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しかしいざ現われたのは、まさに異形のモノ。
敵を甘く見ていたことを悔やむも、すでに戦いははじまっている。
「ホントは本望じゃないけど、最後にフルパワーを出して破壊するか」
このままでは、こちらがやられてしまう。
薙刀を握る手に、汗が滲む。
『人形』が体勢を立て直し、再びヒミカに襲い掛かってきた。
だがその『人形』の体に、黒い糸が巻きついた。
「えっ!?」
「ギリギリセーフかしら?」
ヒミカが声をした方を見ると、ルナがいた。
その両手には、『人形』を縛り上げている糸がある。
ルナの武器だ。
ルナの両目も、すでに赤く染まっていた。
「ルナ、何故ここにいるの?」
「マカから頼まれたのよ。ヒミカの護衛をね」
見た目10歳の美少女のルナは、今は険しい顔をしていた。
「また懐かしいモノが復活したわね…」
「知っているの? ルナ」
「ちょっと昔に、ね。同じモノを見たことがあるわ」
そう言いつつ糸を操り、力を込める。
「まったく…。誰がよみがえらせたか知らないけれど、厄介なモノを出してくれちゃって」
ルナの糸は強力だ。
『人形』の体はすでに、ねじれてきている。
「ルナ、破壊して大丈夫なの?」
「ええ。そうじゃなきゃ、中に封じられている被害者の魂が解放されないもの」
「はあ?」
ヒミカは目を丸くして、『人形』を見る。
確かにこの『人形』には並々ならぬ力を感じていた。
まさか動力源こそ、被害者の魂なのか?
「今回も破壊するわよ。観念なさい」
『人形』の体に次々とヒビが入っていく。
壊れるのも目前というところで、予想外のことが起こった。
ピシピシっ バリンッ!
『人形』の体は壊れた。
しかし中から、一回り小さい『人形』が現われたのだ。
「えっ!」
「うそっ!」
二人が目を見開いている間に、人形は糸の隙間から脱出し、そのまま逃亡してしまった。
「あっ、待て!」
「ヒミカ! やめなさい! 深追いは危険よ!」
追いかけようとしたヒミカだが、ルナに止められた。
「きっと製作者の元へ帰ったんでしょう。追いかけるには危険過ぎるわ」
「でもこのままじゃ…!」
「慌てなくても、糸はつなげたわ」
そう言ったルナの人指し指には、ピンッと張り詰めた糸があった。
「これで居場所は知れる。だからいったん戻りましょう。キシも心配しているわ」
「…分かった」