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048.ついにご対面です。

 探査蝙蝠消失地点までの数㎞を私達は足早に進む。


 方角はわかっているし、なにより『反響定位』で知覚していた現地の情報では何もなかったこともあって再度探査蝙蝠を飛ばしはしなかった。


 飛ばしたところでまた消失しちゃうだけだろうしね。




 やがて到着した場所には樹々よりも高い体躯を持つ巨大な爬虫類が待ち構えていた。


 ちいさいころに図鑑で目にした恐竜と似ているけれど、その背には蝙蝠のような翼があり、お姫様や王子様が出てくる絵本に描かれてるような悪い竜と言った方がしっくりとくる姿をしていた。


「あれって竜ですよね?」


 竜の数十m手前で足を止め、その巨躯を見上げながらステヴィアさんに尋ねる。


「えぇ、間違いありません」


「もっと攻撃的な生き物を想像してたんですけど、随分と落ち着いてますね」


 どういうわけか竜は私達に一切の興味も見せず、ただただ座り込んでいるだけなのである。


 ただ気になるのは、竜がいつどうやってこの場に現れたのかということだった。


 探査蝙蝠で事前に取得していた情報ではここには何もなかったはずなのである。


 『反響定位』は技能スキルであって魔法ではないので古代文明と関わりのあるところでも能力ちからを発揮するものだと思っていたんだけど、違うんだろうか?


 そう思った私は竜を目の前にした状態で『反響定位』を機能させ、周辺の音を知覚してみる。


 すると技能スキル自体は発動した。


 ただし竜だけは何故か知覚されない。


 私の『反響定位』では竜を除いた情報だけが知覚されていたのである。


「これなら横を素通りしてっても大丈夫そうじゃねぇか?」


「無理だと思いますよ。彼らはこの先に行かせたくないようですから」


「あたしの『直感』は特に危険を訴えてはいないんだが」


 クミンさんの言葉に私は私の技能スキル反応してなかった可能性を伝える必要があると感じ、踏み出そうとした彼女に待ったをかけた。


「あの竜に対して私の探知系の技能スキルが効果を発揮してないみたいなのでやめておいた方がいいかもしれないです」


技能スキルが?」


「なんでか竜だけ反応しないんですよね。まるでここには何も居ないみたいに」


 それを聞いたクミンさんは数秒ほど考えた後に一歩踏み出す。


「ここは迂回した方がいいんだろうが。ちょいと気になることがあるんで、お前さんらはちょいとここで待ってて貰えるか」


 それだけ言い残すとずんずんとクミンさんは竜に向かって真っ直ぐに歩み寄って行く。


 その際、何かあったとき即座に対処するためにか自身に『宿火』を施して身体能力を強化させていた。


 対する竜はというと私達などまるで眼中にはなく、どこか遠くを見据えている。


 すぐ目の前までクミンさんが近付いても身動ぎさえすることもなく、さらには直接手で触れても反応を見せることはなかった。


 それだけ無関心を貫いていた竜だけれど、クミンさんが竜の脇を通って向こう側へと進もうとした途端に威圧するように吼えると同時に前脚を振るう。


 クミンさんは咄嗟に翼を大きく一度羽ばたかせながら後方に跳躍すると竜はそれ以上追撃してくることはなかった。


 ひと通り調べ終わったのか、攻撃されることは絶対にないと確信しているかのように何の躊躇いもなく竜に背を向けてこちらへと戻って来る。


 戻って来たクミンさんが開口一番に発したのは「こりゃ、迂回しても無駄だな」との一言だった。


「どういうことです?」


「いやな、そちらさんの話じゃ竜はどこにでも現れるって話だっただろ。その話聞いたときによ、どこで監視してやがって何体でこの辺りの土地を囲んでいやがるんだって感じだったんだが。ようやくその理由がよくわかった。ありゃ、身体のデケェ特別な魔物でも生き物でもねぇ。ありゃ、魔法だな」


「魔法? 竜がですか?」


「あぁ、理由はわかんねぇが、あれを用意したやつはこの土地に対してひとの行き来をさせたくなかったみてぇだな。まぁ、その辺はダンジョンだって考えるとそれほど妙でもないかもしれねぇがな」


 その説明なら確かにいきなりここに竜が現れても不思議じゃない。


 『反響定位』に反応しなかったのも魔法に対しては音が反射しなかったからとかそういう理由なのかな。


「というかだな、これに関しちゃ以前からそちらさんは知ってたんじゃねぇのか。魔物の生態に詳しいはずのあんたが、あの竜が生き物ですらねぇと気付かねぇはずがねぇだろうしよ」


 語気を強めて発せられたクミンさんの言葉をぶつけられたステヴィアさんは眉根を寄せ、深いため息を吐いた。


 そして竜に関する情報を伏せていた事実を認めるよう「えぇ、知っていました」と短く応じた。


 私に竜のことを説明してくれたときステヴィアさんはなんと言っていただろう?


 1ヶ月くらい前に一度だけ聞かされた内容だけにはっきりとは思い出せない。


 それをどうにか思い出そうとしているとステヴィアさんは、言葉を噛みしめるようにつぶやく。


「知らないはずがありません。あれはアンジェリカ様がこの地を外部との接触を断ち切るために遺されたものなのですから」


 告げられたのは私と関わりがないとも言い切れない竜に関する重大な事実だった。

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