪男達とは違い、色白のひと際体格の大きい猪男が出てくる。

 もしかしてあいつが村の長か?

「よぉゴトマ! 喧嘩しに来たぜ?」

「フン、近くの村がお前に殴りこまれてそろそろ来る頃だと思ってたよ。」

 そう言うとゴトマは踵を返して此方を見る。

「ついて来い。村の入り口じゃお前もつまらんだろう?」

 顎でくいっと誘うように言ってくる。

「おう!」

 ゾルガは右拳を目の前でバシッと左手の平に叩きつけながらついて行く。

「・・・はぁ。」

 俺は呆れ気味にため息をつきながらゾルガについて行く。

 ロキウスを潰しに行くのに何をやってんだ俺は・・・。

 今更ながら思った。

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