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038.喜んでお引き受けします。

 スマホもどきを鑑定すると『映像保存』の効果が付与されていた。


 それはいいんだけど、これって別の映像を追加で保存出来るのかな?


 との疑問に答えを出すために探査蝙蝠と再接続して新規で映像を撮影しようとしたけれど、ついさっき保存した映像が繰り返し再生されるばかりで画面が切り替わらない。


 原因がわからなかったので、隣でスマホもどきの画面を食い入るように見つめていたステヴィアさんに尋ねる。


「ステヴィアさん。付与した魔法を上書きしたり、追加で付与したり、ってもしかして出来ないんですか?」


 そう質問したけれど、考えてみれば私の履いてる靴って初代のアンジェリカさんと2代目のアンジェリカさんのふたりが魔法を施してるんだから追加で付与出来そうなものだよね。


 なんて思ってたんだけど返って来た答えは予想と違っていた。


「基本的に付与された物体が大幅に形状を変えてしまわない限り、永続的に効果は持続しますので上書きするとなると効果が付与された物体を壊すなりしないといけないでしょうね。そうでもしなければ元々施されている魔法に阻害されて新たに効果を付与することも儘なりませんから」


「でも無理ではないんですよね? 私が履いてる靴には『重量軽減』と『疲労回復』のふたつが付与されてますし」


「可能は可能ですが。元々施されている魔法とは別種の魔法を上手く同期させる必要がありますので、効果の多重付与には高い魔法技巧が要求されます。ちなみにですがアンの履いている靴は別に多重付与が施されているわけではありませんよ」


「えーっと、それなら別の効果を付与した部品をくっつけたとかですか?」


「正解です。靴の中敷に『疲労回復』の効果が付与されています」


 部品追加で解決出来るみたいだけど、私の場合は難しそうだね。


 だって風属性が魔法を付与出来るのって空気だしさ。


 スマホもどきの中に新たに空気を入れたとしたら保存してた映像が消えちゃうのは確実だもん。


 これで追加保存するのは無理そうだとわかったけど、他にやりようはないかな。


「それにしても普通の魔法と違って、いくら時間が経っても付与した魔法が消えたりしないのは不思議ですね


 私が履いてる靴とか少なくとも400年くらい効果が持続してるみたいだしね。


「いえ、通常の魔法によってもたらされた変化も消えてはいませんよ。現にアンが手に持ってるそれも魔法によって加工したものですが元の石ころには戻ってはいないでしょう」


 変化前の状態に戻ってないんだから確かに効果は消えてないのか。


 炎の魔法で燃やしたら焼け焦げちゃうし、焼け焦げたものが元の形に戻るわけじゃないもんね。


 クミンさんが丸焼きにしてたトカゲとか昆虫とかそうだったしさ。


 炎が消えちゃったら魔法が消えちゃったみたいに感じるけど魔法による変化自体は残ってるんだ。


 それなら探査蝙蝠の場合は何が残ってるんだろ?


 と思ったけど空気を操ってるから簡単に形が変わっちゃって効果が何も残らないのね。


「あと付与魔法に関して御教え出来ることは魔法を付与する際に注ぎ込まれた魔力量で効果の度合が決定されるということくらいでしょうか」


「それって魔法を付与する物の大きさに関わらずですか?」


「えぇ、その通りです」


 『映像保存』の容量は私の魔力量次第ってわけね。


 いくつも動画とか写真が保存出来たらよかったんだけど、実質時間制限なしで動画を保存出来るようになっただけでも大きな進歩かな。


 せめて早回しくらい出来たらいいんだけど、その辺は今後いろいろと試してくしかないよね。


「アン、ひとつお願いしてもよろしいですか」


「え、はい。何でしょうか?」


「それを使って撮影していただきたいものがあるのですが」


 遠慮がちに申し出られ、私は当初の目的を思い出す。


 魔法で撮影した動画を保存しようとしてたのはステヴィアさんに少しでも返せるものがあればと始めたことだった。


 なので断る理由などない。


「はい、任せてください。何を撮影するか指示して貰ってもいいですか?」


「ありがとうございます。それで撮影先なのですが、対岸の雑木林の中をお願いします。中にどんな魔物が生息しているのか気になっていまして」


「わかりました。ただその前にこの中に入ってる空気を入れ替えて貰ってもいいですか」


 私はスマホもどきをステヴィアさんに手渡して封入されていた空気を入れ替えて貰う。


 再び私の手元に戻って来たスマホもどきの画面はさっきまで繰り返し再生されていた映像が映し出されることはなくなっていた。


 それは頼んだことなので問題ないんだけど、何故かスマホもどきからステヴィアさんが戦闘時に使用してた腕環に糸が接続されていた。


 私は糸をつまみ上げて尋ねる。


「ステヴィアさん、これって何に使うんですか?」


「アンが撮影した動く写真を焼き付ける魔力は私の方で供給しようと思いまして。それならアンは撮影に専念出来るでしょうし、より長い時間保存も可能になるでしょうから」


 付与したい魔法の効果って別の人の魔力でも焼き付けられるのね。


 それなら私も気兼ねなく探査蝙蝠を遠くまで飛ばせられそう。


 とは言っても私が探査蝙蝠を飛ばせる距離って今のところ300mくらいが限界なんだけどね。




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