vs魔王ゾルマ
今日の分の2回目の更新です。
楽しんでいただけたら幸いです。
僕は扉を開ける。
そいつはそこに居た。
闇よりもなお黒く、暗闇の中に赤い目が光る。
僕は理解した。こいつは悪そのものだ。
生きとし生けるものの敵。絶対的な悪。
人とは永遠に理解しあえない存在。
全身が闇に燃えている。人にとっては絶望でしかない存在。
その絶望が口を開く。
「人か……? 何者だ」
僕は短剣を四本取り出し、ライトの呪文を掛けて天井の四隅に投げる。
王座の間は明かりに照らされた。
王座の右に氷の塊がある。姉さまだ!
待っていてください。すぐに開放して差し上げます。
「魔王ゾルマよ。姉さまを返してもらいに来た」
僕は古竜の牙を左手に、右手に虹色のトンカチを構える。
みんなが各々の武器を抜く音が王座の間に響く。
「ほう。そういえばレダが言っておったな。勇者の弟が魔華四天王を倒して回っていると」
ゾルマは顎をさすりながら続ける。
「そうか。本当だったのか。そいつは悪いことをしたな」
「何の話だ」
「いやなに、こちらの話だ。それならばレダを食ってしまったのは早計だったか」
なんだって!? レダはゾルマに食われたのか!
「まあ何でもよい。もう食うものもいなくなって、丁度腹がすいてたところよ。食い物の方からやってくるとは運がいい。ではたらふく食わしてもらおうか」
ゾルマは立ち上がった。
「まあ、レダはワシと一緒になれて喜んでおるからな。別に問題はないか」
ゾルマの首の根元から何かが生えてくる。それは女の生首だ。
その首は口を開いた。
「そうですよ。レダはゾルマ様と永遠に一緒に居られてうれしゅうございます」
ゾルマは笑う。
「くくく。ではお前たちもワシの一部にしてやろう! 絶望を知るがよい」
ゾルマの右手に杖のようなものが握られた。
くる!
『マナ、準備を!』
『はい!』
ミオとリヨンが無言で僕の前に立つ。
『私たちも!』
カレン、シズカ、ロミも盾を構えつつ、僕の前に立つ。
ミランダ、アンリが防御魔法を次々と唱えていく。
ゾルマが魔力を開放した。
――――氷電王ノ世界
やはりそう来たか!
『マナ、いくよ!』
『はい!』
僕とマナの声が唱和する!
僕は中級魔法を神級魔法並みの魔力で唱える。
マナはエターナルフレアだ。
――――中級魔法『トルネード』!!
――――神級魔法『エターナルフレア』!!
僕とマナの声が力強くその魔法の名を唱える!
――――神級魔法『『エターナルフレアトルネード』』!!
生まれた火炎竜巻がブリザードをあっさり蹴散らし、ゾルマに迫る。
ゾルマは杖に寄りかかり、耐えているようだ。
くそっいまいち効いてるかどうかがわからない。
マナとリヨンがゾルマへと迫る。
「人のくせになかなかやる。それならこれはどうだ」
――――魔封氷牢
僕の足元から氷が僕を閉じ込めようと発生しだす、が、
「ディスペルマジック」
氷はあっさりと霧散した。
「なんだと」
声に動揺が見える。
そこにミオとリヨンがゾルマへと辿り着く。
よし、計画通りだ。
僕は姉さまの氷へと向かう。
ミオが叫ぶ
“捨て身ひっかき”!!
ミオは最初から全力か!
ゾルマは杖で防ごうとするも、防ぎきれず、ミオの攻撃がゾルマを捉えていく。
ミオとリヨンには魔法が有効なのだが、立て続けに自慢の魔法二つを破られているんだ。
次の魔法は躊躇してしまうだろう。
その隙をつく。
どうやらゾルマは魔法系らしい。
それならミオとリオンの猛攻でひょっとしたら勝ってしまうか!?
よし、氷にたどり着いた!
『今から三十秒だ。ミオ頼む!』
『ん』
僕はディスペルマジックを唱える。
やはり完成した氷の棺は先ほど破ったものとは別物だ。僕は湯水のように魔力を込める。
「させるか」
ゾルマに気づかれた。僕は氷から手が離せない。
ゾルマの持っていた杖がふっと消滅し、ミオの攻撃を食らいながら、僕を打ち据えようと、両手を鞭に変化させ、十本の鞭がミオを迂回し僕へと伸ばされる。
僕はふっと笑い目を閉じる。
「!?」
ゾルマが目を見開いた。
お前には理解できまい。僕が頼んでミオが返事をした。ならどんなことがあってもミオは約束を守るだろう。
ガツンガツンと音がした。
目を開けるとカレン、シズカ、ロミが盾でがっちりと僕をガードしていた。
「僕もお前に言おう!絶望を知るがいい!」
僕は呪文を声に出し叫んだ!
「“ディスペルマジック”!!」
僕の前の氷の棺がパンっと音と共に砕け散った。




