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「血族達の仮説だが、この顔剥ぎ事件には人外のモノが関わっている可能性が高い。被害者達の魂ごと、取っているのではないか―とな」
「魂ごと? そんなのありえるの?」
「魂の分野は私達の領域じゃないからよくは分からんが…」
「そういう呪術ではないか、というご意見なんですね」
「キシの言う通りだ。ゆえに何の目的かは知らんが、このまま表の世の人間達を犠牲にさせるワケにはいかないとのことだ」
「…厄介ね」
事件内容に目を通しながら、ヒミカは低く呟いた。
「目撃者の話では、殺された被害者の側にいたのは大きな人物ってだけ。しかもすぐに逃げてしまう。…こんなのどう捕まえろってのよ?」
「しかも被害者の女性も、次にどんな人が狙われるのかがサッパリ分かりませんもんね。唯一、深夜に一人でいるところを襲われているというのが、共通点みたいですけど」
頭脳明晰なキシも、さすがに苦笑している。
「ああ、それでだ。ヒミカ」
「何よ?」
「これから犯人を見つけるまで、徹夜で頑張ってくれ」
「…何を?」
「見張りを」
マカとヒミカの間で、微妙な空気が流れた。
「えっと、マカさん? つまりヒミカに見張りをしろってことですか? しかも犯人を見つけるまで」
「そう言っている。ヒミカは血・肉の匂いに鋭いし、怪しい匂いがしたら、お前の身体能力を使えばすぐに駆け付けられるだろう?」
「否定はしないけど…。えっ? 警察犬の真似事をしろって?」
「今のところ、それしか手がないんだ。だからお前達を呼んだ」
「ああ、なるほど…って納得できるかっ!」
バサッと紙を掴み上げ、ヒミカは激怒した。