高等部2年Aクラス 松本 晴香(まつもと はるか)
今、私たち生徒会の面々はスタンビートが発生した場合の防衛線について話し合っている。
「それで、国連軍からの応援の数は三万で間違いないかな?」
生徒会長の質問に、副会長がうなずく。
「はい、そう聞いてます」
「心許ない数字だけど、しょうがないか………」
そう言って、学園都市周辺の地図の一カ所に×印を書く。
「魔導研究部の話だと、出現ポイントはここでほぼ間違いないようだ」
魔導研究部………あそこは、確かアンネが居たところだったかな。
別の学園からここに移ってきたっていう彼女は、ほんの数カ月で研究部のエースになっていた。
出現ポイントが絞られたのも、彼女のおかげなんだろう。
それぐらい、彼女はその分野において規格外だった。
「最前線は国連軍が担ってくれるそうだ」
っと、考え事してる場合じゃないんだった。
ふむふむ、国連軍が撃ち漏らした魔物を私たち魔法使いが仕留めていく感じかな?
質問をするために、私は手を挙げた。
「最終防衛線は学園前だとして、負傷者の救護はどこでおこないますか?」
「国連軍が決壊しない限りは、前線に近い場所でおこなってもらおうと思っている。あまり遠すぎるとあちらの負傷兵も回復させられないからな」
「分かりました。ありがとうございます」
だとすると、学園横の治療院から人を出す必要があるから、そこの補充は学園長案件になりそうだ。
そこは、生徒会長から話がいくことになるだろう。
「他に質問がある者はいるか?なければ次へ進むぞ」
そう言って、生徒会長は地図にラインを一本引く。
そこは、国防軍と学園の丁度真ん中くらいの位置だ。
「状況次第で位置は変わるかもしれないが、私たちの防衛ラインはここだ。ここを抜けられたら、市街戦も覚悟のうえで動くことになるから、そこは理解しておいてほしい」
市街戦か………市民の避難誘導がなかなか進んでないって話だし、そうなった場合は地獄をみることになりそう。
中等部の生徒はまだしも、初等部の生徒なんてまだ魔法を使い始めて日が浅いからなぁ。
逃がしてやりたいんだけど、魔法使いは逃げられないってのは本当に辛いな。
「幸い、スタンビートが発生するまではまだ時間がある。出来うる限りの対策を講じていくから、協力してほしい」
そう言って生徒会長が頭を下げたものだから、私を含めた全員が狼狽える。
「大丈夫ですよ。そんなことしなくても、皆あなたに着いていきますから」
副会長の言葉に全員がうなずいた。
スタンビートに脅えて暮らす生活なんて、私たちの時代で終わらせてみせる!
心の中で、私は一人そう意気込むのだった。