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嘘つき英雄と嘘の妹 ~旧版~  作者: 野良犬タロ
アステリオン編
32/101

#32 兵士と獣人


〜レレ カザ ギルド窓口〜


「・・・。」

「ひそひそ・・・。」

「・・・。」

「ボソボソ・・・。」

「・・・。」

「みそみそ・・・。」

「・・・。」

「くそみそ・・・。」

「なんなの『みそみそ』『くそみそ』ってえぇぇ!!」

 書いていたギルドの依頼用の書類を宙に撒き散らせながら大声を上げて立ち上がる。

「言いたいことあるなら言いなさいよあんたらぁッ!!」

 先程からカウンター近くでこっちをチラチラ見ながらコソコソ話していた冒険者達は一目散に逃げていく。

「やあやあ健気に愛しのウルド君を待ってるのにも関わらず突如求婚されたレレさん!」

「前置き長すぎ! ってか早速出やがったわね!」

 期待を裏切らずルッカが冷やかしに来た。

「いやぁ、罪な女だねぇ。まさか出会って早々一目惚れさせちゃうなんて。」

「知らないわよ! 向こうが勝手に告白して来たんじゃない!」

「うーわ自慢か! 自慢かこの野郎!! 私だって言ってみたいわそんな台詞!!」

「なんであんたがキレんのよッ!!」

「まぁ私は愛しのダーリンがいるから? 告白されても断るけどん?」

「聞けぇ!!」

「それにしてもアレは無いんじゃない?」

「・・・。」



ーーー一時間前。


「あ・・・ぅ・・・えと・・・。」

 目の前の騎士の男は目を見開きながら真っ直ぐに私を見ている。

 顔が見るからに本気だ。

「おやおやぁ・・・。」

 丁度その場にいたルッカは面白そうにニヤニヤしながら私を見ていた。

 腹立つあいつ・・・!

 他人事だと思って・・・!

「すぅ〜・・・はぁ〜・・・。」

 とりあえず落ち着いて深呼吸・・・深呼吸・・・。

「突然こんな事を言ってすまない、だが一目惚れしてしま

「ごめんなさい。」

「グハァッ!」

 流れに飲まれない内に即答で返事を返すと、騎士は腹に槍でも受けたかのような断末魔を上げ、白目を向いて可哀想に見える程の泣き顔で固まる。

「・・・。」

「・・・。」

「・・・。」

 十秒以上の嫌ぁ〜な沈黙が続く。

「コホン、失礼。」

 沈黙を破ったのは傍らにいた側近らしき女性だ。

「突然無礼な事を言って申し訳ありません。このバカ団長は私が責任を持って連れ帰ります。ギルドの責任者に挨拶に伺う予定でしたがまたの機会に致します。」

「あ、ハイ・・・分かりました。」

 私が余所余所しく返事を返すと女性は騎士の男の首根っこを掴んで引き摺るように連れて行き、ギルドを出ていった。



ーーーそして現在に至る。


「ないわぁ! あれは酷いわぁ!」

 ルッカは右手で顔を覆い、左手をひらひらさせながら私を非難する。

「しょうがないでしょ! 中途半端に断ったら勢いでずるずる行きそうだったんだもん!」

「ずるずる行っちゃいなよ!」

「嫌! ってか私そんな軽い女じゃないからッ!」

「おーぅ、これはあれか? 惚気(のろけ)か!? ウルドへの純愛の証かぁ!?」

「あんたは結局そう言う方面でイジって来んのねッ! ってか五月蝿ぁい!!」

 結局このあと小一時間ほどイジられた。



〜ウルド アステリオン 密林〜


「くっ!」

 襲い掛かる獣人の斧を剣で受け止める。

「グアアッ!!」

 続け様に獣人は狂ったように斧を振り下ろしてくる。

 端から見れば押されているように見えるがそうじゃない。

「ッ!」

 獣人は何かを察知して後ろに跳ぶ。

 すると奴の元いた場所が爆ぜる。

 事前にルタが唱えていた設置型の起爆魔法、『起爆(デトネーション)地雷(マイン)』だ。

「炎を恐れなさい? 獣にはそれがお似合いよ!」

 木の陰から出てきたルタは嗜虐的な笑みを浮かべて女王様の様に獣人を嘲笑う。

「また何キャラだよお前のそれはッ!」

 懲りずに出てくるルタの新しいキャラにツッコミを入れつつ拳弓銃(ハンドボウガン)から矢を放つ。

 身体をずらして躱されるが構わず撃つ。

 何発か躱すと獣人は痺れを切らしてまた仕掛けてくる。

 『距離を空ければジリ貧』と()()()()事が出来ている。

 また獣人のラッシュ攻撃を躱し、剣で受け、捌きを繰り返しながら下がる。

「グゥ!?」

 獣人は今度は右斜め前に跳ぶ。

 すると魔法が今度は獣人の居た僅か後ろ辺りから起爆する。

「グワガアァッ!!」

 魔法の犯人であるルタを認識してから獣人は標的を変更して襲い掛かる。

「キャアアア! 助けてお兄ちゃぁん!」

 わざとらしい悲鳴上げやがって、ってそうじゃないな。

「メロ!」

(グラス) (エペ) (イクイップ) 放出(ホレッシ)

 俺が呼び掛けると少し離れた大きな木の上の枝の上に乗っていたメロは魔法を詠唱する。

「グゥッ!?」

 メロが張っていた四角の陣形が青白く光り始めると獣人は危険を察知して離れようとするが・・・。

「ハイ残念☆」

 ルタが後ろの木に杖でバツ印を描いて二回ノックすると獣人が逃げた方角の先で爆発が起こる。

 獣人は強引に突破しようとしたが爆風に押されて元の位置に戻される。

「今だ!」

「『氷結柱(フリーズピラー)』!」

 メロが魔法を唱えると陣は急激に冷却され、獣人を氷の柱に閉じ込めた。

「・・・。」

 此処で俺は敢えて待つ。

 すると氷から徐々に亀裂が入る。

「ガアアアアアアァッ!!」

 獣人は氷を破って出てくるが・・・。

「寝てろッ!!」

 奴が氷を破って咆哮を上げた隙に矢を放つ。

「ガッ!!」

 矢は奴の脇腹に命中する。

「グゥ・・・。」

 獣人は少しよろけたが大した負傷(ダメージ)は無いようだ。

「ガァアァ!」

 破れかぶれに襲いかかってくるが・・・。

「ガァ・・・ウァ・・・!」

 突然倒れる。

「・・・。」

 倒れた獣人を仰向けに転がすと奴は目を閉じて寝息を立てている。

 さっきの矢には『フカネ草』の根から取れる睡眠毒を塗っていた。

 象だろうが半日は寝る程強力な為あまり人体には良くないがそうも言ってられんだろう。

 何はともあれこの獣人は無力化出来た。

「うし、先進むぞ!」

「ラジャ!」

「ハイです!」

 ルタとメロは元気良く返事を返す。

 だがしばらく歩くと・・・。

「この辺だな。」

「オッケー!」

 ルタは地面に丸印を描いて杖を置く。

(フラム) (カーン) 手動(マニュエル) 設置(アンスタレーション)

 そのまま魔法を詠唱する。

起爆(デトネーション)地雷(マイン)

 丸印が光って消える。

 同じような手順で色々な場所に罠を仕掛ける。

「うんしょ!んしょ!」

 メロも剣でザクザクと地面を掘る。

 陣形魔法の陣を張っているのだ。

 俺達はこうして罠を張りながら進み、敵と遭遇すれば罠のある場所まで逃げて戦うようにしている。

 此処は何処もかしこも戦場だ。

 進むにしても石橋を叩き過ぎる事はない。

 出来る限り安全を確保して進むべきだ。

 ・・・って言いたい所だが。

「ぶはぁ・・・きっつぅ・・・。」

 ルタが罠を三つ描いた辺りから座り込んで音を上げる。

 無理もない。

 メロは一戦闘につき一回分の罠だがルタは罠を複数作っている。

 それが何度も続くなら魔法による精神疲労も尋常じゃない。

 仕方無い。

「よし! 今日はこの辺で野営の準備だ!」

「キャンプ!?」

 ルタが顔を上げてはしゃぐが馬鹿かこいつは。

「遊びじゃねぇんだぞ? いくら頭悪そうな狂戦士(バーサーカー)だらけの森でも寝首を掻きに来ないとは限らないんだからな。」

「分かってるって! あ、所で『寝首を掻く』ってどうして『掻く』なのかな?」

「知るか! 大方サバイバルの知識もない馬鹿な奴が山で野宿でもして獣に襲われて喉引っ掻かれた所から来たんだろ?」

「例えが物騒だねぇ・・・。」

「あり得ない話じゃないだろ? お前はなんだと思ったんだよ。」

「ある日セクシーで無防備な冒険者が山で野宿してて・・・。」

「は?」

「寝ながら首が痒くて身を捩っていたら偶々その近くを通っていた別の男の冒険者がその姿に欲情。」

 何言ってんだこいつ。

「本能を理性で抑えつつ『痒い所は此処ですか?』と言って首を優しく掻いてあげると女は『あぁ・・・!』と甘い声を上げ始めて男の理性は崩壊、そこからギシギシアンアンな

「んな訳ねぇだろッ!! つか最初の下りから既におかしいわッ!」

「どうでもいいのですッ!」

 ボケ倒すルタにツッコんでいるとメロが割って入る。

「野営するにしても焚き火とかテントの材料とか集めないとです! お喋りする時間なんてないのです!」

「「うぃ〜っす。」」

 メロの言うことはご最もなので俺達は素直に返事を返して行動を開始す・・・しようとした時だった。

「! なんだ!?」

 ちょっと離れた所からガガガと派手な発砲音が聞こえた。

 恐らく銃だ。

「行くぞ。」

「え、ちょ、師匠!?」

 即座に音のする方へ走る。

 ルタはすぐに察してついて来たがメロは少し動揺して遅れながらもついて来る。

 尚も銃声は聞こえる為その音を頼りに走る。

「?」

 途中から銃声が聞こえなくなる。

「た、助けてぇ! 誰か助けてくれぇ!!」

「!」

 前方に軍服の兵士がいた。

 しかしその兵士は女の獣人に伸し掛かるように組み伏せられていた。

「死ねぇッ!! クソ只人(ヒューム)がぁッ!!」

 獣人は手に持っていた槍を今にも振り上げていた。

 手段を考えてる暇はない!

「お邪魔しまぁすッ!!」

 走る勢いを利用して前方に跳躍し矢の様に水平に身体を伸ばして飛び蹴りをかます。

「グアゥッ!?」

 蹴りは獣人の眉間に直撃(クリーンヒット)して獣人を数メートル先の木まで吹き飛ばす。

「救いのヒーロー参上!」

 何故かルタが俺の前に立って決めポーズをする。

「なんでお前が威張るんだよ。」

「あ、あんた達は・・・?」

「話は後だ、来るぞ!」

 俺が言った通り、獣人は起き上がってすぐに襲い掛かってきた。

「うおっ、とっ!」

 槍で横薙ぎ、突き、振り下ろし、どれも鋭い一撃だ。

 なんとか距離を取り、横移動、剣で往なしなどして攻撃を躱す。

「ガアァッ!」

 今度は三連続で突きを放つ。

 動きが早くて見切りづらく、剣を盾にしながら出来る限り躱す。

 三撃目の突きが剣に当たるが流石獣人の膂力と言うべきか、物凄い一撃の振動が伝わってくる。

 圧倒的な手数と怪力、こりゃ攻撃に転ずるのは厳しいな・・・()()

(フラム) (カーン) 放出(ホレッシ)

「!」

 魔法の詠唱に気づくと獣人は後方へ飛び退く。

「甘いのです。」

「!」

 獣人の逃げた先の後方にメロが現れる。

 上昇(ライズ)を使って先回りしていた。

 メロはクワガタムシの(ハサミ)の様に剣を左右から振り込む。

 しかし獣人は後ろを振り返りもせず飛び上がり、バック宙でメロの頭上を通過する。

 しかし地面に着地する瞬間・・・。

炎球(フレイムボール)!」

 ルタが右側に回り込んで放った球体の炎が獣人に向かっていく。

 地面に着地する直前のかなり巧いタイミングだ!

 回避はまず不可能。

 だが獣人はあろうことか



 それを左の裏拳で弾き飛ばした。



「えぇ・・・。」

 弾き飛ばされた炎があらぬ方向の木にぶつかって爆ぜる光景を目にしてルタが顔を真っ青にして苦笑いを浮かべる。

「・・・・・・よし。」

 俺は剣を下ろして左手を軽く上げる。

「!」

 メロはピクリと動いて意図を察する。

「逃げぇぇるッ!!!」

 俺達は踵を返して一目散に逃げる。

「え、え、えぇぇぇ!!?」

 襟を掴んで荷物の様に運ばれながら兵士は驚愕する。

「あんた達助けてくれるんじゃないのか!?」

「助けてんだろ! 連れて逃げてさ! いいから黙って運ばれろッ!!」

「はぁ!?」

 軽く言い争いながらも木々の間の道なき道を走り抜ける。



―――しばらく走ると兵士を降ろす。


「ふぃ~・・・此処まで来ればもう安心だな。」

 一息着くと兵士も安心したのか表情が緩む。

「ありがとう、助かっ



「死ねェェァッ!!」



「ほい。」

 木の上から奇襲を仕掛けてきた獣人の槍の突き下ろしを剣で弾いて軌道をずらす。

「ヒィ!」

 兵士は慌てて四つん這いで這いながらも獣人から距離を取る。

「お、おま、ふざけるなッ! 何処が安心なんだよッ!!」

 俺の後ろに回りながら偉そうに避難してくる兵士。

「大丈夫だ、問題ない。」

 そう、追って来るのは計算済み、って言うか追って来ない訳がない。

 そして獣人が俺達より遥かに足が速いのも折り込み済みだ。

 だからこそ俺達は()()に逃げて来たのだ。

「殺す・・・殺すッ!!!」

 獣人が勢い良く飛び掛かってくる。

 しかし・・・。

「グアァッ!?」

 獣人の真下にバツ印が浮かんだかと思うと爆発する。

 爆発に巻き込まれた獣人は真上に派手に跳ね上がって落ちる。

 頭を打ったがすぐに追撃を回避するように横回転で起き上がって体勢を立て直すが、その位置はまずかった。

(グラス) (エペ) (イクイップ) 放出(ホレッシ)

「!」

 魔法の詠唱と共に獣人の足元が青白く光り出す。

 運悪くメロの陣形魔法の中心にいたのだ。

「くっ・・・!」

 しかし獣人は甘くない。

 すぐに俊敏な動きで飛び退いて陣形の外に出る。

「なっ!?」

 これまた運悪く罠のある場所へ行く。

 足元に今度は丸印が浮かび、爆発する。

 しかしさっき掛かってから警戒はしていたようで何とか地面を蹴って爆発を回避する。

「うわっ!?」

 今度は跳んだ先に三角印が浮かんで爆発する。

 しかし少しタイミングが早かったようで獣人は地面を踏んで踏ん張ってなんとかブレーキを掛けて事なきを得る。

 しかし獣人は知らない。

 この時既に重大なミスをしていたことを。

「!?」

 獣人は辺りを見渡す。

「探してるのは()か?」

「ッ!?」

 獣人の真後ろから現れた俺は拳弓銃(ハンドボウガン)を零距離の背中に構えていた。

「このッ!」

 回避不可能と本能で察したのだろう、獣人は即座に槍の矛先の向きを変えて後ろの俺に突き出す。

 鋭い突きは俺の顔面に向かうが俺は右手の剣で矛先の軌道をずらす。

 間一髪、槍は俺の頬を掠めて通過する。

「残念でした。」

 攻撃直後のがら空きの背中に矢を放つ。

「がぁッ! くっ・・・!」

 矢を受けてよろめきながら獣人は離れるが・・・。

「ぐっ・・・くっ・・・!」

 すぐに矢尻の睡眠毒が効いてきた様で、瞼を半分閉じ掛けながら膝を着く。

「ちくしょう・・・ちく・・・しょぉ・・・!」

 獣人はそのまま前のめりに倒れた。

「・・・。」

 倒した。

 倒したのには変わり無いが・・・。

『ルタ。』

 腕輪を通してルタに念話で話し掛ける。

『うん、お兄ちゃんも気づいた?』

『ああ、なんかきな臭い。』

 そう、メロは知らんが俺とルタは()()()()()を感じていた。

「いやぁ、助かった!」

 先程の兵士が駆け寄ってくる。

「仲間もやられて死ぬところだったんだ!」

「あんた、ロキウスの兵士か。」

「あぁ、よく分かるな。」

「銃使って戦うのはロキウスぐらいだ。」

「よく知ってるな!」

 兵士は少し嬉しそうに銃を見せてくる。

「俺達の国は技術力がある反面素の戦闘力は他国に比べて弱いからな! (こいつ)には世話になってるよ!」

「・・・。」

 そう、銃の製造技術はロキウスが最初に生み出し、ロキウスの独占的な武器である。

 弓よりも射程が長く、物に依っては連射出来る優れた武器だ。

 まぁそんな優秀な武器を持てば当然か、魔法や白兵戦に頼る者はおらず、ロキウスには魔法や上昇(ライズ)を使う奴はほぼ居ない。

「そんなんでよくアステリオン(こんな国)に殴り込めるな。」

「何、我々だって何の準備もしない訳じゃない。」

「何か策でもあるのか?」

「あー、うん。だが機密事項だ。命の恩人に無粋だが許して欲しい。」

 兵士は気まずそうに視線を逸らす。

「へぇ・・・まぁ、別にいいけど。」

「とにかく、助けてくれたことには感謝する。俺は他の仲間と合流するから失礼する。」

 兵士は敬礼してその場から去る。

「おい。」

 ・・・のを俺は許さなかった。

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