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嘘つき英雄と嘘の妹 ~旧版~  作者: 野良犬タロ
プロテア編
23/101

#23 手紙


~カトレア 王宮 地下~


「闇を照らす御君よ 夜闇の月の写し身たる御君よ 我が傍らに在る御君よ 汝が見下ろし 見上げし土を照らし 月の恵みを 守護の恩恵を」

 太陽の射さない地下の奥深く。

 二つの女神の像に守られるように飾られた光輝く宝玉に膝まずき、儀式用の銀の長杖を右手に持ちながら手を広げて立ち上がり、踊るように杖をゆっくり大きく回し、掲げ、最後に両手で持って額に当ててゆっくり再び膝まずきながら祈りを捧げる。

 すると宝玉から泡の様な光の膜が現れる。

 それは瞬時に広がり私や壁をもすり抜けて見えなくなった。

「よし。今日もありがとうございます、宝玉様!」

 私はぺこりと一礼する。

 目の前に飾られている宝玉は『月の宝玉』、王都を魔物から守る守護の結界を張り続けているルヴァーナ国秘蔵の宝だ。

 王都に入る人間はこの結界を通れるが魔の者が入れば強大な魔力により霧散していく強力な物だ。

 宝玉の存在を知らない領民は、これを『王家の結界』と呼んでいる。

 しかしこの結界には欠点がある。

 定期的に王家の血を引く者が祈りを捧げないと結界を維持できないのだ。

 その為、私がこうして祈りを捧げている。

 私は王の妹である姫だが、同時にこの宝玉に祈りを捧げる役目を担う者、『月の神子』だ。

「そろそろ祈りが切れる時だったか。」

「!」

 右後ろの階段から声がしたので振り向くと兄さんがいた。

「兄様!」

「相も変わらず陰気な場所だな此処は。」

「ええ・・・凄く。」

 私と兄さんはこの場所が凄く嫌いだ。

 嫌なことを思い出すからだ。

「兄さん・・・!」

 私は素の呼び方で兄さんに抱きつく。

 兄さんもすぐに理解して私を優しく抱き締める。

「まだ・・・怖いか?」

「怖い・・・月日がたった今でも・・・!」

 自分でも手が震えて居るのが分かる。

「そうだ。()()()()()。」

 兄さんは頭を撫でる。

「それが本来お前が持つべき感情だ。」

「うん・・・。」

 目に涙が浮かんで来て更に強く兄さんに抱きつく。

 この地下は本来、こんな広間の中心に像と宝玉があるだけの部屋ではない。

 かつてのこの広間は像の周りに巨大な檻を囲っており、牢獄の様になっていた。

 別に罪人を入れる為ではない。

 宝玉が独りでに歩いて逃げると言った怪談じみた話もない。

 理由は単純明快。



「お前は監禁されていたんだからな。」



~ウルド 王宮~


「はぁぁぁ・・・。」

 城を出て溜まりに溜まった溜め息を吐き出す。

「お疲れ様! どうだった?王様は。」

 ルタは何故か機嫌良さそうに聞いてくる。

「色んな意味でスゲェわ。」

「でしょ?」

「怒らせに来たり助けてくれたりで休む暇もない。って言うか何より妹の話になると・・・。」

「あ~・・・あぁ、あれね・・・。」

 ルタは半笑いで視線を反らす。

 こいつも被害者か・・・。

「とりあえず目的地は決まった。」

「何処?」

「・・・『聖堂教会』だ。」

 ルタに聞かれると嫌々ながら答える。



―――バルコニーでの会話。


「聖堂教会・・・ですか?」

 内心『げっ』と思った。

 正直さっきの会話を聞いて行きたくない場所ナンバー1だからだ。

「ああ、彼処には古代の記録や文献がある。とにかく今は情報が必要だ。」

「確かに・・・。」

 言われてみればそうだ。

 原初の悪魔と一番長く戦っているのが何処の奴等かと聞かれれば他に言いようがない。

 現状奴を完全に倒す方法は皆無に等しいが今現在ある情報も得られなければスタートラインにすら立てないだろう。

「本来ならお前にも護衛に兵を付けたいがお前を狙う国々の輩に居場所を特定されるのも望ましくない。すまないな。」

「いえ、カザに兵を派遣してくれるだけでも有り難いです。」

「いいさ。だがそう言う意味も兼ねて彼女にはこれからも護衛させる。」

「ルタに・・・。」

 まぁ正直アイツは色々隠し事が多いし、戦闘能力は未知数だ。

 だがグランツ王がこうして護衛を任せる辺り相当な物だろう。

「安心しろ、(キャット)・・・いや、ルタの実力は信用出来る。存分に頼っていいぞ!」

「はぁ。」



―――そして現在。


「はぁ・・・聖堂教会か。」

「お前もかよ・・・。」

 老けた老婆の様に気だるそうな顔をするルタ。

 この顔でどれだけ嫌か察しがつく。

「仕方ねぇよ。此処以上に情報あるらしいし。今は情報収集が先だ。」

「でもなぁ・・・。」

 露骨に嫌そうな声を上げるルタを眺めながら城門を(くぐ)ると・・・。

「ん?」

 おかしい。

 本来いる筈の奴が此処に居ない。

「連れの小娘なら多分ギルドに向かったぞ。」

 様子を察した門番が教えてくれた。

「はぁ!?どう言うことだよ!」

「『師匠はきっと私の事を認めてないのです! こうなったら師匠の用事の間に冒険者として依頼を片付けてギャフンと言わせてやるのです!』って言って走って行ったぞ。」

「いやちょっと待て、今のアイツの声真似か?」

 どうでもいいが気になった。

 声が低いなりにかなり似せている。

 強面の顔からは想像もつかない程迫真の演技だ。

「ゲフンゲフンッ! あ、あの小娘の観察が面白くてつい・・・!」

 門番の男は顔を赤くして咳き込む。

「まぁそうだよな! あいつアホだもんな! 面白いのは納得だわ!ハッハッハ!・・・。」

「お兄ちゃん・・・。」

 笑って数秒固まった俺を見て察したのか、ルタは溜め息を()きながら人差し指で両耳を塞いで離れる。



「あんのアホガキャアアアアアァァァッ!!」



 街中に聞こえるかもしれない声で咆哮する。

「なんでアイツは『大人しく待つ』って事が出来んのだッ!」



~メロ 西の洞窟~


 私は松明の灯りを頼りに洞窟を歩いていた。

 討伐対称はゴブリン二十体。

 歩きで十分程の距離にある洞窟。

 そこに定期的に増えるゴブリン達の頭数を減らし、付近の村に被害が及ばないようにするのが今回の依頼なのです

 ランクEの仕事でも結構難易度はあるのです。

 何せ洞窟内のゴブリンはかなりズル賢く、冒険者を罠に嵌めたり集団で一気に不意討ちで襲いかかったりするのです。

「フッ・・・!」

 魔覚に意識を集中する。

 母から習った事なのです。

『洞窟内では十二歩歩く毎に魔覚で索敵』。

 暗がりでの戦闘は魔覚が頼りだからなのです!

「・・・!」

 いた!

 七メートル先、道の脇!

 数は三体、全て同じ位置に固まってるのです!

 恐らく松明の灯りに気づいて先に私を察知して待ち伏せしてるのです!

「・・・。」

 松明の火を消す。

 こうすると奴等は音を頼りに此方の位置を探ってくる。

「・・・。」

 息を殺し、ゴブリン達のいる方へ歩いていく。

 そして例のゴブリン達が脇に隠れている位置の歩数にして五歩の位置まで近づいた。

 慎重に一歩。

 臨戦態勢を崩さず二歩。

 息を飲んで三歩。

 四歩。

「・・・。」

 五歩。

「~~~ッ!!」

 独特の叫び声と共にゴブリン達は勢いよく飛びかかる。

 私を袋叩きにしようと手に持った棍棒を何度も振り下ろすが・・・。

「~~~?」

 ゴブリン達は戸惑う。

 全く手応えが無いからだ。

(グラス) (エペ) 放出(ホレッシ)

「~~~ッ!?」

 詠唱の声にゴブリン達は驚く。

 私は先程の三歩の位置にいたからなのです。

 先程の最後の二歩は偽者(フェイク)

 靴を脱いで二足放り投げたからなのです。

 父から習った事なのです。

 『魔法を撃つなら一発で仕留めきれる瞬間(タイミング)で撃て』。

氷弾(アイシクルバレット)!!」

 氷の弾丸は三体の内の丁度真ん中のゴブリンの顔面に命中する。

 その顔面は魔法の力で凍るがそれだけじゃない。

 左右のゴブリンにも氷結して出来た氷が瞬時に延びて到達し、肩や頭にくっついて動けなくなる。

 氷を取ろうとゴブリン達は必死に引っ張るがお互いが激しく動くため上手くバランスが取れずに転んでしまう。

「フンッ!」

 転んだゴブリン達に容赦なく剣を振り下ろす。

 何度か斬るとゴブリン達は動かなくなる。

 仕留めたのです!

「フゥ・・・ゴブリン如き、私の敵じゃないのです!」

 このままちゃっちゃと依頼を片付ければちょっとは師匠も私のことを認め

「ほぅ? では私相手ならどうだ?」

「え?」

 後ろから声?

 おかしいのです、魔覚には今仕留めたゴブリンしか



~ウルド ギルド~


「受付さんッ!」

「は、はい!?」

 ギルドに入って早々ダッシュでカウンターに向かい、受付の女職員に問いただす。

「短めの青髪で背がちっこい剣士(ソードマン)の小娘来なかったか!?」

「え? えーと、あ! 来ました来ました!」

「本当か!?」

「ハイ、ゴブリン討伐の依頼を受けて近くの西の洞窟へ・・・。」

「そうか、分かった! サンキュー!」

 すぐに急いで追いかけようとしたが・・・。

「待ってください!」

「え?」

 突然職員に呼び止められる。

「なんだよ!」

「その女の子がギルドを出たあと、変な人がこれを私に・・・。」

 職員が俺に差し出したのは手紙だ。

「何だよそれ。」

「『あの娘の連れが来たらこれを渡せ』と・・・。」

「??」

 よく分からないが手紙を受け取る。

「そいつ、どんな奴?」

 ルタが職員に問いかける。

「灰色の外套とフードで顔が見えなかったんですけど、声を聞いた限りは女の方でした。」

「女?」

「何? 女がお兄ちゃんに手紙? もしかしてラブレター?」

「んな訳あるかッ! 茶化すなッ!」

「『中身を見るな』とは言われたのですが怪しい人だったので危険な内容であってはいけないと思って中を見ちゃったんです。けど・・・。」

「けど?」

「内容がよく分からなくて・・・。」

「は?」

「よく分からない?」

 俺とルタはどっちも頭にハテナマークを浮かべる。

「何だよそれ・・・は?」

 とにかく手紙を開けて見ると内容に固まる。

「なぁにぃ?どうしたの?」

「ん。」

 ルタが覗き込んで来たので手紙を見せる。



『ヂイカチ 蟻3121

アラグタ  蛇1101

クンベンノ 鷹20300

オロヲ    星240

マリ    鼠13  』



「さっぱりだ。」

 何が書いてあるかちんぷんかんぷんだ。

 片仮名に数字・・・何か関係があるのか?

 それにアリ?タカ?ネズミ?

 何の意味かさっぱり分からん!

「・・・。」

「ルタ?」

 何故かルタが固まっている。

「お兄ちゃん。」

「なんだ?」

「急いだ方が良いかも知れない。」

「は? おい!」

 突如走り出したルタをすぐに追いかける。

「おい何だ! なんて書いてあった!教えろッ!」

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