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026.悪い予感はよく当たる。

 寄合所前に到着し、ステヴィアさんが室内を魔法で整えているのを外で待ちながら探査蝙蝠で相手の誘導を続けていた。


 距離的に、あと数分もすれば到着する。


 前もって相手のステータスを鑑定したいところだけれど、探査蝙蝠越しに鑑定することは出来なかった。


 やがて室内の準備が整ったらしいステヴィアさんが私の隣に並んで立つ。


「あとは通りを真っ直ぐ進めば到着です。通りの真ん中に私達が立ってるのですぐわかると思います」


『あぁ、それはいいんだが。ひとつ聞いていいか?』


「何ですか?」


『ここってお前さんら以外に誰もいねぇのか、まるで人の気配を感じないんだが』


「みたいですね。昨日、私達も森の奥から出てきて驚きましたし」


『そういや、昨日引っ越して来たとか言ってたな』


「ここ誰も住んでないからどこ借りてもよさそうなんですけど、腰を据えて話をするのに念のために寄合所みたいな場所を選んどきました」


『無人になってかなり経ってそうだが、他人の家に勝手に上り込むのも微妙だしな』


 そんなやり取りをしているうちに相手の姿が探査蝙蝠なしでも確認出来る所にまで来ていた。


 目に見える位置にまで来てくれたので鑑定を使用する。


【名 称】クミン

【レベル】74

【属 性】火

【筋 力】★★★★☆☆☆

【耐 久】★★★☆☆☆☆

【敏 捷】★★☆☆☆☆☆

【技 巧】★★★☆☆☆☆

【魔 力】★★★☆☆☆☆

【抵 抗】★★★☆☆☆☆

才 能(タレント)】『復活』

技 能(スキル)】『炎熱無効』『追跡』『拳法』『望遠』『嗅分』『直感』

【魔 法】『火貼』『宿火』

【生命力】29280


 確認出来たステータスからステヴィアさんより強いってことはなさそうで安心する。


 いきなり攻撃されても問題なさそう。


 そんなことはあり得ないとは思うけどさ。


 他に気になる点を詳細に調べて行くと彼女の才能タレントはデメリット持ちであることがわかった。


 私と同じで食事に難のあるタイプらしい。


 ただ私と違って一応何でも口にすることは出来るけれど、全身に発疹が出たり、場合によっては死亡するらしい。


 食物アレルギーってやつかな?


 それで死んじゃっても『復活』の才能タレントで元通りに蘇生するらしい。


 あと気になるのは【生命力】の数値的に交配装置コウノトリを使って子どもを造ったんじゃないんなら年齢は20歳ちょっとくらいかな。


 今の私とそんなに数値変わんないしね。


 その辺はいいとして、問題は属性だよ。


 これから私達が会うことになるクミンさん、火属性なんだよね。


 まさかとは思うけど、昨日ステヴィアさんが螺旋階段を降りた先で対処した相手だったりしないかな。


 暗闇の中で殺されてたとしても『復活』の才能タレントで蘇ったってことは充分にあり得るだろうしね。


 隣に立つステヴィアさんの横顔をちらりと盗み見たけれど別段表情に変化はなかった。


 いきなり見ず知らずの人間を殺害してたかもってのは、やっぱり私の考え過ぎだったのかな。


 それならそれでいいんだけどさ。


『やっぱ『直感』を信じて間違いなかったみてぇだな。なぁ、まだお前さんらの名前聞いてなかったな』


 質問を投げかけて来たクミンさんの足はいつの間にやら止まっていた。


 その反応から既に嫌な予感がひしひしと伝わって来ていたけれど、私は冷静さを装いながら淡々と自分の名を告げる。


「私はアンです」


 答えてすぐにステヴィアさんに目配せすると彼女は私に続いて名乗った。


「私はステヴィアと申します。こちらも貴女のお名前を伺ってもよろしいでしょうか」


『尋ねる前に先に名乗っときゃよかったな。あたしはクミン、それがこれからあんたをぶん殴る女の名だよ』


 言うや否やクミンさんは100mくらい離れた位置で翼を大きく広げ、その翼を燃え上がらせた。


 直後、間近で浮遊していた私の探査蝙蝠が消失してしまう。


 魔力の★の数は私の方が多いみたいなのに、レベル差があり過ぎるからか、私の魔法はクミンさんが纏ってる炎で簡単にかき消されちゃうらしい。


 クミンさんは大きく跳躍するのと同時に翼を羽ばたかせ、より高く舞い上がる。


 どうも翼は飛ぶためのものではなく、より高く跳ぶのを補助するような役割を果たしているらしい。


 クミンさんのステータスに表示された魔法の詳細をみたところ『火貼』の方を使ったらしく、炎を纏うことで自身の身体能力を強化し、また同時に纏っている炎に触れた他者は身体能力を低下させるような効果を発揮するようだった。


 跳躍が頂点に達し、下降をしはじめた段階でクミンさんは身体を前傾させながら大きく広げた翼で空気を精一杯抱え込むようにして一度大きく羽ばたくと私達目掛けて滑空する。


 魔法の効果なのかクミンさんはどんどん加速していく、距離が一気に狭まる最中に彼女のこめかみ辺りから生えている闘牛のような角も翼同様に燃え上がった。


 私はどうすべきかわからず硬直していると隣に立っていたステヴィアさんが私を背後にかばうように一歩前に踏み出す。


 ステヴィアさんが踏み出した先で軽く路面を爪先でとんっと蹴りつけた。


 瞬間、路面からステヴィアさんが戦闘時に使用している縫針を巨大化さしたようなものがにょっきりと生えると正確にクミンさんの両の翼を貫く。


 ただそんな状態に陥ってもクミンさんは一切焦る様子も見せず、貫かれた翼が引き裂きながらも減速することなく突進してくる。


 そんな無防備で無謀過ぎる突撃をして来た理由はすぐにわかった。


 引き裂かれたはずのクミンさんの翼は炎となって燃え散り、一瞬のうちに再生していたのである。


 もしかしてクミンさんも不死だったりする?


 才能タレント的に不死鳥っぽい。


 とか余計なこと考えてる間に、最早全身を炎で包み込んだクミンさんは目前にまで迫っていた。


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