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勇者の弟12歳  作者: 山吹向日葵
第六章
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vs魔王ゾルマ

今日の分の2回目の更新です。

楽しんでいただけたら幸いです。


 僕は扉を開ける。


 そいつはそこに居た。


 闇よりもなお黒く、暗闇の中に赤い目が光る。


 僕は理解した。こいつは悪そのものだ。


 生きとし生けるものの敵。絶対的な悪。

 人とは永遠に理解しあえない存在。


 全身が闇に燃えている。人にとっては絶望でしかない存在。


 その絶望が口を開く。


「人か……? 何者だ」


 僕は短剣を四本取り出し、ライトの呪文を掛けて天井の四隅に投げる。


 王座の間は明かりに照らされた。


 王座の右に氷の塊がある。姉さまだ! 

 待っていてください。すぐに開放して差し上げます。


「魔王ゾルマよ。姉さまを返してもらいに来た」


 僕は古竜の牙を左手に、右手に虹色のトンカチを構える。

 みんなが各々の武器を抜く音が王座の間に響く。


「ほう。そういえばレダが言っておったな。勇者の弟が魔華四天王を倒して回っていると」


 ゾルマは顎をさすりながら続ける。


「そうか。本当だったのか。そいつは悪いことをしたな」


「何の話だ」


「いやなに、こちらの話だ。それならばレダを食ってしまったのは早計だったか」


 なんだって!? レダはゾルマに食われたのか!


「まあ何でもよい。もう食うものもいなくなって、丁度腹がすいてたところよ。食い物の方からやってくるとは運がいい。ではたらふく食わしてもらおうか」


 ゾルマは立ち上がった。


「まあ、レダはワシと一緒になれて喜んでおるからな。別に問題はないか」


 ゾルマの首の根元から何かが生えてくる。それは女の生首だ。

 その首は口を開いた。

 

「そうですよ。レダはゾルマ様と永遠に一緒に居られてうれしゅうございます」


 ゾルマは笑う。


「くくく。ではお前たちもワシの一部にしてやろう! 絶望を知るがよい」


 ゾルマの右手に杖のようなものが握られた。


 くる!


『マナ、準備を!』


『はい!』


 ミオとリヨンが無言で僕の前に立つ。


『私たちも!』


 カレン、シズカ、ロミも盾を構えつつ、僕の前に立つ。


 ミランダ、アンリが防御魔法を次々と唱えていく。


 ゾルマが魔力を開放した。



―――氷(ライトニング)電王ノ世界(ブリザード)


 やはりそう来たか!


『マナ、いくよ!』

『はい!』


 僕とマナの声が唱和する!

 僕は中級魔法を神級魔法並みの魔力で唱える。

 マナはエターナルフレアだ。


――――中級魔法『トルネード』!!

――――神級魔法『エターナルフレア』!!


 僕とマナの声が力強くその魔法の名を唱える!


――――神級魔法『『エターナルフレアトルネード』』!!

 

 生まれた火炎竜巻がブリザードをあっさり蹴散らし、ゾルマに迫る。


 ゾルマは杖に寄りかかり、耐えているようだ。

 くそっいまいち効いてるかどうかがわからない。


 マナとリヨンがゾルマへと迫る。

 

「人のくせになかなかやる。それならこれはどうだ」



――――魔封氷牢(コキュートスジェイル)


 僕の足元から氷が僕を閉じ込めようと発生しだす、が、


「ディスペルマジック」


 氷はあっさりと霧散した。


「なんだと」


 声に動揺が見える。


 そこにミオとリヨンがゾルマへと辿り着く。

 よし、計画通りだ。


 僕は姉さまの氷へと向かう。


 ミオが叫ぶ


 “捨て身ひっかき”(マシンガンスラッシュ)!!

 

 ミオは最初から全力か!


 ゾルマは杖で防ごうとするも、防ぎきれず、ミオの攻撃がゾルマを捉えていく。

 ミオとリヨンには魔法が有効なのだが、立て続けに自慢の魔法二つを破られているんだ。

 次の魔法は躊躇してしまうだろう。


 その隙をつく。


 どうやらゾルマは魔法系らしい。

 それならミオとリオンの猛攻でひょっとしたら勝ってしまうか!?


 よし、氷にたどり着いた!  


『今から三十秒だ。ミオ頼む!』


『ん』


 僕はディスペルマジックを唱える。

 やはり完成した氷の棺は先ほど破ったものとは別物だ。僕は湯水のように魔力を込める。


「させるか」


 ゾルマに気づかれた。僕は氷から手が離せない。


 ゾルマの持っていた杖がふっと消滅し、ミオの攻撃を食らいながら、僕を打ち据えようと、両手を鞭に変化させ、十本の鞭がミオを迂回し僕へと伸ばされる。


 僕はふっと笑い目を閉じる。


「!?」


 ゾルマが目を見開いた。


 お前には理解できまい。僕が頼んでミオが返事をした。ならどんなことがあってもミオは約束を守るだろう。

 

 ガツンガツンと音がした。


 目を開けるとカレン、シズカ、ロミが盾でがっちりと僕をガードしていた。

 

「僕もお前に言おう!絶望を知るがいい!」


 僕は呪文を声に出し叫んだ!





「“ディスペルマジック”!!」





 僕の前の氷の棺がパンっと音と共に砕け散った。



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