#20 会いに行く前に・・・
~ウルド 道中~
「すッみッまッせえぇんッ!!」
馬車の荷台から運転席の商人さんに向かって全力で土下座する。
「痛いッ! ちょ、なんで私もなのです!?」
俺の左手に後頭部を鷲掴みにされて荷台の床に擦り付けられながらメロは喚く。
「連帯責任だバカッ!」
「痛い痛いッ! 痛いってばお兄ちゃぁんッ! 私が何をしたって言うのッ!?」
それ以上の力を込めた右手で頭を床に押さえつけられてルタは暴れながら喚く。
「お・ま・え・が・主犯だろうがぁぁ・・・!」
土下座の理由は云わずもがなルタが森の中で超絶ロデオをかましたからだ。
木に激突しなかったとは言え、所々木の枝に引っ掻かれ、馬も傷だらけ、荷台の外布は所々穴が空いている始末。
「いいっていいって! 仕入れ前だし売り物が台無しになった訳じゃないからな!」
「ほらぁ!」
「調子に乗るなッ!」
「痛いッ!」
心の広い商人さんの言葉に勢い付いたルタは顔を上げるが即座に頭を再び床に叩きつける。
「命あっての商売さ、死んだら元も子も無いからな!」
「そう言って貰えると助かります・・・。」
安心して頭を上げるが・・・。
「ただ・・・。」
商人さんは半身で振り返る。
「今度護衛を頼むような事があったらあんな真似は二度と御免だからな・・・♪」
半分だけ見えるその顔は笑顔だが米噛みの部分から若干血管が浮き出ている。
「・・・。」
めっさキレてますやん・・・。
『ほらぁ!!』
念話でルタを叱りつける。
『ゴメン・・・。』
『危うく弁償させられる所だったんだぞ!』
『ゴメンってば!』
『ったく・・・でもま、いつまでもこの一件にくどくど言ってられる状況じゃないな。』
『うんうん!』
『だから調子に乗るなッ!』
『ゴメンって! それよりも、問題は魔族の事だね。』
『あぁ。』
魔族、霧魔の瘴気によって、またはこの世の全てに絶望して心を闇に売るなどして魔物に身を落とした人種。
奴等も恐らくはあの狂戦士と同じ組織だろう。
俺に斬りかかった時、俺の事を『大罪人』とか言ってたしな。
人間にとって英雄ともなれば魔族からは大罪人、まぁ戦いや戦争に於いては摂理だな。
『これから奴等とは度々戦うことになるね。』
『そうなると問題はメロだな。』
『だね、半人前を連れていける旅じゃないからね。』
『それもあるがこいつに正体がバレる危険性も高くなる。』
そう、奴等と戦うからにはいずれ指輪の封印を外して本来の力で戦わなければならなくなる。
そうなれば首の皮一枚で隠している俺の正体も一発でメロにバレる。
『もうほとんどバレてる様なもんだし、いっそのことバラしちゃっても良いと思うけどなー。』
『そんな訳に行くかよ!』
もしバレたら是が非でもこいつは弟子にしてくれだの言って離れなくなる。
そうなれば厄介だ。
いくら断ろうが執念深いメロは地の果てまで追ってくるだろうし、その過程で強敵に出くわすようなら流れ弾で命を落としかねない。
それだけは何としても避けなければならない。
メロに関しては一刻も早く代わりの師匠を探して別れた方が良い。
「師匠?どうしたのですか?」
メロは俺の顔を覗いていた。
「え? 何が?」
「険しい顔してるのです。」
「な、何でもない!」
やべ、顔に出てた。
~プロテア王 宮殿~
「王よ。」
「早かったな。」
窓からいつもの様にコルボーは報告に来る。
「もう間もなく彼等は到着するかと。」
「そうか、ようやく我々は始動地点に立てる訳だな。」
「奴等は既に数手程打っております故、くれぐれも我々は後手に回っている事をお忘れなきよう・・・。」
「言われるまでもない。奴等との戦いは既に始まっているのだ。」
「そのご様子では此方の進言も出過ぎた様で・・・では。」
そう言うとコルボーは踵を返す。
「あぁ、これからはより一層お前の役割が重要になる。彼等を見守ってあげてくれ。」
「無論・・・。」
コルボーは黒い羽根を散らして飛び去った。
「ふっ・・・。」
窓の外の景色を眺めながら一瞬鼻で笑ってしまう。
あれから半年。
あいつは今どの様な顔をしているのか・・・。
「兄様。」
「カトレア、居たのか!」
不意に後ろから声を掛けられ思わず振り向く。
「何やら楽しそうですね。」
書籍の入口に立っていたカトレアは目を細め、静かに睨むように私を見ながら歩いてくる。
「そうか、顔に出ていたのか。」
「そんなに嬉しいのですか?彼に会うのが・・・。」
私の前で止まると妹はより一層細目で私を鋭く睨む。
見るからに不満が滲み出ている。
「無論だ。王とは言っても私も所詮人間だ。友人に会うのが楽しみでない訳がないだろう。」
「たったの一度報告に来ただけの方を兄様は友人と呼ぶのですね。」
「私は少なくともそう思っている。」
「得ですね、英雄と言うのは・・・一国の王の友人にすらなれるのですから・・・。」
「やけに今日は辛辣だな・・・。」
「無礼であればお忘れ下さい!」
言葉とは裏腹にプイッとそっぽを向いて部屋を出ようとするが・・・。
「ッ!?」
突如腕を捕まれ、引き寄せられたカトレアは目を見開く。
妹の頬にそっと右手を添えると、優しく左頬にキスをした。
「に、兄さんッ!?」
腕を放すと妹はキスされた頬を押さえて顔を赤くし、動揺して素の呼び方で私を呼ぶ。
「昼間は人の目がある。これで我慢してくれ。」
「・・・ッ!」
カトレアは目をぎゅっと閉じて頬を押さえたまま走り去っていく。
「・・・。」
その後ろ姿は恥ずかしがっている様にも、拗ねている様にも見えた。
~ウルド 王都プロテア~
街に着いて馬車を降りる。
「師匠、何してるのですか?」
俺の姿にメロは質問を投げる。
「コホッ・・・ちょっと風邪気味なんだよ。」
「風邪なのですか?」
メロが不審がるのも無理はない。
俺は顔全体を布でぐるぐる巻きにしていたからだ。
「・・・。」
ルタはにまにま笑っている。
『ああそうだよッ! 此処じゃ確実に顔バレすんだよッ!』
『まだ何も言ってないけど?』
『どうせ言うだろうがッ!』
念話でルタに食って掛かるが適当にあしらわれる。
仕方無いだろ!
魔王の一件王様に報告してから少しの間滞在してたし、アルトとしての顔知ってる奴も王様以外に何人かいるし!
普通に歩いてたら即座にバレるんだよッ!
「師匠、そう言えば気になってたのですが、なんでプロテアに来たのですか?」
「う゛っ・・・!」
嫌ぁ~な質問来たな・・・。
普通に『王様に会いに行く』なんて言えば一発で怪しまれる。
いくらランクの高い冒険者だろうが簡単に会える相手じゃ無いからな。
「ちょっと知り合いに会いに行くんだ。」
「知り合い? 誰なのですか?」
的確にウザい所掘り下げて来るなこいつ。
「・・・ゴンザエモンだ。」
「ゴンザエモン?」
「腕利きの情報屋だ。」
「聞いた事無いのです。」
「気難しい奴だからあんまり人前に現れないんだよ。」
「ふぅむ、そんな人に何の用なのです?」
「それは・・・えっと・・・。」
即席の嘘じゃネタが尽きるな・・・。
ヤバい、メロがジト目になってきてる。
嘘だってバレたらそれこそ怪しまれる!
『しょうがないなぁお兄ちゃんは。』
「!」
念話で突如ルタが話しかけてくる。
『なんだよ。』
『バトンタッチ!』
『は?』
ルタがメロの前に割って入る。
「親を探してんの!」
「親・・・ですか?」
「お母さんね、父親が飲んだくれのどうしようもないクソ野郎で、ある日蒸発しちゃったのよ。それから私達は家を飛び出して冒険者になって路銀稼ぎしながら旅してる訳!」
「そうだったのですか・・・知らなかったのです。」
「あ、ああ。そう言うことだ。」
上手く言い回してくれたが嘘っぱちにも程がある。
俺には親なんていないぞ!
ルタは知らないけど・・・あれ、ちょっと待てよ?
そう言えば考えた事も無かったな。
ルタって家族いるのかな?
でも身分偽って他人の妹になるような奴だぞ?
家族が居たって絶対ロクな奴じゃ・・・。
「何してんのお兄ちゃん! ほら行くよ!」
「お、おぅ・・・。」
ルタに引っ張られながら街に入っていく。
『さて此処から第二関門です!』
念話で話しかけてくるルタ。
『あぁ、そうか。いくら嘘言ってもこのまま王様の所に行ったら一緒だもんな。』
『そう言うこと! じゃ、あと頑張ってね♪』
『ちっ、しょうがねぇな。』
丸投げされたが文句は無い。
ルタは正直バレてもいいや的な立ち位置だし、これ以上協力する義理もないんだろう。
まぁ元々手伝って貰うつもりも無かったしここまで来たらあとはいくらでも手段はある。
―――しばらく歩いた後。
俺達が着いたのは食堂だ。
「いらっしゃいませ!」
ウェイトレスが愛想よく挨拶する。
「三人だ。」
「はい!では此方の席へどうぞ!」
案内されるまま奥から二番目のテーブル席に座る。
「此処で待ち合わせなのですか?」
「ん。」
メロの質問には答えず、俺は小袋をテーブルに置く。
「へ?このお金、なんなのですか?」
小袋の中には一人の一.五食分の銅貨が入っている。
「ゴンザエモンの所には俺ら二人で行く。」
「え、なんでですか!」
「奴は偏屈で気難しい奴なんだ。予定より大人数で行くとヘソを曲げられる。だからお前は此処で適当に時間潰せって事だ。この金で適当に好きな物でも食べて待ってろ。」
「一人増えたくらいで大して変わらないじゃないですか!」
「偏屈って言ったろ!一人でも駄目なんだ!とにかく待ってろ、すぐ戻る!」
そう言って強引に立ってルタと一緒に出ていく。
―――またしばらく歩くと・・・。
『お兄ちゃん・・・。』
『あぁ、分かってる。』
案の定メロが後ろからこそこそ尾行していた。
まぁ魔力でバレバレなんだがな。
『待ってろって言ったのに聞かなかったよ?』
『オーケー、予測の範疇だ。』
アイツがあんな説得で聞くわけが無いのは分かっていた。
だから第二計画もある。
俺達が次に向かったのはギルドだ。
中に入ってとりあえずキョロキョロと辺りを見渡す。
「お。」
丁度良さそうな奴がいた。
金髪で鼻ピアスを付けたチャラそうな冒険者二人組だ。
何が話題か楽しそうに酒を片手に駄弁っている。
「ちょっといいか?」
「「お?」」
声を掛けられた二人組は突然の見ず知らずの俺に戸惑うが・・・。
「頼みがある。」
「何々?」
「俺達に出来る事ならなぁんなりと!」
最初から頼みを聞く気満々で身を乗り出しているチャラ男達。
何故なら奴等の目の前には銀貨が二枚置かれていたからだ。
~メロ ギルド~
怪しまれないようテーブルに座りながら師匠を監視していた。
師匠絶~ッ対何か隠してるのです!
あんなはぐらかし方で弟子の私を謀れると思ったら大間違いなのです!
きっと英雄でないと通して貰えない様な特別な場所に行くから私を連れて行きたく無いのです!
今話してる相手だってきっとゴンザエモンと思わせた関係ない人間なのです。
え、でもなんでそんなことを?
「ハッ!」
マズいのです。
もしかしたらまた尾行してるのバレてるかも・・・!
だってそうじゃ無かったらこんなゴンザエモンとやらに偽装させた相手と話す訳無いのです!
きっと私が尾行しているのに気づいてわざとそれっぽい人間に会って『あ、な~んだ!本当にゴンザエモンに会ってたのか~!』とか思わせて尾行を諦めさせる気なのです!
そうは問屋が・・・。
でも待つのです。
もしあいつらが本当にゴンザエモンだったとしたら私ただの間抜けなのです!
こんな早とちりで本当に師匠が食堂に戻って私が居なかったのを目撃なんかしたらただ私が約束破っただけなのです!
そんな事になったら・・・。
『たったひとつの約束も守れん様じゃ弟子にはしてやれんな、何処へなりと失せろ。』
あああ・・・!
そんなつもりじゃ無かったのです!
ただ師匠が私を置いて行くからぁ!
「ハッ!」
師匠達が立ち上がった!
なんか話してた相手も立ち上がったのです!
話が終わった様な雰囲気なのです!
もしかして今話してたのは本当に情報交換!?
あぁ、師匠がギルドから出ていくのです!
マズイマズイマズイッ!
すぐに先回りして食堂に戻らないと・・・!
でも大丈夫、私には上昇があるのです!
師匠を追い越して食堂に戻るなんて朝飯前!
「いざッ!」
ギルドを出ようとした瞬間・・・。
「ねぇ君ちょっと良い?」
「ッ!?」
突如後ろから肩を捕まれる。
振り向くと先程師匠が話していた二人組なのです。
「な、なんですか?」
「君さ、身なりは良いけど駆け出しっぽいよね!」
「だからなんなのですか!」
「俺らさぁ、駆け出しとか見てると放っとけない質なのよ!」
「だからさ!お兄さん達が冒険者として色々教えてあげるから、ちょっとだけ徒党組もうよ!」
「いや、徒党ならもう間に合ってるのです!」
なんなのですかこいつら・・・。
もしかしてナンパしてきてるのですか!?
そりゃ私も見た目に自信無い訳じゃ無いですけど・・・ってそうじゃないのですッ!
「大丈夫だって!討伐依頼一つこなすだけ!お仲間さんも目くじら立てないって!」
「いや、今私やることがあって・・・!」
「まぁまぁま、とりあえず昼時だしさ! 飯食いながら話そうよ!」
「ちょ、ちょっと!」
強引に連れていかれる。
いやいやそんな事に付き合ってる場合じゃ無いのです!
今師匠が食堂に戻ったらマズいのですッ!
師匠ォ!
助けてェ!
・・・いや、なんか違う気がするのです。
~ウルド 街中~
「ハイ作戦成功。」
「イェーイ☆」
ルタとハイタッチを交わす。
あの二人組を雇ってやらせたのは言うまでも無いが足止めだ。
とにかくナンパでも何でも良いから声かけて小一時間ほど捕まえておくように頼んだ。
「ホントチョロくてアホだよねアイツ♪」
「ホントアイツにはトゲ強いよねオマエ♪」
いつものメロに対する毒を吐くルタに対し、皮肉を込めてノリを合わせる。
「あー清々する! じゃ、さっさと王様の所行こ♪」
「ったく、ちょっとは仲良く出来んのか・・・。」
愚痴をこぼしつつルタと一緒に王宮へ向かうが・・・。
「・・・。」
足を止める。
「お兄ちゃん?」
ルタが声を掛けるが俺は構わず後ろを見る。
「ルタ、先に行っててくれ。」
「え、まさかお兄ちゃん・・・!」
「ちょっと寄り道だ。」
「ハァ・・・。」
俺の行動に想像が着いてかルタは溜め息をつく。
「大体想像出来る寄り道だけどいいよ、好きにして。」
「ああ、そうする。」
俺は来た道を戻る。
―――さっきの場所まで戻る。
メロが例のチャラ男達に連れていかれた方を歩き、それっぽい場所を探す。
「・・・。」
あった。
路地だ。
そこから入って路地裏まで行くと。
「・・・やっぱりか。」
予想通りの光景が目の前にあった。
~メロ 路地裏~
チャラ男達に両手を捕まれ、私は壁に押さえつけられていた。
「何するのですかッ!話が違うのですッ!」
「叫ぶなって、人が来ちゃうでしょ?『不審者ちゃん』。」
「な!?」
こいつら・・・師匠から話を聞いて・・・!
って言うか不審者じゃないのです!
「俺ら君に付け回されてる男から雇われて足止めしてるだけなんだけどさ、ただ一緒に茶飲み話ってのもつまんないじゃん?」
「そ~そ! それに俺の方はこないだナンパした女と良いところまで行ったのに逃げられちゃって傷心気味なの! だから慰めて?ね?」
「知らないのですそんなことッ!」
「大丈夫大丈夫! 丁度真上の雲数えてる内に終わるからさ!」
「ふざけんなですッ!」
「ごぶっ!?」
即座に蹴りを傷心云々言ってた方のチャラ男の腹部に食らわせる。
上昇で威力を上げているのでチャラ男の身体が浮き上がるがダウンさせる程では無かった。
って言うか寧ろ・・・。
「そっかそっか、寧ろそう言う趣向が好みな訳!」
チャラ男達は下品な笑みを浮かべるとそれぞれ私の手を押さえていない方の手で私の足を押さえつける。
「放すのですこの変態ッ!」
上昇で振り払おうとするが足が動かない!
「駆け出し剣士に出来て俺らに出来ないとでも思った?」
「くっ・・・!」
こいつら・・・手に上昇を使ってるのです!
「抵抗しても無駄なの分かったっしょ?」
「うぐぅ・・・!」
「それじゃいただきま~
「あー、すまんな。頼んどいてアレだけど。」
「!」
その言葉を聞いた頃には既に事が起こっていた。
傷心チャラ男の後頭部が鷲掴みにされて私の右側の壁にめり込んでいた。
「完全に人選ミスだったわ。」
「師匠・・・!」
師匠が手を放すとチャラ男はそのまま地面に倒れる。
それを見たもう一人のチャラ男は慌てて私達から離れて距離を取る。
「ちょっとちょっとちょっと! 話が違うんじゃない!?」
チャラ男は師匠を指差して非難する。
「あぁ、こっちの説明不足だったわ。『ただし手を出すな』って言っとくべきだった。」
「ははぁ、説明不足ね。成る程ね。確かに教えて欲しかった。じゃあ・・・。」
チャラ男は両手を肩の高さで軽く広げながら師匠に近づくと・・・。
「今その縛りノーカンねッ!!」
背中に背負っていた剣を瞬時に抜刀して師匠に振り下ろす。
腕に上昇を使っているのか凄い速さだ。
「馬鹿かお前。」
師匠はチャラ男の手首を掴み、身体を横に一回転させながら懐に飛び込んで背を向けながらチャラ男の服の襟を掴み、身体を斜めに捻って投げ飛ばした。
「グヘッ!」
チャラ男は無様に石造りの地面に背中を打ち付ける。
「上昇使えりゃ勝てるとでも思ったか?」
「てめぇ!」
すぐにチャラ男は起き上がって剣を構える。
「まだやんのか?」
「ったりめぇだろ!友人もやられて引き下がれるかっての!」
チャラ男はまだ戦う気のようだ。
「やめといた方が良いぞ。」
「!」
師匠はあるものを顔の高さまで上げて見せる。
それは銀貨だ。
「さっき俺が貰った・・・!」
チャラ男は自分の懐を確かめて盗られた事に気づく。
恐らく投げ飛ばした時に抜き取ったのだろう。
「くっ・・・!」
チャラ男の構えが緩む。
確かにそれだけの隙を突けたとあれば実力の差も一目瞭然だ。
「もう一つのお前の友人にやった奴はやるよ。迷惑料だ。」
「!」
師匠は私の背中をポンと叩く。
その意味を察して私は師匠と一緒に歩き出す。
「チクショォチクショォ! なんなんだよッ!」
チャラ男は罵詈雑言を師匠に浴びせるが勝てないと分かってか追ってくるつもりは無いみたいだ。
「だから悪かったって!その銀貨で酒でも飲んで忘れてくれ!」
そう言って私達はその場を後にする。
「師匠・・・。」
「・・・待ってろって言ったよな?」
「あぅぅ・・・!」
もう絶対言い訳出来ないのです・・・。
師匠、最初から私が尾行してたの分かってたみたいだし、もうその時から怒ってたに違いないのです。
「ハァァァ・・・。」
師匠は深く溜め息をつく。
完全に愛想尽かされてるのです。
これから言われるのはきっと・・・。
「どうせついて来るなって言ってもついて来るよなお前。」
「!」
追い返され無かった・・・?
「もういいよ、ついて来い。」
「!」
師匠・・・!
「ハイですッ!」
元気よく返事をした。




