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嘘つき英雄と嘘の妹 ~旧版~  作者: 野良犬タロ
道中編
16/101

#16 少女の涙


~ウルド ヨグ村~


「お世話になりました。」

 家の出入口で俺は二人に変わって頭を下げる。

「いんやー、あんた方は村の英雄だ! これぐらいで恩返せるんなら安いもんだぁ。」

「・・・。」

 英雄・・・。

「ん? どした?兄ちゃん?」

「いえ、俺達はただの冒険者です。ではこれで・・・。」

「ん? お、おぉ・・・。」

 村長は戸惑いつつも俺達を送り出してくれた。

 家を出てしばらく歩くと一人の少年が走ってきた。

「兄ちゃん!」

「よぉ、ダグ!」

 村から出てきて俺に助けを求めた少年だ。

「兄ちゃん達もう行くの?」

「あぁ、旅の途中だったからな。」

「そっか!」

「あと・・・。」

「?」

 ダグの頭に手を置く。

「助かった。」

「え? 何が?」

「お前があの秘密の入口教えてくれなかったらあそこまでスムーズに行かなかったからな。」

「え? えぇ? そ、そんなこと無いよ! あれから大変だったんだよ! 結局あの出入口が大人達にバレて使ってた俺や友達もこっぴどく叱られたんだから!」

「はは、ひでぇな!あの穴が村を救ったってのにな!」

「だからなのかな・・・。」

「何が?」

「村の大人達、あの穴を塞がなかったんだ。」

「・・・。」

 この村も良い村だな。

「わっ!」

 わしゃわしゃとダグの頭を撫で付ける。

「兄ちゃん!?」

「村の皆も分かってんだよ! お前のやったことが村を助けたんだってな!」

「え?助けたの兄ちゃんじゃ?」

「村が襲われた時に助けを呼びに行ったのも、あの抜け道で俺や村の皆を助けたのはお前だろ!」

「そ、そんな大した事じゃないだろ!」

「いいや、自信持てよ! お前がこの村の英雄だ!」

「英雄は兄ちゃん達だろ?」

「俺はただの冒険者だ。やることやっただけだよ。」

「・・・。」

 ダグは俯いて急に黙り込む。

「どうした?」

「くぅ~~~~!」

「?」

 ダグはよく分からない唸り声を出す。

「やっぱりカッコいい! 俺、冒険者に憧れてたんだ! まさか本当にこうやって見られるなんて思わなかった!」

「そ、そうか。」

「俺、将来絶対冒険者になる! その時は兄ちゃん達の徒党(パーティ)に入れてくれ!」

 ダグが握手の手を出す。

「・・・。」

 徒党(パーティ)、か・・・。

「おう、冒険者になれたらな!」

 握手に応える。

「兄ちゃんの名前は?」

「ウルドだ。」

「え、師匠はアルムグッ!?」

 余計な事を言おうとしたチビ助の口を塞ぐ。

「その子どうしたの?」

「何でもない! まぁ頑張れ!」

「モガガ!」

 こいつが余計な事を言わないうちに村を出るために口を塞いだまま歩き出す。

「? うん、また来てね!ウルドの兄ちゃん!」

 ダグは手を振って俺達を送り出してくれた。



ーーー次の町に向かう道中。


「師匠! 何するのですか!」

「お前が余計な事を言うからだ!」

 俺とチビ助は口喧嘩をしており、ルタが冷めた目でそれを見て笑っていた。

「師匠の名前はアルトでしょう!」

「だからアルトじゃねっつの!俺の名前はウルドだ!」

「なんで偽名なんか使ってるのです!」

「それは・・・いや、そもそも偽名じゃねっつの!」

「なんで今言葉が詰まったのですか!? やっぱり師匠は

「だーから違うっての! それと、もう村を出たから兄妹ごっこはおしまい! これでお別れだ!」

「えぇ!?」

 チビ助は何故か驚く。

「当たり前だろ。そもそも俺はアルトじゃねぇし、お前の師匠になってやるつもりはねぇよ。」

「なんでそんなに師匠になるのイヤなのですか! 私が未熟だからなのですか!?」

「違ぇよ! 寧ろお前は筋が良いくらいだ。」

「え!?」

 褒めると分かりやすく顔がニヤけるチビ助。

「具体的にどんなとこ?」

 ルタは少し面白くなさそうに聞いてくる。

「まず装備だ。」

「装備?」

 ルタは首を傾げる。

「小振りの剣は攻撃にも防御にもバランスよく使えるから駆け出しには最適解だ。それに防具にしても、駆け出しの剣士(ソードマン)がよくやるミスもしてない。」

「よくやるミス?」

「鎧だ。」

「鎧?」

「駆け出しの冒険者は総じて筋力が弱いから一番軽い奴でも鎧を着れば大小あれ機動力が落ちるし、重さの分だけ上昇(ライズ)の負荷も馬鹿にならない。」

「え、でも鎧を着なかったら・・・。」

「『防御が心許ない』・・・だからこその()()だ。」

「!」

 チビ助の肩を掴んで軽く揺らすとチャリチャリと金属の擦れる音が聞こえる。

「やっぱりな。」

「師匠・・・!」

 襟がずれる程度に肩の布をずらすと首筋から小さな鎖を繋ぎ合わせたような防具が現れる。

「『鎖帷子(くさりかたびら)』だ。これなら斬撃程度なら致命傷を免れる事もあるし、機動力も損なわれない。魔法にしてもそうだ。」

「魔法?」

「俺との手合わせで最後に見せたあの魔法、『陣形魔法』だよな?」

「はい、そうなのです。」

「あれは中級の魔法、習得難易度は低いけど駆け出しなら魔術師(メイジ)でも使えるやつは少ない。魔法についてもよく勉強してる証拠だ。」

「し、師匠がそんなに私の事を評価してたなんて・・・というか、見込みがあるなら尚更・・・。」

「分からんのか? ()()()()()()()()()()()()()()()()って話だ。」

「教官? 教えてる人がいるって事?」

「・・・。」

 チビ助は暗い顔で目を反らす。

「お前、(おつむ)は弱いが何故か基本はしっかり出来てる、それは誰かに習ったからだ、違うか?」

(おつむ)弱いは余計なのです・・・。」

 チビ助はボソボソと呟くように言う。

「お前に此処まで叩き込めるそいつはかなり冒険者の知識もお前の能力(ポテンシャル)も分かってる、かなり腕の立つ良い教官だ。」

「・・・!」

「え?」

 チビ助は何故か表情が固まったまま目から涙を流す。

「お、おい! 俺、なんか変な事言ったか!?」

「違うのです・・・嬉しいのです・・・!」

「え?」

「剣は母に・・・魔法は父に習ったのです・・・!」

「両親に?」

「はい・・・父と母は私の故郷で一、二を争う冒険者で、私の自慢の親なのです・・・。」

「じゃあ、その親に習えば・・・。」

「出来ないのです。父と母は熱心に教えるあまりに母は剣を、父は魔法を極めさせようとして争い、別れてしまったのです・・・。」

「おぐっ・・・!」

 想像以上に話が深刻(ヘヴィ)だった・・・。

「でも話はそれだけじゃないのです・・・。」

「まだあんのかよ・・・!」

「父と母は今度は私の親権を争って今も冷戦状態なのです・・・だから私は堪らず故郷を出て・・・。」

「分かった! もういい!言うなそれ以上ッ!」

「師匠?」

「ちょっと待ってろ・・・!」

 近くの木に寄りかかるように手を突き、気分を落ち着かせる。

 てっきりもっと下らない理由だと思っていた。

 冒険者になる奴は大抵カッコいいからだとか名を上げたいとかの目立ちたがり(ナルシスト)が多い。

 コイツもてっきりちょっと才能があるからってイキって前の師匠と喧嘩別れでもして来た奴だとばかり考えていた。

 でも考えたらそうだ。

 英雄なんて相手に教えを乞う為に態々(わざわざ)旅をしながら探し回るなんて此処まで切羽詰まってなきゃ出来る事じゃない。

 教えを乞う相手なんて誰だって手近な所で済ませようとするはずだ。

「オーケー、話を戻そうか。」

 チビ助の元に戻って立て直す。

「それでお前は、剣と魔法を両方極めたいと?」

「はい! 剣と魔法を両方極めて故郷に帰ればきっと、父と母はもう喧嘩なんてやめてまた一つの家族になれるのです!そして私はそれを機に新たな冒険者の職業(ジョブ)魔法剣士(マジックナイト)を設立するのです!それが私の夢なのです!」

魔法剣士(マジックナイト)か・・・まさに夢物語だな。」

「師匠が言うのですか!?」

「は?」

「剣も魔法も両方使えるのに・・・。」

「だからそれはお前の勘違いだ!俺は両方使えな

「フンッ!」

「いっ!?」

 チビ助が手を伸ばす先を見切って俺は左手を遠ざけながら右手でチビ助の頭を鷲掴みにする。

「な・に・し・や・が・るッ!!」

「シラを切っても無駄なのですッ!その指輪を取ればぅぎぎ・・・!」

 またこの流れかッ!

 チキショーこうなったら!

「あ! 白衣の変態が!」

「ヒィ!?」

 チビ助が指差した方向にビビった隙にまたルタに指示を出して一緒に逃げる。

「あ! また騙しましたね!?」

「俺は弟子なんか取らんッ!」

「だからお兄ちゃん、逃げながら言う台詞じゃ・・・。」

「うるせぇ!」

「甘いのです!」

 チビ助は追い越して俺達の前に回り込む。

 上昇(ライズ)を使ってるから当然か。

「私から逃げ切ろうなんて

「おいなんか気持ち悪い笑い声聞こえないか?『ふひひ』って・・・。」

「え・・・?」

 聞いた途端チビ助は青ざめる。

「あ! 後ろッ!」

「ヒィ!?」

 またチビ助が後ろを見てビビった隙に逃げる。

「あ! 師匠ッ! おのれぇ!!」

 また追いかけてチビ助は回り込む。

「ふははは! 何度逃げようと私からは決して

(以下略)



ーーー数分後。


「あ゛あ゛ぁッ! 痛いッ! 痛いのですぅッ!!」

 同じやり取りをして数回目、チビ助は俺達の前に回り込んだはいいが、倒れて足を抱えて泣き喚いていた。

 言わずもがな上昇(ライズ)の限界だ。

「懲りねぇなぁお前・・・。」

「おのれぇ師匠ッ! これが狙いだったのですね!? なんて姑息な・・・!」

「お前が馬鹿すぎるだけだろッ! 何べん同じ手に引っ掛かってんだよ!」

「ぷぷぷ・・・!」

 流石にこの間抜けすぎるチビ助にルタも笑いを堪えている。

「笑うなです貧乳女!」

「あ゛!?」

 またルタがヤバイ顔になる。

「おいキレんなルタ!」

 俺の制止も聞かず食ってかかるかと思ったが・・・。

「・・・はん。」

「?」

 何故かすぐに鬼の形相が解けて鼻で笑い出す。

「こんな無様な姿で言われても負け犬、いや負け仔犬の遠吠えだよね! 行こう、お兄ちゃん♪」

「誰が仔犬ですかこの洗濯板!」

「はっやっくっ行こう? ね? お・に・い・ちゃんッ!?」

「痛い痛いッ! ルタ、ちょ、力入りすぎッ!!」

 早く置いていきたいのだろう。

 満面の笑みで俺の腕を取るルタの手は恐ろしい握力で握られている。

「また置いてく気ですか!?」

「・・・。」

「ッ!? お兄ちゃん!?」

 ルタの手を振り払うと、チビ助の元へ行き、背負って歩き出す。

「師匠・・・?」

 チビ助は目を丸くしている。

「勘違いすんな、この間みたいに山賊に襲われたらもう助けられないからな。」

「正気!? 今此処で逃げとかないとずっと追いかけてくるよこいつ!」

 珍しくルタが慌てて俺に食って掛かる。

「大丈夫だって、こいつ目的さえ果たせれば帰るんだろ?」

「師匠?それって・・・!」

 チビ助は満面の笑みで目をキラキラさせる。

「バーカ、師匠にはならねぇよ。」

「へ?」

 チビ助の表情が固まる。

「お前の師匠になれそうな奴探すくらいだったら旅のついでにしてやるってことだ。」

「連れてく気!?」

「放っといてもどうせ勝手に追いかけて来るんだ、だったらさっさと目的果たさせた方が良いだろ?」

「えぇ~やだぁ。」

「我が儘言うな。てかお前単にコイツが嫌いなだけだろ。」

「うん!」

 満面の笑みで答えるルタ。

「大変素直でよろしい、最低だなお前。」

「ドSなお兄ちゃんには言われたくなーい!」

「Sじゃねっつの! つか関係ねぇだろ!」

「Sってなんですか? 師匠?」

「お前は知らなくていいッ!」

「ぷぷぷ、まだまだお子ちゃまね♪」

「お子ちゃまって言いやがったですかッ! このペチャパ

「やめろっつのッ!」

 また喧嘩をしそうな状態だったので早急に制止をかける。

「・・・まぁあれだ、よろしく頼む。えぇと・・・。」

 そう言えば今の今まで名前聞いてなかったな。

「メロなのです。」

「よろしくな、メロ。」

 おぶられて捕まっている手を握手するように握る。

「・・・でも、やっぱり納得出来ないのです。」

「何が?」

「私は師匠に習いたいのです。」

 メロは拗ねる様に視線を反らし、それを見た俺はどうしようもなく溜め息をついた。



~??? ロキウス 王立研究室~


「デイヴ。」

「ハイ!」

「たった今してきた報告を纏めるぞ?」

「はひ!」

 目の前の不細工な部下はその豚のような体型には似合わないほどの軍人の様な伸びきった立ち姿勢で私の前に立っている。

「プロテアにいる取引先に研究材料を貰いにいくためにデミオの街に行っていた。」

「はひ!」

「目的地に向かう途中、奴隷商人に偶然会って話を聞き、奴隷に興味が湧いて買いに行った。しかしその奴隷商人が冒険者に捕まり、自身も捕まりそうになったから逃走し逃げ帰ってきた。」

「は、はひ!」

 デイヴは汗をだらだらかき始める。

 元々汗っかきだがそんな汗ではないだろう。

「結果、取引先に会うこともなく手ぶらで戻ってきた・・・そうだな?」

「はひ・・・!」

 デイヴの汗の量が尋常じゃない量にかわり、顔も真っ青に変わっていく。

「・・・。」

 私は無言で立ち上がり、部下の近くまで歩み寄る。

「ぶふぅ!?」

 デイヴが呻き声を上げた時、振り上げた私の足が左頬にめり込んでいた。

 だがそれだけでは終わらない。

 デイヴがよろけた隙に靴のヒールを先程蹴った左頬に引っ掛け、そのまま振り下ろす。

 結果、奴は地面に寝そべり、私に左頬をヒールの靴で踏みつけられた状態になる。

「お前の名前を言ってみろ。」

 ヒールをぐりぐりさせながら部下の名前を聞く。

「デ、デイヴ=アデルバース・・・でござる。」

 デイヴは必死に答える。

「デイヴ? 違うだろ?」

「ぶひぃ!?」

 尚もヒールをぐりぐりさせる。

「ち・が・う・だ・ろ?」

「ぶふぅ!」

 ぐりぐりしたあと左頬からヒールを放すと今度は側頭部をおもいっきり踏みつける。

「『デブ』だろ? デェブッ! 無能な奴にお似合いの名だ。違うか?」

「は、はひ! その通りッ!」

「自分がなんでこんな目にあってるか分かるかデブ?」

「取引先に会えなかったかr

「違うッ!」

「ぶぎぃッ!」

 側頭部をガツンと踏みつける。



「お前が貴重な実験体(モルモット)を手に入れる好機(チャンス)を逃したからだッ!」



 ヒールで押さえつけながら怒鳴る。

「私の名を言ってみろ。」

「ラ、ラベスタ氏・・・!」

「違うッ!」

「ぶぎぃッ!」

 また左頬を踏みつける。

「ロキウス王立技術研究室室長、ラベスタ=サディアス様だッ!」

「は、ハイぃッ!」

「その部下に無能は存在せんッ! 消されたくなかったら馬車馬の様に働けッ! 分かったかッ!」

「バイィ!」

「フン。」

 デブからヒールを放す。

「取り合えずお前あとで()()()()な?」

「お、お仕置き・・・ふひ、ふひひ!」

「フン。」

 お仕置きとご褒美を勘違いする部下を尻目に部屋をあとにする。

 暫く廊下を歩き、目的の部屋まで行くとカードキーを通す。

承認(Agree)

 声が聞こえると何重にもしていた機械の扉が横にも縦にも開いて道を開ける。

 その道を歩くと薄暗く大きな部屋に出る。



「待たせたな! 愛しい我が子達よ☆」



 私は愛しの対象に向かって胸を張って両手を広げる。

 目の前には培養液で満たされ、装置に繋がれた巨大なカプセルが何台も並んでいた。

 その中には・・・。

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