#30 恐怖
〜メロ 馬車〜
ギャバラは誰もがお察しの通り置いてきたのです。
今私達は馬車に乗っているのです。
師匠達は目的地があるらしくアステリオンを越えようとしていた。
国境まで道のりが長いので足になりそうな物を探していたら丁度近くの村まで仕入れた家畜用の餌を運ぶ農夫の馬車を捕まえる事ができたのです。
「あーあ、正直行きたくねぇなぁ・・・。」
師匠が愚痴を吐きながら項垂れる。
無理もないのです。
アステリオンは今戦争中で至る場所が紛争地帯だと聞くのです。
「お兄ちゃん? 物事は積極的に考えなきゃ駄目だよ?」
「ほぉ? じゃあどう積極的に考えるって言うんだ? 戦争中で彼方此方紛争地域、しかも戦争してる相手が『関わり合いたくない国ナンバーワン』のロキウス、この状況でどうやって?」
「アステリオンは『獣人の国』! この意味分かるかな?」
「野生に近くほぼ無法の輩ばっかりの恐ろしい国。」
「ブーッ! 不正解!」
「正解は?」
「原住民の尻尾や毛皮をもふもふし放題!」
「却下。」
「なぁにぃッ!? 毛皮のもふもふの良さが分からないのかお兄ちゃんッ!」
「『紛争地域で毛皮をもふもふする余裕が何処にある』んだって話だ。」
「あ、もしかして猫の様に可愛い妹がいるから間に合ってるって事かなあ?」
「俺の話聞いてる?」
「それならそうと言ってくれたらいいのにごろにゃぁん!」
「ええいくっつくな暑苦しいッ!」
師匠の言葉を無視してくっつきながらベタベタするルタ。
「・・・。」
いつもはこんな二人に何かしら絡みに行くけどそんな気分にはなれないのです・・・。
―――昨日の夕方。
「・・・。」
痺れ毒の治療を受けて動けるようになった頃、師匠の部屋に着くと黙ってドアを開ける。
「残念♪ 丁度今お兄ちゃんは熟睡中だよ♪」
師匠の寝ているベッドの前に座り、私の方を向かないままルタはいつもの様な軽口を叩く。
「・・・寧ろ師匠が寝てて助かったのです。」
そう、最初から師匠に会いに来たわけじゃない。
私の目的はルタだった。
「へぇ、お兄ちゃんに言えないこと? あんたが私に用事なんて珍しいね。」
「『猫』。」
「・・・。」
「って何なのです?」
あの場に居合わせた者なら気にならない訳がない。
「私が猫みたいに可愛いって事だよ♪」
「とぼけないで下さいです。なんで銀蠍の事について詳しいのですか?」
言いたい事はまだある。
その銀蠍の前で見せたあの表情は今も頭から離れないのです。
「貴方は一体何者なのですか?」
「ふふ、メロ?」
「?」
ルタは何故か優しげな笑みで振り返る。
その顔に一瞬油断した瞬間・・・。
「ッ!?」
瞬時に立ち上がって首を捕まれ、壁に押し込まれる。
「『世の中には知らない方が幸せな事もある』って・・・知ってる?」
ルタは顔を物凄く近づけて私の目をゼロ距離まで合わせる。
その表情は先程の優しげな笑みなど忘れてしまうような表情だった。
眼球が剥き出しな程見開かれた目、極限まで釣り上がった口元。
笑みは狂気を帯びた物に変わっていた。
全身が凍り付くように血の気が引く。
『死』が真横にあるような感覚。
今まで味わったことの無い『恐怖』が私の目から全身を駆け巡っていた。
ルタが手を放すと私は床に崩れ落ちて座り込む。
「ハッ・・・ハッ・・・!」
息が落ち着かない。
私を見下ろしていたルタは・・・。
「さあてと!」
手をパンと叩く。
「次の目的地に行くまでの食料とか色々買わないとね!」
いつもの子供っぽい表情のルタに戻って部屋を出ようとするが・・・。
「あ、そうそうメロ。」
「・・・?」
息が落ち着かず返事が出来ないので視線だけルタに向ける。
「お兄ちゃんについて行くなら何処かで辞めたほうがいいよ?」
「どういう・・・事ですか・・・!」
「じゃないとあんた死ぬから。」
「え・・・?」
「じゃ♪」
ルタは笑顔で手をひらひらさせながら部屋を出る。
「あいつ・・・ホントになんなのですか・・・?」
―――「どうした? メロ。」
「ッ!?」
ふと我に返ると師匠が私の顔を覗き込んでいた。
「な、何でも無いのです。」
師匠から視線を逸らす。
「お兄ちゃん? メロも難しいお年頃なんだからそっとしてあげて!」
「なんだその娘と旦那に言いそうな台詞は!」
「やぁだお兄ちゃんってば『夫婦』だなんて気が早ーい!」
「言ってねぇしなる予定もねぇ!」
ルタが冗談を言いながらわざとらしく頬に手を当てて身体をくねらせると師匠がそれに喰ってかかる。
「・・・。」
今のルタの絡みに意図がある気がするのです。
まるで師匠に詮索させないように妨害したような・・・。
「うわっ!」 「ぬわっ!」 「ふぎゃぁ!」
急に馬車が止まる。
その拍子に私達はバランスを崩して転び、こんがらがって何故か私の視界が真っ暗になる。
「んぶ・・・なんなので・・・いぃ!?」
仰向けのまま何かが私の顔を含めた全体を覆っていたので身を捩って視界を確保すると自分の状況に気づく。
私の視界を塞いでいたのは(ズボン越しの)師匠の股間!
しかも伸し掛かかるように覆いかぶさっていた師匠は私の股に顔を埋めていたのですッ!
「嫌あああぁッ!!」
思わず腕を上げて師匠の股間に肘を打ち下ろす。
「ぎぐぼぁッ!?」
師匠が人間とは思えない呻き声を上げているうちに離れる。
「うーん・・・ってお兄ちゃん!? 何があったの!?」
丁度今状況に気付いたルタが状況に気づいて師匠に駆け寄る。
「訳が分からん・・・何か柔らかいものに乗っかってるかと思ったら下腹部に激痛が・・・!」
師匠は何が起こったのか分からないまま股間を押さえて悶絶している。
「お兄ちゃん頭打った!? 何にも乗っかってないよ!?」
「ル、ルタ! 師匠を頼みます!」
「え、メロ?」
詮索されると嫌なので逃げるように馬車の先頭に向かう。
「なんなんだよお前ら!」
「?」
農夫が声を上げている所へ顔を出すとそこには何やらおかしな連中がいたのです。
腕や足が獣の様に毛皮が生えており、獣の様な尻尾や耳はあるけど、二足歩行で顔は人間・・・噂をすれば獣人なのです!
しかも武器を持ってて如何にも賊の連中なのです!
でもおかしいのです。
棒立ちで下を向いたまま襲って来ないのです。
「こいつら・・・どうしたのですか?」
「分からん。武器を構えたまま馬車の前まで来たがそのまま固まっちまったんだ。」
「???」
訳が分からないのです。
「まぁ触らぬ神になんとやらだ。道を外れるけどちょっと迂回すれば通れる。」
農夫はそう言うと馬の手綱を片方だけ引き、馬を右側に誘導しながら馬車を進ませる。
馬車は舗装された道を外れて草を進みながら獣人達の横を通り過ぎて行くが・・・。
「ウウウゥゥゥ・・・!」
「!?」
唸り声!?
なんかヤバイのです!
「馬車! 急いで走らせるのです!」
「え? えぇ!?」
農夫が状況を飲み込めずに戸惑ったのが悪かった。
「グアアァッ!!」
獣人の一体が手斧を振り上げて飛びかかって来た。
「くっ!」
咄嗟に剣を抜いて手斧を止める。
「農夫さんッ! 馬車に隠れるのですッ!」
「ひえぇッ!!」
私の指示を聞いてか自分の意思でか、農夫は悲鳴を上げながら馬車の荷台に逃げ込む。
「グウゥ!」
獣人はその血のように赤い瞳で睨みつけながら武器を持つ手に力を加えてくる。
「ぐくっ・・・!」
獣人の力・・・恐ろしいのです!
手斧とは言え大きさは私の剣とそんなに変わらないのに、岩を押し付けられているように重いのです!
「このッ!!」
鍔迫り合いでガラ空きになった奴の腹部に蹴りを入れると奴は離れる。
その隙に私は敢えて獣人達の集団の中へ飛び込んでいく。
「こっちです獣人!」
走って獣人達の間を通り抜けながら挑発すると獣人達は獣のように咆哮して私を追い掛ける。
とりあえず馬車から敵を引き離す事には成功したのです。
ある程度引き離したら止まって獣人達に向けて剣を構え直す。
「・・・。」
数は三体、武器は手斧一体、棍棒二体なのです。
「ガアァッ!」
棍棒の一体が襲いかかって武器を振り下ろしてきたのを左に躱し、続けてきたもう一体の斜め打ちを剣で往なして距離を取る。
数が不利な以上無理に攻めるのは愚策、防御に撤するのが定石なのです。
けどずっと攻めずに守り続ければ決定打を打ち込めずジリ貧、だからこそ・・・ 。
「・・・。」
構えを緩めず剣をザクザクと土に立てて穴を掘る。
陣形魔法なのです。
各個撃破よりまとめて一撃で決めた方が確実なのです。
「ゴアァッ!」
手斧持ちが斧を振り下ろして来たので土を掘っていない剣で斧を止める。
先程の鍔迫り合いで力負けするのは目に見えているが・・・。
「氷 剣 放出」
魔法を詠唱する。
「氷弾!」
穴を掘っていた剣の切っ先を獣人に向けて氷の弾丸を放つ。
獣人は咄嗟に地面を蹴って躱すが脇に僅かに喰らい、少しだけ脇腹が凍り付く。
距離が空いた隙にまた別の位置に移動して剣で穴を掘る。
「!」
また棍棒持ちの一体が走ってきた!
でも僅かに間合いの外にいる。
なので剣を軽く二回程振って威嚇すると敵は一瞬攻めを緩めて止まる。
この隙に跳んで距離を取って剣で穴を掘る。
「グアァッ!」
「グガァッ!」
「ッ!?」
残りの二体が左右から襲ってきた!
棍棒持ちは低い姿勢で飛び掛かり、私の足を掴もうと手を伸ばす。
手斧持ちはその封じた私に食らわせようと斧を横に振りかぶる。
「ッ!」
咄嗟に上に跳ぶ。
でもこれだと斧を躱すのに高さが足りない。
けど問題ないのです。
「ガグッ!?」
足を掴もうとした敵の頭を踏みつけ、更に高く跳び上がる。
斧は私の足の僅か下で空を切る。
その刹那、私は斧の上に乗って更に跳び上がり、身体を縦に一回転させながら手斧持ちの頭上を通り過ぎて奴等の包囲を抜ける。
そしてそのまま走って距離を取って剣で穴を掘る。
出来た!
陣形魔法の陣を張れたのです!
後は奴等を・・・。
「?」
獣人達の動きがおかしいのです。
じりじりと前には出ず横に歩いているのです。
しかもその方角は陣とは真逆の方角・・・。
まさか気づかれてる?
そんなまさか・・・!
「ガアァッ!」
「いぃ!?」
獣人達は全員で襲いかかってきた。
でも私が驚いたのはそっちじゃないのです!
こいつら、陣を避けて迂回しながら走ってきやがったのです!
「くっ・・・!」
迂回しながらなので同時には攻撃出来ず、最初は棍棒持ちが右斜めから振り下ろしてくる。
それを剣で往なして右斜めに躱して距離を取ると今度は斧持ちが縦に振り下ろしてくるので右に転がって回避する。
すると今度は最後の棍棒持ちが地面スレスレの横振りで仕留めに来るので跳び上がり、丁度低い姿勢だったので頭を踏みつけて更に跳び、包囲を抜けて距離を取る。
また陣形の向かい側に走って奴らに向かって構えるが・・・。
「グウゥ・・・。」
「・・・。」
奴等はまた陣形から離れるようにじりじりと移動している。
やっぱりなのです。
こいつら、私の狙いに気づいているのです。
「なら・・・!」
思いっきり棍棒持ちの一体に斬りかかる。
しかしさっきの走りとは比べ物にならない速さで詰め寄る。
「グウッ!!」
棍棒で止めようとした敵だが、私は僅かに剣の軌道をずらして腕を斬って手傷を負わせて通り過ぎる。
「こうするのです!」
奴等の周りを円を描くように走る。
段々速度を上げ、奴等が目で追えない速さまで速度を上げる。
上昇で撹乱する作戦なのです!
これで奴等を掻き乱せば・・・。
「え?」
奴等は何故か走り出す。
しかも私の走る軌道を追うように走る。
それどころか段々奴等のスピードも上がっていき・・・。
「えぇ!?」
「グアァッ!」
斧持ちが私の左にピッタリくっ付いた状態で走りながら斧を左斜めから振ってきた!
「ひえッ!」
咄嗟に止まって身を屈めて躱す。
「ッ!」
止まった隙に前後から棍棒持ちが飛びかかってきたので右に跳んで躱す。
「ぐっ・・・!」
獣人・・・なんてやりにくい奴等なのですか。
野生の勘なのか危機察知能力も高いし、上昇にも平気でついて来る身体能力・・・ふざけ過ぎなのです。
「「「ガアァッ!!」」」
「ひぃ!」
獣人達は三人同時に襲い掛かってきた。
「氷」
私は後方に下がりながら屈んで首への斬撃を躱しながら詠唱を始める。
「剣 放出」
棍棒の縦振りを捌き、左斜め上からの打撃を身体をずらしながら続けて詠唱する。
「氷弾!」
魔法の詠唱を完了させて剣先から氷の弾丸を放つが獣人達はそれぞれ俊敏な動きで跳び、まるで天敵を避ける魚の群れの様に散らばって弾丸を躱す。
「くっ・・・。」
まずいのです。
散らばられたら包囲されやすくなるから逃げながら戦ってたのに・・・!
「!」
ある物に気づく。
上手くいけば・・・!
「氷」
諦めずに続けて詠唱する。
「剣」
手斧の縦振りを後方に飛びながら詠唱を続ける。
「!」
棍棒の二体が左右から私を追い抜き、三方向から私を囲むように位置取る。
完全に包囲された。
このまま氷弾の弾丸を飛ばしても一方向に攻撃するだけで残りの二体に対して隙だらけになる。
「「「ガァッ!」」」
好機と見たか獣人達は一斉に襲い掛かる。
「『陣』」
さっきの詠唱とは別の魔法を詠唱する。
そう、私は最初から氷弾の詠唱はしていなかったのです。
「放出ッ!!」
奴等の攻撃が私に届く寸前、詠唱しながら私に真上に跳躍して跳び上がった。
さっきの跳躍の比ではない。
十メートル程の高さだ。
足に上昇を使った跳躍だ。
そして身体を百八十度回転させて私の元いた場所に集まった獣人達に向けて剣を向ける。
「氷の柱!!」
詠唱の終わりと同時に獣人達の周りに冷気が集まり、瞬間的に冷却され、巨大な氷の柱になる。
獣人達は声を上げる間もなく氷の柱に取り込まれていた。
その歪な建造物を背に私は静かに着地する。
「ぐぅっ・・・!」
しかしすぐに足の痛みに体勢を崩す。
「ハァ・・・ハァ・・・!」
上昇と魔法の両方の疲労を吐き出すように息を切らす。
「なんとか・・・終わったのです。」
「業火 集束 座標 天 投下」
「ッ!?」
突然聞いたこともない魔法の詠唱が聞こえたかと思うと氷の柱の上に巨大な炎の球体が現れる。
「え!?」
声のする方を向くとそこにはルタがいた。
今は杖を高らかに構え、いつでもあの球体を落とせる様に構えている。
「ルタ!? なんで・・・?」
勝負は決しているはずなのです!
なんでこんな事する必要が・・・。
「・・・ッ。」
ルタが顎で指示する。
詠唱中に他の言葉を喋ると魔法が中断されるからだろう。
「?」
まるで『奴等を見ろ』って感じだったので獣人達を見る。
「え!!?」
なんと既に氷の柱にヒビが入っていた。
まさか・・・!
「「「ガアアアアッ!!」」」
咆哮と共に獣人達が氷の柱を砕いて出てきた。
あり得ないのです!!
私の切り札だったのに・・・!
そう思った瞬間・・・。
「隕炎降来」
ルタが詠唱と共に杖を振り降ろすと炎の球体は容赦無く獣人達の頭上に降下する。
「「「グガアアアゥアアアッ!!!」」」
巨大な炎に潰された獣人達は断末魔と共に巨大な爆炎に包まれる。
「ルタ・・・!」
こうなるって分かってて魔法を・・・。
「まだ・・・。」
「え?」
ルタが杖で獣人達を指差すので見てみると・・・。
「グウウゥ・・・。」
舞い上がる炎の中、手斧の一体が立ったまま唸り声を上げていた。
「なんなのですかあいつ・・・しぶと過ぎるのですッ!!」
「あんたがやって。」
「え?」
ルタは放った炎とは正反対の冷たい視線で私を見ながら指図する。
「ルタ・・・?」
「あんたがやるの。」
「なんであなたが私に命令するのですかッ!」
異様な雰囲気だったが気に食わないので反論する。
「この先もお兄ちゃんについて行きたいなら・・・ね。」
「・・・?」
何を言ってるのか訳が分からないのです。
でもこの状態の相手をやるって言うのはつまり・・・!
「ガアアアアッ!!」
「ッ!」
獣人は炎をその身に纏ったままこっちへ走ってきた。
「ヒィッ!!」
その姿は異様だった。
不気味さと気迫に身体が竦んで動けなくなりそうだった。
しかし獣人が目の前で手斧を振り上げたその時・・・。
「うわぁああああああぁッ!!!」
咄嗟に剣を正面に構えて立ち上がり、獣人に向かってぶつかった。
「・・・!」
ふと我に返ると剣は奴の胸に深々と刺さっていた。
「あ・・・あぁ・・・!」
自分のやった事に血の気が引く。
「ガ・・・グ・・・。」
「?」
刺された獣人は私の頭に手を添える。
「グラ・・・ゴメン・・・!」
「ッ!?」
獣人はそのまま私を避けて前のめりに倒れる。
すると彼を中心に血が流れて広がり、小さな水溜りの様な血の池が出来る。
「あぁ・・・!」
思わず尻餅をついて血から逃げる様に遠退く。
人を殺してしまった・・・!
魔物では無く私と同じ・・・人を・・・!
「ルタ・・・私・・・!」
ルタの方を見ると・・・。
「・・・?」
ルタは何故か満面の笑みで私の方へ歩いて来る。
そして私の目の前に立つとしゃがんで頭を撫でてくる。
「よく出来ました♪」
「何・・・言ってるのですか・・・?」
すぐにルタの胸倉を掴む。
「うわあぁあああああぁああああッ!!」
頭がパニックになりルタを揺さぶりながら叫ぶ。
「私に何させたか分かってるのですかッ!!」
冒険者だろうと人殺しは重罪、冒険者であれば場合によってはバッジの剥奪もあり得る。
「大丈夫大丈夫♪ 今回のは『正当防衛』! 私も証人だから♪」
「そう言うこと言ってるんじゃないのですッ! 私・・・私・・・!」
ルタから手を放すと頭を抱える。
「大丈夫・・・。」
そう言うとルタは私を優しく抱きしめる。
「私・・・人を・・・殺し・・・。」
理由がどうあっても人殺しは人殺し・・・その事実は覆らないのです・・・!
「ねぇメロ、一つ良いかな?」
「・・・?」
ルタは優しい声で耳元で囁くように私に問を投げる。
「たった一人殺したから何?」
「・・・!!!!」
その一言に何故か私の全身の血の気が引き、涙すら流せなくなる。
私が完全に動けなくなるとルタは離れて立ち上がる。
「ほら、早く戻ろ♪」
ルタは無邪気に笑って手を差し出してきた。




