初等部教師 小金井 紬(こがねい つむぎ)
「このような出来事があって、魔法という存在が世界に広まっていきました。
それと同時に現れたのが魔物です。
この魔物の出現については色々と説がありますが、現在においても詳しいことは解明されていません。
その姿は様々ですが、特に動物の姿によく似た個体が多く報告されています。
魔導歴568年に発生した南ユーラシア連合国でのスタンビートでは、二足歩行の人間によく似た個体の出現も確認されました。
それ以降、二足歩行の個体も散見されるようになりましたが、まだまだ数は少ないうえ、そこまでの脅威にはなっていないようです。
そのため、現在は"通常級"の危険度となっています。
さて、ここで魔物の等級について説明していきましょう。
全長が2メートル以下、移動に空中を含まない、速度が人と同等、もしくはそれ以下、この3つ全てに該当する魔物を"通常級"と呼びます。
全長が2メートルを超えている、移動に空中を含む、速度が人よりも速い、このどれか1つに該当する魔物を"危険級"と呼びます。
2つが該当した場合は"災害級"、3つが該当した場合は"天災級"と呼びます。
これは、過去の魔物の出現記録を元に行われた分類ですので、将来的に変わるかもしれない、ということを頭にいれておいてください。
特に、魔導歴745年に発生したスタンビートでは、"危険級"分類となっている魔物により魔法使いの三分の一を失うという事態も発生しています。
そのため、国際連合軍主体の元、現在魔物の等級見直しが進められています。
とはいえ、魔物の種類が膨大なため、すぐにとはいかないようですが。
現在の区分では、"通常級"が魔法使い二人から三人程度、"危険級"が魔法使い十人程度、"災害級"が魔法使い三十人程度、"天災級"が魔法使い五十人程度で討伐に当たるのが妥当とされています。
こちらも、等級の見直しによって変わることになるでしょう。
以上が魔物という存在を大きく区分した場合についてです。
詳細については、後日、専門の講師を招いてお話ししてもらう予定になっています。
それまでは、各自でしっかりと勉強しておくように」
そう締めくくると、生徒達から「え~っ」とブーイングが飛んでくるので、笑ってスルーしておきます。
「本日の授業はここまでです。明日は、最初に魔法の実技があるので服を着替えてグラウンドに集合するように」
生徒たちからの返事を確認して教室を出ます。
ふと、朝、理事長から聞かされた話が頭をよぎりました。
スタンビート………。
過去に幾度となく発生してきたそれに、私たちは立ち向かうすべがあるのでしょうか?
嫌な思いを振り払うために首を振ります。
もし、本当に発生してしまったのならば………。
「せめて、私のクラスの生徒たちだけでも守ってみせます」