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反応が遅れたマカは、そのまま吹っ飛ばされ、壁に激突した。
「うっ…」
額が切られ、血が顔を染めていく。
剣の方にばかり気を入れていたせいで、防御の為に体に気を送るのを遅れてしまった。
そのせいでもろ体に衝撃が来る。
「いっつぅ…」
血が顔から首へと流れる。
傷を押さえながら、マカは何とか立ち上がる。
「戦闘に鈍くはなりたくないものだな…。平和ボケし過ぎたか」
何とか意識は保っているものの、体はすでに倒れる寸前だ。
『人形』はマカの血が付いた腕を、じっと見ていた。
しかしいきなり口が割れ、中から赤く長い舌が出てきた。
「げっ…」
顔をしかめるマカの目の前で、『人形』はベロリと血を舐めた。
「ちょっと待ってよ。昔はあんなこと、しなかったわよ」
目を見開くルナの前で、『人形』の顔が変形し始めた。
色こそは付いていないもの、形はマカのそれに成してきている。
「ひっ!」
ナオが息を飲む。
「まさかっ…舐めた血で、顔をコピーしているんですか」
カルマも呆然とその様子を見た。
しかし顔は定まらず、『人形』としての顔と、マカの顔が入れ替わっている。
「どうやらまだ血が足りないようだな…。今回の『マスク・ドール』は剥いだ顔を食することによって、その顔と才能を取り込むシステムのようだな」
マカが険しい顔で、『人形』の顔を見た。
「しかしこれ以上、同じ顔が増えるのは気に食わないからな。破壊する!」
マカは剣に最大の気を込め、『人形』に向かって走り出した!
『人形』もマカを見て、動き出した。
「マカ! バカッ、逃げて!」
ルナの制止の声でも、しかしマカは止まらなかった。