vs魔王ゾルマ3
明日は二話、投稿します。
レンはリヨンを相手取り、オリハルコンの爪を振るう。
リヨンは精神を研ぎ澄ませる。
多少かする程度なら問題ないが、そのまま致命傷を与える攻撃に繋がるかもしれない。
人間が使う武術と言うものは強いとは聞いてたが、オーガに通用するとは思ってなかった。
しかしこの男は武術を使ってリヨンを圧倒する。
技だってリヨンの後から出して、リヨンの攻撃より早く届く。
さすがミオですら苦戦させる相手だ。
だけどいつかはミオだって超えて見せる。
リヨンは冷静に相手の攻撃を捌いていく。
そこに横からミオが参戦する。
「とりあえずもう一回黙らせるにゃ!」
いきなり手加減無しのミオの技が炸裂する。
“幻影突き”!!!!
先ほど覚えたばかりの対レン用の必殺技だ。
闘気の残像がレンの防御を打ち崩すと、手加減の無いその攻撃に、そのまま血を吐き膝をつく。
「待って!」
アンリが慌てて後ろからレンに抱きつく。
先ほどから気になっていた。
レンは何やら呟いている。
耳を澄ましてみると、
「マモラナイト。オレガミンナヲマモラナイト。マモラナイト……マオウカラ……」
なんということだ。アンリは理解した。
レンはまだ魔王と戦っていた。
たった一人で。
おそらく魔王に敗北したあの時から。
アンリの目から涙があふれてくる。
「ああ、レン。レン、あなたは守れたわ。守れたのよ。私もアンフィもマナも無事よ」
レンを抱く腕に力をこめる。
「みんな無事なのよ。あなたのおかげよ」
マナが駆け寄ってくる。
「レン、私がわかる? マナよ」
レンはうつろな目で、
「マナ……? マナ、マモラナイト。マナ、オレガマモルヨ」
抑揚のない声で答えた。
マナの目から涙が流れ落ちる。
マナもレンの首に手を回し抱きしめる。
レンはいつもマナを気に掛けていた。
まるでマナのことを本物の妹みたいに。
「マナ、アンリ。ここはまかせたにゃ」
マナとアンリは頷く。
「ミオ達は先に行くにゃ」
いうや否や、猛スピードで壁の穴から飛び出ていった。
それをティーリン、リヨン、紅の牙の皆が追っていく。
***
僕と姉さまは砂埃が収まるのを待っていた。
また、音がした。
空間がどくん、どくん、と脈打つ。
僕は我慢できず、風の呪文を使い砂埃を追い払った。
そして僕と姉さまは絶句した。
さっき隕石が来る前に目にした黒いドラゴンのさらに何倍かもある、黒い竜のような生き物がそこに居た。
いや、竜ではなかった。
それは悪夢のような姿だった。
黒い体に短い脚が芋虫のように付いていて、その黒い胴体から、長い首が七本伸びている。
一つは魔王ゾルマの頭、もう一つは黒い髪の毛のレダの頭だ。
それ以外は全部竜の頭だ。ヒドラに芋虫のような体がついているような感じか。
僕と姉さまは武器を構える。
その生き物に向かって飛ぼうとする姉さまを手で制する。
「もう一回呪文を打たせてください」
「わかったわ」
僕はもう一度呪文を唱える。
――――神級魔法“アブソリュート・ゼロ”
僕の前に生まれた絶対零度の氷の玉から氷のレーザーが魔王ゾルマに伸びていく。
が、壁に当たったかのように魔王の手前で魔法は弾かれて消えてしまった。
これもダメなのか!
なにか結界のようなものを張り巡らせている気がする。
「姉さま、光魔法で攻撃してみてください」
「光魔法ね!」
姉さまは集中する。
――――神級光魔法“ホーリーレイ”!!
光の太いレーザーが魔王に直撃する。
「効いてる! 普通の呪文は弾くのに!」
これが勇者でしか魔王を倒せないと言われている理由か!
しかしそれなら僕だって、今一回見たから唱えることが出来る!
――――神級光魔法“ホーリーレイ”!!
僕の呪文も魔王ゾルマに突き刺さった。
効いてる、だがすべての顔がこちらに向いた。
ブレスがくる!
直後、七つの顔から放たれた七本の黒い炎が空を焼いた。




