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018.レベルアップが必要ですね。

「この後はどうします? もうすぐ日が暮れちゃいますけど」


「夜に森を抜けるのは危険ですし、居住地跡で一晩明かさせていただきましょうか」


「そうですね。でも、その前にもう少しこの遺跡の中を調べて回ってもいいですか?」


「ここをですか?」


「はい、もう調べ尽くされてるかもしれないですけど交配装置コウノトリなんてものがあるくらいなんですから他にも私達の目的を達成するのに使えそうなものとかあるかもしれませんし」


 人間を生み出す卵を造れるくらいなんだから身体そのものを作り変える装置とかあっても不思議じゃないよね。


「あるとしたらダンジョンの奥深くでしょうね」


「ダンジョン?」


 またなんかゲームっぽいものが出て来た。


「この遺跡の奥に地下へと通じる場所があるんですが、下へ下へと何階層にも渡って続く空間があるんです。内部には攻撃的な魔物も住み着いていますし、容易に踏破することは出来ませんが、何かあるのは間違いないかと」


「魔物って、ここまで出て来たりしないんですか」


「問題ありません。彼らは何故かダンジョンから出てこようとはしないんです」


 やっぱりそういう風に設定されてるのかな。


 なんていうか魔物って古代文明の人達が造った生物兵器とかだったりして。


 よくあるよね、そういう漫画とかゲームってさ。


 でも、そうなってくると卵から生まれる人間も人間なのかってことになるんだけどね。


 死んだら身体が消滅しちゃうくらいだしさ。


 ただステヴィアさんは世界樹の果実から生まれたって話だし、そもそも普通に生まれてる人も居たりするのかな?


「それは気になりますね。でも、今は卵がありますし、出直すしかなさそうですね」


「えぇ、その卵は何をしようと破壊することは出来ないのでそこは安心なのですが、奪われてしまっては元も子もないですからね」


 生まれる前に殺されるなんてことはないのね。


 一生涯に育める子の数に制限とかあったし、生まれるまではきっちり超技術で保護されてるのかな。


「それにダンジョンに潜るなら私も最低限は自分の身を守れるようにならないと厳しいですよね。ステヴィアさんに余計な負担をかけることになっちゃいますし」


「私ひとりで探索に行っても構わないのですが、その間に外で待っているアンが魔物に襲われては目も当てられませんからね」


「死なないとは言っても何があるかわからないですもんね」


 となるとダンジョン攻略するのならしばらく遺跡付近に逗留しなきゃだよね。


 幸いにも空き家は居住地跡に山ほどあるので、適当に借りよう。


 この身体が住民を殲滅した事実があるので祟りとか呪いみたいなものが気になるところだけど、それはもう神罰として与えられてるし、たぶん大丈夫だよね?


「ステヴィアさん、しばらくは居住地に逗留してダンジョンの探索を進めましょう。すぐに潜るのは難しいでしょうからなるべく短期間で私は身を守る魔法を覚えるよう努めますので、ステヴィアさんはステヴィアさんで必要な準備を進めてください。何もなければ、さっき居住地で見かけた魔物の雛を観察して時間を潰して貰えればと思うんですけど、どうでしょうか?」


「わかりました。では、そのように方針を固めましょうか」


「はい、お願いします。それでなんですけど、一度ここを離れる前にダンジョンの入口だけ見ておきたいんですが、案内お願いしてもいいですか」


「構いませんよ」


 私達は交配装置コウノトリを離れ、たどって来た道を半ばまで戻って行く。


 分岐点がいくつもあり、私は途中から元来た道を戻っているのか、別の道に入ったのか判別が出来なかったけれど、ステヴィアさんは迷いなく足を進める。


 私は卵を胸元に抱え、ステヴィアさんから離れて迷子にならないようにぴったりとくっ付いて歩いた。


「まもなくです」


 到着したのは地下へと続く螺旋階段が設けられた円筒形の部屋だった。


 下を覗き込んだけれど底は見えない。


 高所恐怖症ではなかったと思うけど、ひゅっとする感覚が身体を萎縮させる。


「ここを降りた先に本当の意味でのダンジョンの入口がありるのですが、どうされます?」


 どのくらい深いのかわからないけど、ここにある階段を降りていたら下に至るまでにどれだけ時間がかかるかわからない。


 ここは出直すべきかな。


 降りてる間に夜になっちゃいそうだしね。


「ここまでで充分かな。降りたらまた昇って来なきゃいけないわけだし」


「では、居住地跡に戻りましょうか。私達が逗留する場所も用意しなければいけませんから」


「うん、そうだね」


 地下へ続く螺旋の奥からなかなか目を離せずに応じていると暗闇の中にぽつりと光が灯るのが見えた。


 その光は揺らめいていて炎のようだった。


 炎は徐々に大きさを増していて、どうやらこちらに向かって飛んで来てるのだとわかる。


「ステヴィアさん、地下から炎が飛んで来てるみたいなんですが、もしかしてこの下にも魔物が居るんですか」


「いえ、そんなはずはありません」


 飛来する炎をひと睨みしたステヴィアさんの表情は険しくなる。


 炎はここまで届くことはなく途中で消えてしまったけれど、ステヴィアさんは警戒心を露わに無言で両手に巨大な縫針を現出させた。


「この周囲の安全は保障されていますのでアンはここでお待ちください。すぐに戻ります。相手が何者なのかはわかりませんが、ここで放置するのは不安が残りますので」


 そう言うなりステヴィアさんは跳躍し、吹き抜けに身体を踊り出させたかと思うと反対側の階段の側面を蹴って落下方向を調整する。


 同様の手順でステヴィアさんは下へ下へと跳躍を繰り返して物凄い速度で降りて行った。


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