2.5 わりとチョロインな人の過去 sideミカ・ハルカゼ
はじめまして、私の名前はミカ・ハルカゼと言います。
私の生い立ちについて、軽くご説明します。
私は東の島国、扶桑の農家の娘として生まれました。
生まれつき、体を動かすことが好きだった私は、民を守る武士に憧れました。そのとき初めて父さまと母さまにわがままを言いました、「武士の育成塾に入りたい」と。父さまと母さまは私のわがままを聞いてくださりました。塾は厳しかったけど、とても楽しかったです。あの日が、来るまでは・・・。
それは私がいつも通り門前を箒で掃いていた時のことでした。村の、家の前にこの地を統治する大名様の行列が停まりました。私が不審に思っていると中から出てきたのは大名様ではなくその息子様でした。その方は日中領地の村々を回り気に入った女を連れ去っては毎夜、その、いかがわしいことをしているだとか、屋敷ではわがまま放題だとか良からぬ噂が沢山ある方でした。
丸々と太った体、脂ぎった顔、口元に気持ちの悪い笑みを浮かばせてその方は私に言いました。
「迎えに来てあげたよ、さぁ付いてきなさい」
まるで付いてくるのは当然かのように命令口調で言ったその方私はついカチンとしてしまい、こう言い返してしまいました。
「お断りします。私にまいったと言わせれたら付いて行ってあげてもいいですよ」
その答えを聞いた息子様は大きく目を見開いたかと思うと次の瞬間にはさらに笑みを深くして、
「いいよ、どうせ君の方から頭を下げることになるんだから、反抗的な女を教育するのも悪くない」
そう言って、行列を引き連れて帰っていきました。私は絶対にあんな奴に頭は下げないとその時は息巻いていました。彼の言った言葉がどういう意味だったのかは、次の日に思い知らされました。
次の日、私が起きると、父さまと母さまはもう起きていて、父さまは憤っており、母さまはとても悲しそうな顔をしていました。どうしてそんな顔をしているのか聞いたら父さまは一つ、重苦しい溜息を吐いたあと、口を開きました。曰く、
私たちの村が罪を犯したと大名様の息子様が言った。
三日後に村の民全員を罪人として処刑すると言ったらしい。
だけど・・・寛大な息子様は私一人を罪人として差し出せば、他の者の罪は免除しようと言ったそうです。
それのせいで、私の家族が村八分にされているそうでした。
私はこれが彼の言っていた「私の方から頭を下げることになる」ということだと理解しました。
私はこれに酷い理不尽と憤り、そして絶望を感じて倒れてしまいました。
このまま、諦めるしかないのかと思ったとき、
ーーーーーー私のヒーローが現れたんです。
諦めるしかないと悲壮な覚悟を決めたとき、村に来ていた瓦版屋の人が号外をばら撒いていたのです。
「号外だよ!号外だよ!大名屋敷の悪辣息子に天誅来たる!」
「・・・え?」
私のは慌てて落ちていた瓦版を拾い読みました。
そこには、
「うそ・・・」
当時貴重だった写真が一面のトップを飾っていました、その写真は黒いコートを着た男が恐らく不正の証拠であろう紙を息子に突き付けて、悪事を裁いた瞬間が載っていました。私はきっとこの瞬間に彼に恋心を抱いたのでしょう。その瓦版を読み終わった後、私は居ても立っても居られず家宝の薙刀をもって家を飛び出してしまいました。(ちゃんと書き置きは残しました)
そして、彼が向かったと言う西洋のエルダーク公国に向かいました。そこでセレンちゃんやロキちゃん達と出会い、2年後、今のパーティ「アスタルテ」を結成しました。
でも、クエストでゴブリンの巣を一掃した帰りに運悪くグレートタスクに襲われたのです。私たちはCランクでしたが、実質Bランクの実力はありました。でもAランクモンスターのグレートタスクには力及ばずどんどんと劣勢になっていきました。
その時に現れたのが2年前、私を助けてくれた彼だったんです。片思いの相手が現れたことに集中を解いてしまった私は、グレートタスクに潰されそうになりました。その時、彼の放った見たことのない魔法がグレートタスクを吹き飛ばして、私はまた、彼に助けられてしまいました。その時に、彼のことがずっと好きだったんだと気付きました。
好きだと自覚してしまえば、思いの外簡単にその想いが外に漏れてしまいました。
ねぇ、貴方は気付いていますか?私のこの想いに。もし気付いているのなら、私が告白した時、どうか、答えて下さい。ミカは、貴方のことを、愛しています。