続・僕のお姫さま。
ここに高い高い塔があり、
周りを囲むように芝生が広がっている。
塔の最上階には、
お姫さまが住んでいる。
彼女は囚われている。
そう信じている。
だから何処へも逃げていかない。
そして人々はそんな彼女を
不思議に思ったり馬鹿にしたり
気味悪がったり、なかには
怒ったりするものもいた。
どこかに行こうと思えば、
本人が望みさえすればすぐに行ける。
なぜなら彼女は囚われているわけではない
のだから。
どうしてそんな簡単なことをしないのか。
お姫さまは長年仕えてくれている爺やと
塔の最上階から遠くを眺めていた。
たっぷりと無言の時間を過ごした後、
お姫さまは言った。
「ねぇ爺や。人々がわたしのことを笑ったり馬鹿にしたりしていることは知ってる。でもね、わたしだってわたしが囚われていないなんてそんなこと知ってるの。何処かへ行かないのはそういうことじゃないの。爺や、お前ならわかるでしょ?私の言ってること、わかるでしょ?」
爺やは答える。
「わかりません。私には何もわかりません。ただ姫さまが此処に囚われていてここから出たら危険だということしかわかりません。私はそう信じています。そしてその危険から姫さまを守り続けるのが私の役目です」
そして僕が言う。
「まったく。おかしな二人だ」
お姫さまは「あなたがそれ言う?」
と言って笑った。爺やもつられて笑った。
三人でいつまでもいつまでも
遠くを眺めた。
あたりが暗くなっていく。
マジックアワーを迎え、
お姫さまは言った。
「早くどこか遠くへ逃げたいわ」
それから
僕は二人に「またね」と言った。
そして家に帰ってきた。
ただいま。