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『人形』は動きもしなければ、反応もしない。
「何の為に女性を狙って、顔を剥ぎ取っているの? しかもその魂、どこにやってんのよ?」
しばらく待ってみたが、『人形』は何も動かない。
ヒミカはため息をついた。
このまま壊すのは少々手こずるが、ムリではない。
しかしそれでは被害者達の魂の行方が分からなくなる。
せめて製作者が近くにいればと周囲を探るが、他の気配はない。
『…カオ』
だが突如、『人形』が言葉を発した。
しかし口元は動いていない上に、言葉は奇怪な音みたいだ。
『ウツクシク…サイ、アルモノノカオガ、ホシイ』
静かに体から殺意が湧き上がる。
「お褒めいただき、嬉しいわ。だけど生憎アタシは売却済みなのよね。あのストーカー男に」
ヒミカも薙刀を構えなおす。
「アイツが自分の身も心も魂もくれるって言うなら、アタシだってくれてやる。だから誰にも譲る気はないの。悪いわね」
再び切りかかるも、今度は向こうも切りかかってくる。
ガキンッ! バキっ!
ヒミカは薙刀の全てを使って、『人形』の攻撃を防ぐ。
『人形』は四肢を使い、ヒミカに切りかかる。
「チッ! パワーはアタシ並みかっ!」
薙刀の底を使い、『人形』の胴体を突いた。
『人形』は10メートルほど後ろに下がった。
「ちょっとマズイかな?」
ヒミカの顔に、汗が流れる。
向こうは疲れを感じぬ体だが、ヒミカは違う。
いつまでもフルパワーで戦えない。
そもそも最初に口にした血液が少な過ぎた。
そろそろ切れてしまう。
「敵を甘く見過ぎたわね」
ヒミカの想像では、てっきり能力者の男だと思っていた。