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005.全く身に覚えがないんですけど。

 私は念のためスープを鑑定して毒物が混入されていないことを確かめてからステヴィアさんに才能タレントを調べた結果を告げる。


「ステヴィアさんの推測通りでした。私の才能タレントが原因で固形物を受け付けない身体になってたみたいですね。でも説明を見る限り固形物でなければ問題ないようなので大丈夫そうです」


「しかし、固形物を何も口に出来ないとなると空腹感は余り拭えないのではないですか。何か他に条件などはありますか?」


 確かに汁物だけ口にしてたらお腹がちゃぽちゃぽしそうだ。


「でも、この才能タレントって固形物を口に出来なくなるけど餓死はしなくなるみたいなので最悪は何も食べなくても」


 と言った辺りでステヴィアさんにじっと見据えられて言葉を切る。


「アン、私はそれを許容する気はありませんよ。他に何か隠していることがあるのではありませんか?」


 今まで散々顔に出てたんだし、やっぱりバレるよね。


 この世界での吸血に対する印象とか予想も出来ないから正直判断に困るよ。


 才能タレントとして存在してるから他に吸血を開花させてる人は居たりするんだろうけどさ。


「アンは説明をぼかしていますが、それは何という才能タレントなのですか」


 適当なこと言っても簡単にバレそうだし、言い逃れするのは無理そうだね。


 私は観念して才能タレント名を明かす。


「吸血っていう才能タレントで、生き血を吸って相手から生命力を奪う能力ちからみたいなんですけど……」


「生命力に関する記述はありますか?」


 ステヴィアさんは吸血に対して忌避感を見せることなく、そんなことを聞いて来た。


「生命力ですか。ちょっと待ってください。すぐ調べます」


 私は【生命力】の項目を指先で触れ、詳細を表示させる。


【生命力】

・寿命を決定付ける数値。

・数値が0になった場合、肉体が健在であっても死亡する。


 そこまで確かめ、ふと疑問が浮かぶ。


 【生命力】はステータスの項目のひとつとして表示されているのにステヴィアさんはまるで全く知らないものかのように話していたことに違和感を覚えた。


「ステヴィアさん、ステータスのことに関してなんですけどひとつ質問いいですか?」


「どうぞ」


「もしかしてなんですけどステータスに【生命力】って項目はないんですか」


「えぇ、そういったものはありませんね。現に私のステータスも上から順に【名称】【レベル】【属性】【筋力】【耐久】【敏捷】【技巧】【魔力】【抵抗】【才能(タレント)】【技能(スキル)】【魔法】【所持金】となってますから。私を鑑定していただければ、それはわかると思いますよ」


 暗に鑑定してみるよう勧められたので私はステヴィアさんを鑑定する。


【名 称】ステヴィア

【レベル】107

【属 性】金

【筋 力】★★★★☆☆☆

【耐 久】★★★☆☆☆☆

【敏 捷】★★★★★☆☆

【技 巧】★★★★☆☆☆

【魔 力】★★★☆☆☆☆

【抵 抗】★★★★☆☆☆

才 能(タレント)】『不死』

技 能(スキル)】『変化』『裁縫』『料理』『調合』『格闘』『投擲』▶︎

【魔 法】『錬成』『障壁』

【生命力】27667

【所持金】141421356


 ステヴィアさんの話とは違って生命力の項目はきちんとステータスに存在していた。


「あの、ステヴィアさん。【魔法】と【所持金】の間に【生命力】って項目があるんですが」


 私の発言を聞いたステヴィアさんは、すぐにステータス画面を出して確認すると眉根を寄せて少しの間なにやら考え込んでいた。


「私のステータス上ではアンの示した箇所は空白になってますね。おそらく【生命力】に関する特定の才能タレント技能スキルを所持している者にしか視認出来ないのでしょう。それでどういったことを示す項目なのでしょうか?」


 残り寿命が数値化されてるなんていう死の宣告みたいな内容だから条件が設定されてるのかな。


「えっとどうも残り寿命を数値化したものみたいです」


「寿命ですか。でしたらどうにか問題を解決出来るかも知れませんね」


「どういうことですか?」


「アンは私のステータスを見てわかっていると思いますが、私には『不死』の才能タレントがあります。ですから寿命の存在しない私の血液をアンの食事とすればよいのです」


 そんなステヴィアさんの主張を耳にした私は思わず彼女の首筋に齧り付く自分の姿を想像し、慌てて首を横にふって脳裏に浮かんだ映像を振り払った。


「ステヴィアさんにそこまでしていただかなくても固形物でなければ食事自体は出来ますからきっと大丈夫ですよ」


「いえ、才能タレントにデメリットが存在する場合、鑑定の内容には記述されていない厄介な条件が付けられている可能性が高いです。アンの開花した吸血の場合は食事を血液だけに限定していなかったり、餓死しないよう措置が取られているのなら血液を口にした場合のみ少量で空腹感が満たされるような条件が存在しているとみて間違いないです」


「さすがに考え過ぎなんじゃ」


 ステヴィアさんは私の楽観した考えを否定するように首を横にふった。


「デメリットの存在する才能タレントは他人に忌避されるように創られてるんです。これは前世での悪行を改めるのかを試すように創造神様が課した罰だと言い伝えられているんです」


 待って、前世での悪行とか言われても私は犬にお尻を噛まれて死んだだけなんだけど。


 もしかして親より子が先に死んじゃったのが罰とかそんな感じのやつかな。


 でも、さすがにそれが原因で吸血鬼にされるのはなんか違う気がする。


「えっとですね。ステヴィアさん、私そんな悪いことしたような覚えがないんですけど」


「それは重々承知しています」


 予想外にも即答されて私が悪事を働くような人間だと思われてなくて少し嬉しく思ったけれど、それと同時にステヴィアさんの苦々しげな表情から何か心当たりがあったりするのかも知れないと察する。


「悪行を働いていたのはアンではなく、先代のアンジェリカ様ですから」


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