表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
嘘つき英雄と嘘の妹 ~旧版~  作者: 野良犬タロ
道中編
14/101

#14 危ない男


~少女 山賊アジト~


「くっ・・・放せですこの変態!」

 暗い洞窟の中を山賊の肩に担がれながら運ばれている。

「あぁ? お前みたいなガキ、運んだくらいで変態になるかっつの!」

「またガキって言いやがったですねこのッ!」

 暴れて山賊に蹴りや頭突きを喰らわせるが振りきれない。

「痛てッ! おとなしくしろ!」

「このッ! このッ!」

「ちっ!こうなったら!」

「ひぎっ!?」

 足に何かを刺される。

 短剣(ナイフ)の様な・・・ってあれ?

「痛くない・・・ていうかアレ・・・?」

 足が動かないのです・・・!

「痺れ毒の短剣(ナイフ)だ。本来はお前が飼い主から逃げないようにするために用意してたんだがな。まぁ、今使っても一緒だよな。」

「くそぉ・・・!」

 マズイのです。

 女を奴隷として買う奴なんて絶対ろくな奴じゃないのです。

 このままじゃ健全な本に載せられないようなあんな事やこんな事を・・・!

「おお、着きましたよ!」

 ローブを纏った怪しい男がテーブルから立ち上がって向かいの男に報告する。

「フム、来ましたか。」

 座っていた買い手らしき男。

 白衣を纏って眼鏡をかけており、ボサボサの黒い髪で少々小太り、顔は少々、いやかなりブサイクなのです!

「おら!」

「痛ッ!」

 部屋に入るや否や買い手の男の前に乱暴に降ろされ、尻餅をつく。

「こらこら、大事な商品ですよ?お客様の前でこんな・・・。」

「へいへいすいやせんね。」

 商人らしきローブ男に叱られて山賊は面倒くさそうに謝罪する。

「フムフム、これはこれは・・・。」

「ひっ!」

 白衣の男がテーブルを立つと私のもとへ歩いてきて目の前でしゃがみ、観察するように覗きこむ、って言うか舐め回すように全身を見てくる。

「実に・・・これは・・・。」

「?」



「拙者的神ロリ愛玩(ペット)キタアアアァァァ!!」



 男は急に立ち上がって力強く仰け反って変なガッツポーズを決める。

「ひぃッ!」

 男はその脂ぎった顔で私の頬に頬擦りする。

「デュフフフ、このぷにぷにな肌、やはりロリっ子は最高ですぞぉ! そしてこの装い、冒険者ですな!? いいですぞ! レアですぞ! ロリっ子冒険者! 滅多に手に入らないレア物ですぞ! この短パンで見える太股も拙者的にはポイント高いでござる!」

「ぎやああああぁぁぁぁこいつ気持ち悪いのですうううぅッ!!」

「ほうほう、『ですっ娘』とな?ロリっ子で更にですっ娘とはどこまで拙者の弱点(ウィークポイント)を突いてくるのですかな汝ぃ!」

「いやああああぁぁぁッ!」

「ぶひッ!?」

 痺れナイフで痺れていない上半身を必死に動かして男に頭突きして突き飛ばす。

「こらッ! お客様に何をするのだ!」

「っ!」

 ローブ男が怒って私の頬を引っ叩いたあと白衣の男に歩み寄る。

「すみませんねぇお客様! 何分(なにぶん)捕獲したてでまだ反抗的なものでして!」

「フム、なるほどなるほど。」

「もしご不満したら、うちの方で少し仕込んでからお渡しするという形で・・・!」

「仕込むって何をですかッ!」

「決まっているだろう!自分の立場を弁えさせる為に教育してやるのだ! 痛みとその他諸々でな!」

「何なのですかッ! ()()()()()ってッ!!」

()()()()()()()()()()だ! まぁ今に分かるさ。」

「絶対ヤバイことする気なのですッ!」

「いや結構。」

 白衣の男はローブ男に待ったとばかりに手を翳す。

「お客様?」

「拙者はこの娘の主人となるのでござる。であれば拙者がそれ相応の威厳を見せるべきでござろう。」

「ほう、それはそれは・・・。」

「?」

 白衣の男は私の前に立つ。

 その顔は何故か真面目な真顔だ。

「えっと・・・。」

「・・・。」

「?」

 男は私の肩に手を乗せる。

「あの・・・。」

「まずは・・・。」

「まずは?」



「さっきの罰として全身prpr(ペロペロ)の刑ですぞおおぉぉ!!」



 男は四つん這いで這い寄ってくる。

「嫌ああああぁぁぁッ!!」

 少しはマシかもと思った私が馬鹿だったです!

 結局こいつただの変態なのですッ!

「まずはこの眩しい太股から・・・!」

「ひいぃッ!」

 足が動かないなりに芋虫の様に這って逃げる。

 けど部屋は狭く、すぐに隅に追い込まれる。

「ふひ、ふひひ! 鬼ごっこは終わりでござるか? ぶひひひひ!」

 男は鼻息を荒くして這い寄ってくる。

「ぎゃああああぁぁぁッ!」

 このままだと・・・!



「アウトだ馬鹿野郎オオオォッ!!」



「ぶふぇうッ!?」

 誰かが白衣の男を飛び蹴りで吹き飛ばす。

「あ・・・!」

 私を助けてくれたその人は・・・!

「師匠ッ!!」

「だから師匠じゃねっつの! ハァ・・・まさかと思ったけどやっぱ捕まってたかこの間抜け!」

 師匠は呆れて溜め息をつく。

「し、師匠のせいなのです! あの時動けない私を置いて逃げるから!」

「いや半分以上お前の自業自得だから・・・。」

「!」

 師匠の後ろから山賊が鉈を振りかぶっていた。

「師匠ッ!」

「あー分かってる、よッ!」

 師匠は後ろからだと言うのに難なく避わして山賊の頭を掴む。

「げぎゃっ!」

「ひぃッ!」

 山賊はそのまま私の頭上の少し上の岩壁に顔を殴り付けられると腕をだらんとさせ、師匠が手を離すとそのまま力なく地面に倒れる。

「で? あとはお前だけだな、悪徳商人。」

「くぅ・・・!」

「奴隷商なんて趣味悪いんじゃねぇか? 大方山賊に人拐いさせてんのもお前の差し金だろ。」

「ははは! 私をこの程度で追い詰めたつもりか!」

「あ?」

 奴隷商は部屋の隅にある紐を繰返し引く。

 すると天井に一本のロープで吊るしてあった無数の小さな木の棒が上下左右に揺らされて互いにぶつかり、ガラガラと派手に音を立て始める。

「この音を聞けば見回りの山賊達が駆けつける! お前はもう袋の鼠だ! はーっはっは!」

「あー・・・。」

「?」

 奴隷商の男が意気がって笑っているのに師匠はなんだか微妙な顔で頭を掻き始める。

「・・・え?」

 男は手を止める。

 音が暫く鳴ったのに誰も来ないからだ。

「なんつーか・・・すまん。」

 師匠は何故か奴隷商に謝る。

「何が言いたい!」

「あんたが期待してるお仲間さんたちなぁ・・・多分、全員牢屋(お前の商品庫)だわ。伸して纏めてぶち込んどいた。」

「馬鹿な! このアジトには『首狩りのネク』と『足狩りのフト』が・・・!」

「あー、あの双子のチビ助? コッスい奇襲掛けてきたけどそれだけだったな。」

「何ぃ!?」

「他はただの雑魚だったな。ザル警備で奇襲し放題だったし、まともにやっても勝てそうだったしな。」

「くっ・・・だが笑って居られるのも今のうちだ! このアジトのボス、ディラガが今頃戻って

「いや、先にディラガ潰して村人に頼まれて此処に来たんだよ。村娘達が拐われたーって。」

「なっ・・・!あが・・・!」

 奴隷商は最早何も言えず、その場に崩れる。

「分かる? もうお前終わりなの。」

「ブツブツ・・・。」

「?」

 奴隷商が何やらブツブツ言っている。

「・・・(カーン) 放出(ホレッシ)

「・・・! 師匠ッ! そいつ魔法をッ!」

 奴隷商はにやりとして小振りの杖を懐から抜き取る。

 既に魔力を纏って魔法を撃てる状態だ。

雷の(サンダーボ)

「魔封じパンチッ!」

「ボグェッ!?」

 師匠は奴隷商の口を拳で塞いでそのまま殴り抜く。

 奴隷商は近くの壁に頭をぶつけ、白目を向いて倒れた。

「・・・相手は死ぬ。」

「いや、気絶させただけなのです・・・。」

「うるせ。」

 師匠は悪態を突きつつこっちに歩いてくる。

「・・・。」

「師匠?」

 黙って胡座を描いて座る。

 あ、これってもしかしてまた小言を言われる流れなのですか?

 うぅ、こうなったのもそもそも師匠が・・・!

「すまん。」

「え?」

 師匠は両手を地面に着けて深く頭を下げてきた。

「し、師匠!?」

「こうなったのも半分は俺のせいだ。俺にも否はある。すまなかった。」

「え、あの・・・その・・・!」

 うまく言葉が出ない。

 確かに師匠は私を置いて逃げた。

 そのせいで私は山賊に捕まって散々悔しい思いをした。

 でも、だからってこんな風に素直に謝られると調子が狂うのです。

「・・・!」

 師匠は顔を上げると私の頭に手を置く。

「師匠にはならないけど、村まで送る。」

「・・・いのです。」

「ん?なんだ?」

「私・・・絶対諦めないのです・・・師匠に認めて貰うまで・・・!」

 悔しくて涙が出そうだけど堪えた。

 あの時から・・・。

 ()()()()()()()()から泣かないって決めてるから・・・!

「そんな事言ってもなぁ・・・ん?なんだ?」

「?」

 師匠の様子がおかしい。

 右手の腕輪を見始める。

「はぁ!?」

「え、え?」

 師匠は何故か驚いて私から見て右の方角を向く。

「うわマジだ! あの野郎!」

「え?」

 師匠と同じ方角を向く。

「あ!」

 そう言えばそっちの方角にはあの気持ち悪い白衣の男がいたのに、何故かいないのです!

「くそ、早く言えっての・・・うるせぇ!」

「師匠、さっきから誰と話してるのです?」

「え、あ、いや・・・それよりお前は此処にいろ。」

「え、師匠!?」

 師匠は突然走り出す。

「師匠!!」

「すぐ戻る!」

 そう言って足も止めずに洞窟の奥に消えていく。

「・・・師匠ッ!!」

 また置いて行きやがったのです・・・!



~ウルド 山賊アジト~


『ルタ、この先でいいんだな!?』

『うん、太ってて足遅いから追いつけそうだね♪』

 ルタの道案内を頼りに洞窟を走る。

 さっきの話を要約するとだ。

 白衣の男がお兄ちゃんがチビ助にいい話を始めた辺りから目を覚まして逃げちゃった~

 お兄ちゃんがいい話してるの邪魔しちゃ悪いから言わなかったの~

 って感じだ。

『ったく、あんな奴逃がしたらヤベェだろ!色んな意味で!』

『うん・・・詳しくは言えないけど、うん。』

『皆まで言うな! 分かってるッ!』

『もうすぐ追いつくよ!』

『よし・・・こっちでも確認出来た!』

 奴の魔力を感知すると、曲がり道を曲がった辺りから奴の姿を捉えた。

「待てこの変態!!」

「うひっ!?」

 奴は此方を見て必死に逃げるが遅い。

 もうすぐ追い付けるところで手を伸ばす。

 奴の白衣の裾を今にも掴みそうな瞬間・・・。

「ッ!?」

 掴もうとした白衣が離れる。

「何!?」

『急に速くなった!?』

 奴の足が急に速くなり、どんどん引き離される。

『嘘だろ!? あいつ、上昇(ライズ)使えるのか!?』

『いやいや、無いでしょ! どう考えてもそんな修業してるようには見えないよ!?』

『だ、だよな!』

 奴との距離はどんどん離れ・・・。

『くっそぉ・・・! 俺の魔力感知の範囲外に逃げられた!』

『反応が離れてく・・・このままだと私の感知範囲からも逃げられちゃう!』

「くそったれぇッ!!」

 こうなったら指輪を・・・いや、それは・・・!

『・・・! お兄ちゃん! 魔力の動きが止まった!』

『何! どう言うことだ!?』

『疲れちゃったのかな?』

『分からん、けどとにかく好機(チャンス)だ!一気に追いつくぞ!』

 すぐに距離が詰まり、また俺の方でも魔力感知出来るようになると奴の姿が見える。

『ハッ・・・そう言うことか、馬鹿な奴!』

 奴は丁度洞窟の出口に居たがその出口は崖の上だった。

 行き止まり、つまりは試合終了(ゲームセット)だ。

「よぉ、鬼ごっこは終わりみたいだな!」

 俺はにじり寄るように一歩一歩近づく。

「ぶふ、ふひひ・・・!」

「?」

 奴は此方を向くと何故か笑う。

『ッ! お兄ちゃん! すぐ捕まえて!』

「え!?」

『早くッ! 逃げられちゃうッ!』

「お、おう!」

 よく分からないが奴に突っ込んでいく。

「ぶふぅ!」

 奴は何かを押すように胸を人差し指で押す。

「!?」

 奴の背中から機械の様な羽が拡がる。

「なんだ!?」

「ふひひ・・・!」

 奴は崖の方角を向く。

 まさか、あれで空でも飛ぶ気か!?

『マズいッ! お兄ちゃんッ!』

「逃がすかあぁッ!」

 奴に手を伸ばす。

「うあッ!」

 奴の羽の先の噴射口の様な部分から爆風の様に炎が噴射される。

 その熱気に思わず怯んでしまう。

 これが決定打となって奴を逃がしてしまう。

 噴射の勢いで奴はそのまま空に飛び立った。

「・・・くそっ! なんなんだアレ!」

『科学の国『ロキウス』の技術だね、きっと・・・。』

「あー、あそこかぁ・・・。」

 魔王を倒すために色々国を巡った都合上知っている。

 確か機械や薬品で魔法とは違う独自の技術を持った国だったっけ。

 表向きはそれで人々の生活を豊かにしているようだが裏では色々エグい実験やってるヤバい国だ。

「・・・あいつ、あのまま売られてたらヤバかったな。」

 夜空の下、俺は崖の上から奴が逃げ去った方角を見て呟いた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ