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045.予感に反することもある?

 話が一区切り付き、私は簡易建物を据え置ける場所を探して探査蝙蝠を飛ばす。


 数分の探索でちょうどよい空き地を発見し、クミンさんを誘導した。


 本日の宿泊地として設置された簡易建物に入り、荷物を下ろす。


「さすがにこの広さでふたりはキツいな。かといって雨でグズグズになった地面の上に今からテント張んのもな」


「なんかすいません」


「あたしが招いた事態なんだからお前さんが謝んのは筋違いだろ」


「そうなんですけど、先に謝っておかないといけないことがあるので」


「んあ?」


 私は自分が下ろした荷物の方に視線を向けるとクミンさんが疑問符を浮かべながら私の視線を追ってそちらに目を向ける。


 その視線の先には揺れがなくなったことで安全が確保されたことを察したらしいロディが卵の上から飛び降りて食事を始めようとしているところだった。


 自分の寝床を食い荒らす魔物の雛を目にしてクミンさんが怒り出すんじゃないかと思っていたけれど、反応は想像と全く違っていた。


「もしかしてこいつにこの寝床食い荒られちまうかも知れねえってこと気にしてたのか」


「えぇ、まぁ、まだ雛ですけど一応は魔物ですし」


「んあー、こっちじゃあんま飼うような習慣ねぇのかな。あたしの故郷っつってもダンジョンの方だが、普通にペットとして飼ってるやつは多かったぞ。家の弱ってる場所を見つけて食ってる節があってな、そいつが啄ばんだ跡を探ると簡単に建物の不具合が見つかるもんでよ。かなり重宝されてたぜ。それにあんまデカくもなんねぇしな、こいつら」


「そうなんですか?」


「あぁ、喰った分だけデカくはなるが元が少食だしな。何百年も生きてりゃそこそこデカくなるかもしんねぇが。あたしがこれまで目にしたやつの中で一番デカいのでも手乗りサイズだったぞ」


 鶏くらいにはなるんじゃないかと思ってたけど雀くらいのサイズのままなのね。


「他にも飼ってた魔物とか居るんです?」


「いや、そいつみたいな例外を除いて大抵は狩猟対象でしかなかったな。やたらと攻撃的なやつばっかりだったしよ」

 

「この子は食べれなそうですもんね」


「鉱石を主食にしてる魔物と交配されてたやつ以外にゃあそうなっちまうな。そもそもちっさ過ぎて食い出が足りなそうだしな」


 話題が食に移行したことで、クミンさんの神罰が想起される。


 走り通して食事が摂れずにクミンさんが神罰に当てられてしまう頃合いなんじゃと気になった。


「そういえばクミンさん、食事は大丈夫なんです」


「問題ねぇよ。走りながら適当にその辺の雑草やら何やら食ってたしな。それよりお前さんの方はどうなんだ?」


 走りながら雨水でも飲んでれば余計な手間省けたかな?


 なんてくだらないとこを考えながら昨日の朝以降は何も口にしていなかったのだと気付く。


 余りにも空腹感を感じることがないし、今日は今日で朝から慌しかったこともあって仕方のない面もあったけれど、お腹が空いてないのなら別に問題ないのかも。


 それにクミンさんが自身のために確保してる飲み水をわけてもらうのも気がひけるからね。


「私も雨水を口にしてたので問題ないです」


 雑な誤魔化しで話題を切り上げる。


「そうかい。んじゃ、もう寝ますかね」


「ですね。おやすみなさい」


「はいよ、おやすみ」


 私は【道具箱アイテムボックス】からブランケットだけを取り出し、壁際に寄って硬い床の上に転がる。


 クミンさんは翼と角が寝るとき邪魔そうだけど、どうするんだろうかと目を向けると彼女はでっかいクッションに頭を埋めるようにして俯せになっていた。


 息苦しそうに見えるけれど、すっかり慣れているのかクミンさんはもう寝息を立てて眠り込んでいるようだった。


 私は暗闇の中でロディが卵の上に戻るのを感じ取り、ふたりの後を追うように眠りに就いた。




 翌朝、目を覚ますと隣ではクミンさんがクッションに顔を埋めたままでいた。


 この世界に来てからは目覚めるといつもひとりだったのでちょっと不思議だった。


 私は包まっていたブランケットを収納し、凝り固まった身体をほぐそうと簡易建物の外に出る。


 澄んだ空気を肺に満たしながら前世で小学生の夏休みにやっていた体操をうろ覚えながらひと通りこなす。


 いい感じに身体中に酸素が行き渡ったのか、すっかり目が覚めた。


 まだクミンさんが起きてくる気配がないので私は今日の進む方向を先に調べようと探査蝙蝠を飛ばそうとして、昨日どっちから来たのわからずに困ってしまった。


 仕方なく私は周辺の地形だけでも把握しようと四方八方に探査蝙蝠を飛ばす。


 なかなか起きてこないクミンさんを待ちながら探索していると数㎞先で『反響定位』にとある反応を知覚した。


 私は探査蝙蝠を利用した糸電話を繋ぎ、相手に呼びかける。


「ステヴィアさん」


 それなりに距離があるので返事が届くまで数秒の間が空く。


『無事だったようですね、アン』


「はい、おかげさまで」


『よろしければ、そちらまでの道案内お願いできますか?』


「わかりました。いますぐに」


 クミンさんの『直感』に反して早々と合流することになったけれど、別に問題ないよね?


 でも、なんて言うかクミンさんの『直感』が実際に未来を見てきたんじゃないかってレベルでいろいろと言い当ててたので少し引っ掛かりを覚えた。

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