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勇者の弟12歳  作者: 山吹向日葵
第六章
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それぞれの戦い2


 カレンは黙々と戦っていた。


 紅の牙はサポートに徹底する。


 カレン、ロミ、シズカは盾を持って強固に魔獣たちの攻撃をさばいている。


 この魔獣たちには中級魔法ぐらいでは攻撃が通らない。

  

 発動までに時間のかかる超級呪文を魔法使いたちが放つまで、ひたすら防御だ。


 幸い魔法使いは三人いる。


 ヘルハウンドをマナがエターナルフレアで倒し、リヨンがミノタウロスに止めを刺し、ロックバードの巨体に呪文の集中砲火を浴びせ倒した。


 フェンリルとマンティコアは様子を窺っている。二匹とも知性のある魔獣だ。


 前衛にケルベロスとワイバーンを出し、隙あらば攻撃をしようと言う腹だろう。 


 セルフィは覚えたばかりの重力魔法を使い、魔獣の体重を何倍にも増やし、動きを鈍くさせている。


 リヨンが衝撃波を伴った攻撃でワイバーンを削っていく。


 動きが遅くなった攻撃など、リヨンにとっては無いも同じだ。


 躱し、打つ。


 敵の間を縦横無尽に動き、たった一人で前衛を見事にこなしている。


 マンティコア、フェンリルが唱える魔法も、届く範囲なら叩き潰していく。

 

 衝撃波の出るこのガントレットは、ただでさえ強いオーガの肉体にさらなる攻撃力をもたらしている。


 単なる魔獣の攻撃などリヨンには通用しない。


 ついには魔法で弱ってたとはいえ、ワイバーンさえも衝撃波の餌食となりその場に崩れ落ちた。


 残りはケルベロス、マンティコア、フェンリルだ。


 ケルベロスは三つある頭で攻撃してくる。炎の息もあり、なかなか強い。


 ケルベロスが出たとなれば、その付近の街道は通行止めになり、軍隊が出動しやっと討伐するほどの相手だ。


 それを相手に、しかも優勢に戦えるなんて、カレン達ですら思っていなかった。


 訓練の成果が出ている。オルターはさすがに我々の姫様が認めた男だ。この歳でまだこんなに強くなれるとは思っていなかった。



 しかしさすがにリヨンも三つの頭には攻めあぐねている。


 と、何かを思いついたか、リヨンはケルベロスと距離を取る。


 そこから技を放つ。


“彗星拳”(コメットフィスト)!!

  

 ケルベロスが飛ぶ衝撃波に吹き飛ばされているのを、マリーナがアイシクルランスの呪文で頭を一つつぶした。


 リヨンは今度は思い切り接近し、両手でのラッシュを放ち止めを刺す。


 ケルベロスは倒れ伏した。


 残りはフェンリルとマンティコアだ。


 両方ともおとぎ話に出てくる伝説の魔獣だ。


 皆、欠片も油断せずに身構えた。 


 突然ティーリンたちと戦っているブラックドラゴンが声をあげた。


「いつまで寝ている気だ。武闘家レンよ。もう傷はいえてるだろう。立ち上がって加勢しろ」


 アンリとマナが驚愕の表情と共にミオが吹き飛ばし、壁にめり込んでいる男の方を振り向いた。


 レンと言われた男は無言のまま起き上がる。


 顔色は青く、どう見ても魔族なのだが、その顔をよく見ると確かに勇者のパーティの一人だった武闘家レンだった。


 マナが呻く。ま、まさか……


 アンリが、


「そんな馬鹿な! レンは死んだはず!」


 思わず声をあげる。


 ブラックドラゴンは楽しそうに、


「我らが魔王が魔核を心臓に打ち込み復活させたのだよ! まあ処置が遅かったおかげで記憶は何も残ってないがな」


 レンと呼ばれた男は構えを取る。



 ミオに鎧は破壊され、上半身裸の男の心臓の位置には、ドクンドクンと動く肉の塊があった。





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