決戦前
その晩。
宿屋の僕とミオの部屋で武器の点検をしてると、ミオがマナを連れて戻って来た。
「あれ? マナどうしたの? ミオ?」
なんかマナは顔が真っ赤だ。うつむいてもじもじしてる。
ミオはなんか偉そうな感じで話してきた。
「一番はミオにゃ」
えっまさか……。
「マナは何番にゃろ? まあいいかにゃ」
このパターンは……。
「まだ武器の……」
「そんなのいつでもできるにゃ!」
あちょまっああーっ。
僕はまたミオに押し倒された。
…………
……
…
マナが、すごかった……。
***
僕は温泉で口まで入って温まっていた。
カザリアは温泉の町で有名だ。
宿屋にはみんな温泉が付いている。
基本混浴らしい。素晴らしい。
二人は部屋で力尽きたのか寝てしまっている。
二人とも幸せそうな顔だった……。
ミオもマナも、いきなりはどうなんだ。心の準備とかあるよね! 普通は!?
もうちょっとこう、ムードとかさ……。
ん? 誰か来た。
あ、ミモザだ。
ミモザは僕を見つけると、小走りにやって来た。温泉にぽちゃりと入り、僕の隣まで来る。
「オルター様見つけました!」
僕はぶくぶくと返事する。
「もう、そんなことしてると、またのぼせちゃいますよ」
よいしょっと。と、僕の姿勢を正す。ついでに僕の唇にキスをする。
「ミモザも温泉好きなの?」
ミモザは僕の隣に座る。
「ええ。好きになりました。大好きな人にも会えますし」
ミモザはすまして言った。
「今日は星がきれいですね」
僕は空を見上げる。
日本の都会ではありえない星の数だ。
もちろん日本で見れるような星座は一つもない。
ミモザは僕の手に自分の手を絡ませてくる。
そのまま一緒に空を眺める。
あ、流れ星。
「流れ星は女神の流した涙と、私の国では言われてるんですよ」
そうなのか。
「僕の住んでたところでは、鍛冶の神様の鍛冶場からもれた炎の欠片と言われてます」
「ドワーフっぽいですね」
と、ミモザはくすっと笑った。
僕らは唇を重ねる。
「流れ星が消える前に三回願い事を言えたら、願いが叶うとも聞いています」
「それは面白いですね。次見えたら言ってみます」
僕らは空を見上げる。
そうしてまた静かな時間が流れた。
「流れ星、来ません」
「そうだね」
「願いは願うものではなく、自分で掴み取るものかもしれません」
「そうかも」
「じゃあ、今の私の願いをかなえてもらえますか?」
ミモザは僕の投げだした足の上に跨る。
僕らはまた、唇を重ねた。
***
翌日
僕は紅の牙に稽古をつけることにした。
冒険ギルドの訓練所を借りる。
一対五だ。
“紅の牙”は、
カレン(戦士)、シズカ(剣士)、半巨人族のロミ(戦士)、セルフィ(魔法使い)、ミランダ(僧侶)
だ。
僕は魔法と闘気で守備を固める。
武装は右手に虹色のトンカチ、左手は今日は盾を持っている。
「よし。かかってきて」
「いきます!」
「「「「よろしくお願いします!」」」」
シズカが居合を放つ。
「“彗星”切り!」
うおっいきなり来たか! 僕は盾で弾く。
そこにカレンが特攻してきた。
上段から袈裟懸けだ。
僕はそれも盾で弾く。
体勢を崩したカレンの盾に思い切り蹴りを入れて、吹き飛ばす。
そこにロミの戦斧だ。
速い! ていうか手加減してなくないか! めっちゃ怖い!
僕は飛び上がってかわすと今度はセルフィのファイヤーボール。
ロミは一瞬でバックステップで後方へ逃げている。
いいコンビネーションだ。
僕はファイヤーボールをトンカチで叩いて消滅させる。
そのまま前へ出て、シズカの剣を闘気剣で叩き落とす。
闘気剣を地面へ刺し、シズカの懐に入ると一本背負いで地面へたたきつける。
闘気剣を取り、ロミの戦斧を交わしながら、向かってきたカレンにファイヤーボールを手加減して放つ。
僕は盾を投げ捨て、左手に闘気を強く纏わらせ、横薙ぎに振るわれた戦斧を掴む。
そのまま驚愕の表情のロミを足を払って転ばせ、カレンに向かう。
一対一だ。僕はトンカチを放し、手加減した“流星拳”を入れて吹き飛ばす。
ん。全員倒れている。
うん、ミオには及ばないかもしれないが、僕の強さもかなりのものだ。
よーし、少しみっちり鍛えようか。




