#24 銀の刺客
~ウルド 西の洞窟~
「ハァ・・・ハァ・・・!」
洞窟の入口まで着くとルタは止まった。
「ハァ・・・ハァ・・・此処だね。」
「おい・・・! 何だよ・・・! 確かに受付が・・・言ってた洞窟は此処だけど・・・!」
ルタを非難しつつ息を落ち着かせる。
「・・・。」
ルタはある物に目を向ける。
「・・・?なんだよ、その看板がどうかしたのか?」
看板だ。
何やら注意書で『危険 触るな!』と書いてあり、それを表す特殊な形の黒く角張った石の絵がある。
目印に赤く特殊な文字が書かれているようだ。
だがルタはそんな事はどうでも良さそうで、看板の裏に回る。
「あった。」
何かを見つけたようで看板の裏から何かを取り出す。
「ハイ、『次のメッセージ』。」
「!」
また手紙だ。
「なんでそんなところに!?」
「ホイもう一回見せるね?」
そう言ってルタはさっきの暗号を手渡す。
『ヂイカチ 蟻3121
アラグタ 蛇1101
クンベンノ 鷹20300
オロヲ 星240
マリ 鼠13 』
相変わらず意味不明だ。
「まず必要なのは『グループ分け』だね。」
「グループ分け?」
「そ!特別に教えて上げるけどグループは『蟻、蛇、鼠』と『鷹、星』に分けられるよ。」
「は?なんで?」
「蟻や蛇は普段何処にいる?」
「・・・草の下とか、地面だな。」
「鷹は?」
「空を飛んで・・・あ!」
分かった!
「そう、『空』と『地面』。」
そう言ってペンを取りだし、暗号を書き直す。
『ヂイカチ 地3121
アラグタ 地1101
クンベンノ 空20300
オロヲ 空240
マリ 地13 』
「こうなる。」
「でもこれじゃあまだ・・・。」
そうだ。
これだと数字や文字に関してさっぱりだ。
「この数字、おかしいと思わない? 0から4しかないんだよ?」
「それが?」
「ヒントは五十音順。」
五十音順?
それがどうした・・・って待て、待て待て!
「まさか0から4って、行毎にずらせる段の数・・・?」
簡単に言えば『あいうえお』の『あ』を下に1なら『い』最大の4までずらせば『お』って具合だ。
「そう!で、さっきの『空と地面』は『上と下』ってこと。つまりそれに従って文字を直して行けば・・・。」
ルタは更に書き足す。
『ヂイカチ 地3121 →ドウクツ
アラグタ 地1101 →イリグチ
クンベンノ 空20300→カンバンノ
オロヲ 空240 →ウラヲ
マリ 地13 →ミロ 』
「こう言うこと♪」
「ケッ、くだらねぇ! なんでこんな回りくどい事する必要がある。」
「あの受付が釘刺しても見ないとは限らないからね・・・。」
俺の文句を尻目にルタはさっき見つけた手紙を眺める。
「って言っても伝わらなきゃ意味がねぇだろ!」
「寧ろ伝わらない方が良いんだよ。」
ルタの目が急に鋭くなる。
「は?意味が分からん!」
「正確には・・・『内容を理解するのに時間が掛かる程良い』ってこと。」
「なんだよ、どういう意味だ! って言うかそれには何が書いてあるんだッ!」
文句を付けながら俺はルタから手紙を奪う。
ルタも抵抗せずに俺に取らせる。
「!!」
手紙の内容に唖然とする。
「相手の目的はこれの準備するまでの『時間稼ぎ』だよ。」
『連れは預かった、最深部で待っているぞ。英雄アルト』
「くそっ!」
俺は手紙をぐしゃぐしゃにして捨てる。
「急ぐぞッ!」
「うん♪」
急いでルタと一緒に洞窟へ走っていった。
~メロ 西の洞窟 最深部~
「お前は誰なのですッ!」
手を後ろ手に縛られ、足も縛られ、身動きが取れない状態で目の前の謎の人物に罵声を浴びせる。
「フン・・・。」
そいつは外套とフードを取る。
「!」
長い銀髪の女だったのです。
しかもスタイルが良く、それがハッキリ分かる様な身体のラインが分かりやすい薄地の黒い戦闘服の女なのです。
・・・なんか見せつけられてるみたいでムカつくのです。
―――数分前。
「あぐッ!」
後ろを振り返ろうかと思った時には遅かった。
背中から針の様なものを刺される。
「ぐっ・・・!」
身体が痺れる!
いや、それどころか・・・!
「ぅぁ・・・!」
意識が朦朧としてきたのです・・・!
僅かに意識はあったけど抵抗できず、運ばれた。
そのうち意識がハッキリしたけど手足は未だに痺れて動かないのです。
「お前は餌だ。奴をおびき寄せる為のな。」
「くっ・・・目的は師匠ですか!」
「そうだ。奴は英ゆ
「俺は『英雄』じゃねぇ。」
「!」
私が声に気づいていた時には既に事が起こっていた。
師匠が飛びかかって剣を振り下ろし、女は即座に腰から抜いた短剣でそれを止めた。
「フン。」
女は剣を往なして離れる。
その隙に師匠は女を私に近づかせない為に道を遮る。
追撃を警戒してか、女は前屈みで低く構える。
「師匠ッ!」
「メロ、とりあえずお前後で説教一時間コースな。」
「うぐっ!」
師匠・・・滅茶苦茶怒ってるのです・・・!
「で? お前か、俺に手紙を寄越した勘違い女は。」
「・・・。」
女は構えを緩めて立ち上がる。
「思ったより早かったな、英雄アルト。」
「!」
この女、師匠の事を英雄アルトって言ったのです!
いつも私の前ではシラを切ってるけどやっぱり師匠は・・・!
「違います。人違いです。」
「とぼけても無駄だ。調べはついてる。」
「何処調べなんだか。」
指を指して言い詰める女に対し師匠は呆れ気味に手のひらを左右に広げる。
「シラを切っても無駄だ。そこの娘が証人だ。」
「ほぅ?このチビが?」
「チビぃ!?」
「思い出せ、デミオの街でこれ見よがしに剣を翳した偽物に放ったそいつの台詞を。」
デミオの街で私が偽物に言ったこと・・・。
『そんな下らない小細工で光らせてるだけの剣が閃光の剣な訳がないのですッ! 師匠の剣はムグッ!?』
確かこんなだったような・・・。
「この娘は『閃光の剣』がどのような物か知っている口振りだった、それに最後『師匠の剣は』とも言った。つまり閃光の剣を使うこいつの師匠・・・お前が本物の英雄アルトだ。」
「ふっ・・・はは・・・ハッハッハッハッハッハッハ!」
師匠は剣を持ってない左手で顔を覆うと大声で笑いだす。
きっと隠しきれなくなって自棄になってるのです!
「師匠・・・師匠はやっぱり
「あ~こいつは傑作だ!ルタ!此処にも馬鹿が一人居るぞ!」
「へ?」
師匠は腹を抱えながら丁度私の縄を解いていたルタに話し掛ける。
「アーハイハイソウデスネ。」
ルタは半分面倒臭そうに片言で生返事する。
「師匠?」
「要するにこのアホの言うこと真に受けて此処までやっちゃった訳だ!」
「アホ!?」
「こいつは俺をその英雄なんちゃらと勘違いしてついて来てる筋金入りのバカだ!お前はその妄言を信じて俺を誘い出したんだよ!」
「も、妄言じゃないのです!」
「それを馬鹿って呼ばずに何て呼べば・・・ってあれ?」
師匠は何やら異常に気づく。
「・・・。」
女は何故か此方を見て人形の様な目付きで固まっていた。
「おーい、どうしたー? おーい!」
師匠が声を掛けると・・・。
「・・・ット。」
「あ?」
「猫オオオオォォォッ!!」
「いぃ!?」
女は急に鬼のような形相で此方に斬りかかったが師匠がすぐに割って入って短剣を止める。
「オイオイなんだってんだ? え?」
「どけぇッ! 今お前を相手してる暇はないッ!」
「くっ!?」
恐ろしい気迫なのです。
師匠も思わず気圧されそうになったけど何とか気負けせず押し合っている。
「お兄ちゃん気を付けてね。そいつ・・・。」
「なんだ?うぉッ!?」
師匠がルタに何かを聞こうとしたが咄嗟に危険を察知し、上半身を反らして回避して距離を取る。
「『毒針』使うから、あと短剣も毒。」
「早く言えッ!!」
女は左手にアイスピックの様な毒針を、右手には短剣を構える。
「猫・・・貴様・・・!」
女は依然として殺意剥き出しなのです。
何があの女をそこまでさせるのですか!?
「おいルタ! なんかこいつお前の事知ってるみたいだぞ!」
「・・・。」
「?」
ルタは私から離れて立ち上がる。
「!?」
なんかルタの表情がおかしいのです!
普段師匠を『お兄ちゃ~ん』とか言ってる子供みたいな表情じゃないのです。
目を細め、相手を見透かす様な薄ら笑いを浮かべているのです。
「こんな場所まで遠路遥々ご苦労様。貴方も暇なんですねぇ『銀蠍』。」
「貴様さえ・・・貴様さえ居なければッ!!」
「見つけたぞパツ銀女ァッ!」
「!?」
今度はなんなのですかッ!?
「この俺に舐めさせた苦汁の借りを返しに来たぞぉッ!」
そいつは金ピカ鎧でサングラスをかけている太ったブ男・・・。
「「「「なんだただの偽物か。」」です。」」
「全員でハモってんじゃねぇッ!」
「ハァ・・・今はお前に用はない。」
銀蠍はため息を着いて偽アルトをあしらう。
「お前に無くてもこっちには山ほどあるんじゃぁッ! 俺を拉致して拷問(少し着色)して無理矢理情報吐かせたかと思えば使えないゴミの様に捨てていきやがってッ!」
何でだろう。
話を聞く限り酷い事されてる筈なのにちっとも可哀想って感情が湧いてこないのです。
「おかしな奴だ。私は情報を貰ったあと前もって約束した通りお前の命を取らずに逃がしただろう。」
銀蠍は先程の怒りもすっかり冷めて冷静に偽アルトの言葉を捌く。
「あッれッをッ逃がしたと言うんですかてめぇ様はぁッ!」
「話が見えねぇな、一体何されたんだあんた。」
師匠が事情を聞く。
「聞いてくれよ! そいつ、俺を入れた檻ごと移動中の馬車から外に捨てやがったんだよッ!」
「うーわ、ひでぇ。最低だなお前。」
師匠は呆れ気味に銀蠍を見る。
「だろ!? なんか言ってやってくれ!」
「グッジョブ銀蠍。」
「なんでだよッ!」
銀蠍に親指を立てて賞賛する師匠に偽アルトはキレ気味に突っ込む。
師匠アイツにムカついてたのですね。
「ジィーザスッ! 此処には俺に対して敵しか居ねぇのかッ!」
「いや半分以上お前の自業自得だろ。」
「いじけるのなら家でやれ。」
なんか師匠と銀蠍が共通の敵(?)を前に意気投合してる気がするのです。
「うるせぇ!! とにかく俺は復讐するんだよッ! パツ銀女!! お前をボコボコにしたら縄で縛って蝋[ピーー]で[ピー]してお前の[ピーーーー]に俺[ピーー]剣をぶち込[ピーーー]顔にしてボ[ピーーー]るまで孕[ピーー]やるッ!!」
「何言ってるのですかこの変態ッ!!」
「うーわ、性犯罪者がいるよ。憲兵に突きだした方が良いよね。」
偽アルトの発言に私は叫び、ルタはゴミを見る目で罵倒する。
「問答無用ッ!喰らえッ!英雄奥義!」
偽アルトは例のエセ伝説の剣を取り出すと腰を落とし、剣の切っ先を顔の横に構える。
「ローリングサンダースペシャルダイナミックサンダー突きィ!!」
「技名ダサッ!!」
「『サンダー』二回言ってるしッ!!」
「技名長いけどただの突きなのですッ!!」
偽アルトは技名を叫びつつちょこちょこ走りで剣を振り回しつつ最後に技名通り突きを銀蠍に突きだす。
当然銀蠍にはかわされる。
「あっ。」
更に偽アルトは銀蠍の見事なハイキックを背中に喰らう。
「ぐわああぁッ!」
勢い余ってか、偽アルトは派手に転がる。
太って丸々してるせいか勢いよく転がってるのです。
「グヘェッ!」
偽アルトは無様に洞窟の壁にぶつかる。
「全く話にならん・・・ん?」
銀蠍は偽アルトの無謀さに呆れるが何か異変に気づく。
「!」
私にも異変が分かってきたのです。
この一帯の空間全体がおぞましい魔力に覆われて行くのです。
意識を集中しなくても魔覚で感じ取れるほどに。
壁や地面一体が黒い泥が広がって行くような、吐き気がしそうな魔力なのです。
「あ!」
ルタは何かに気づいたのです。
「おデブがぶつかった先・・・!」
偽アルトが転がって激突した所の壁に何やら埋まっていたのです。
黒く角張った大きな岩があり、何やら赤いよく分からない変な文字があるのです。
でもそれも偽アルトがぶつかった表紙に割れて更に見辛くなってるのです。
「あの石って確か・・・。」
「もしかして入り口の注意書にあった『触ったらいけない石』・・・!」
「え、え?」
何が起こるのですか!?




