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2

「そうだな」


マカは右手を上げた。


黒い模様が浮かび上がり、宙に浮き、黒き剣となった。


「やれやれ…。こんなのを相手にするとはな。人生何が起こるか分からないものだ」


「何が起こるか分からないからこそ、おもしろいんでしょ?」


「否定はしないが、賛成もしかねるな」


「お二人とも、避けてくださいね!」


ナオが二丁拳銃に気を込め、『人形』に向かって打つ。


パンパンッ!


しかし『人形』は軽く飛び上がり、両手・両足を恐るべきスピードで回転させ、弾丸を弾いた。


そして弾かれた弾丸は、マカとルナのいる方向に飛んできた。


「のわっ!」


「ぎゃあっ!」


二人はくしくも、ナオの言った通りに避けた。


「そんなっ!」


自分の放った弾丸が弾かれたことに、ナオは呆然とした。


その隣でカルマが鎌を構え、『人形』に降りかかった。


ガキンッ!


しかし腕一本で、鎌は防がれてしまう。


「くっ! 思ったより、固いですね」


カルマが苦心の表情を浮かべる。


「おいおいっ。昨夜ヒミカが戦った時より、強化しているのか?」


「かもしれないわね。でもあの後、狩りはできなかったはずだから、やっぱり一皮剥けたことによって、より強力的になったってことでしょうね」


「じゃあお前のせいじゃないかっ!」


「まさか一皮剥けるなんて思わなかったのよ! 昔はそんな性能無かったし!」


マカとルナが喚いている間に、カルマが徐々に押されてきた。


「くぅっ!」


ついには押し負け、鎌は弾かれる。


それとほぼ同時に、『人形』のもう一本の手がカルマに襲い掛かった。


「カルマっ!」


ルナが慌てて糸を伸ばし、『人形』の体に巻きつけた。


カルマはその隙に、『人形』から距離を取った。


糸は幾重にも『人形』の体に巻きつくも、今度は四肢の刃が糸を切り裂き始めた。


「うそっ!? 昨夜は通じたのに!」


仰天するルナだが、糸はあっと言う間に切り裂かれ、『人形』は自由になった。


「おいおいおいっ! ウチの血族特製の武器が、何一つ通用しないなんてありえるのか!」


「目の前のことを、現実として受け取るならありえるわね」


さすがにマカも目を丸くしている。


「おい、まさかと思うが…。あの『人形』、対血族用に作られたんじゃないだろうな」


「…かもね。そういうふうな仕様になっているのは、まず間違いないでしょう」


「チッ! 魔女どもめ! 忌々しいのはその存在だけにしといてほしいものだな!」


マカの目が赤く染まり、握る剣に気を込める。


そして『人形』に向かい、剣を振りかざした。


ガキンッ!


またもや腕一本で防がれる。


「なめるなよ!」


剣により強力な気を込める。


徐々に『人形』を押していき、ついには腕にヒビが入った。


それをチャンスと見たマカは、一気に力を入れた。


バリンッ


腕は砕け散った。


マカは『人形』の胴体を蹴り、元の位置に戻った。


「やったじゃない! マカ! あなたの力なら、通じるわ!」


「それが…そう上手くもいかない、んだ」


戻って来たマカは、激しく力を消耗していた。


「まさか…腕一本破壊するだけでっ、こんな…」


ふらつくマカの目から、赤い色が消え始めている。


「ちょっ、ちょっとちょっと!」


慌ててルナが駆け寄った。


「コレじゃあヒミカを連れてきても、同じだったな。パワーやスピードが上がっていちゃあな」


しかしマカは気力を振り絞り、立ち上がる。


「ルナ。魂が収容されているのは、あの胴体か?」


「えっええ、昔と設計が変わっていないのなら…」


「しかしあの胴体の方が、固そうだな」


額から溢れ出る汗を拭い、再び剣を構える。


そして『人形』の胴体を狙って剣を振るうも、もう片方の腕に止められ、足で蹴られそうになり、『人形』から離れざる終えない。


「ルナ! やつの残った手足の動きを止めろ!」


「分かったわ!」


ルナの手から3本の糸が伸びて、『人形』の腕一本と両足に絡みつく。


「よし! カルマ、行け!」


「はい!」


カルマが鎌を胴体に向かって振るう。


しかし予想通り、刃は傷一つ付けられなかった。


「くぅっ!」


刃を胴体に当てるも、引くことができない。


「やっぱり私でなければダメか…。カルマ、引け!」


「はい!」


カルマはすぐさま後ろに引いた。


入れ替わるように、マカが剣を胴体に当てた。


ガンッ!


剣は少しだけ、胴体に入った。


「やあああっ!」


思いっきり気を込め、剣を引く。


バキバキッ


胴体に少しずつ割れ目が広がる。


「マカっ! 逃げて!」


しかしルナの糸が切られ、『人形』の腕がマカに振り下ろされた。


「「マカさんっ!」」


カルマとナオの声が、悲鳴のように響いた。


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