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勇者の弟12歳  作者: 山吹向日葵
第五章
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聖女アンリ3

遅くなりました。ごめんなさい!


 僕は慌てて否定する。女神さまにキスなど恐れ多い。


「いえ、あれはキスではないですよっ」


 聖女アンリは目をぱちぱちさせると、僕の事を手招きした。


 近づいた僕の首に手を回すと、僕を引き寄せ、唇に自分の唇を一瞬合わせる。


「ではこれがキス? 今のは二回目でしょうか、ファーストキスでしょうか?」


 と、聖女のくせに小悪魔っぽい笑みを浮かべた。

 クスクス笑いながら、


「それではみなさんを呼んできてくださいな」


 同じ聖女でも、アンリはミモザのような少し堅苦しい雰囲気ではなく、もっと開けっ広げな性格のようだ。




 ***




 アンリは領主に礼をすると、作戦会議をするために全員集まることになった。

 

 僕らは領主の館の円卓に揃って座っている。

 

 領主ヘルムート、僕オルター、マリーナ、ミオ、ミモザ、ティーリン、マナ、リヨン、ラフェ、アンリ、で、ティノだけは席を外している。

 

 紅の牙から、カレン、シズカ、ロミ、セルフィ、ミランダ。


 以上十五人だ。


 こうしてみると結構な戦力だ。全員冒険者ランクで言うなら最上位のSランクに相当するだろう。 


 で、今後の予定だ。


「僕はすぐにでも姉さまを助けに行きたい。僕らの今の状態なら十分な戦力になっていると思う。アンリ様、どう思いますか?」


「そうですね。聞いた限りでは、強さ的にもオルター、ミオさんはすでに勇者アンフィを越えていると思います。あのガレスを一対一で降してしまうとは、想像もつかない強さです」


 アンリは僕、それからミオを見ると言った。


「ただ、魔王に攻撃が届くかと言われると、勇者の光魔法がないときついと言わざる負えません。私たちの攻撃は一切魔王に届きませんでした」


 マナが重々しく頷いて、


「私の呪文では、魔王の呪文を破れませんでした。いや、あれは呪文ではなくスキルだった可能性もありますが。オルター様の魔法でなら打ち破れると思います。私の魔力もかなり上がっているので、今度こそはと思いますが」


 僕が続ける、


「ただ、姉さまの氷の封印を破るためには最低でも三十秒、出来れば一分は魔王をひきつけてほしい。ミオとリヨンでいけるか?」


「余裕にゃ。ご主人様のためなら、1分だろうが2分だろうが頑張るにゃ。防御寄りに相手をすれば、ミオとリヨンで行けると思うにゃ」


 そこでカレンが、


「我々は、前回のように雑魚相手に戦おうと思うが、魔王戦で相手ができるようであれば、盾として扱ってほしい。覚悟はできている。私カレン、シズカ、ロミは前衛でいける」


 僕は頷いた。

 

「ただ、心配することが一つある。逃がしてしまった武闘家のあいつだ。あいつが出ると最低でもミオは動けなくなる」


 僕は黒いローブの武闘家の話をする。


 アンリが呻く。


「そんな敵が……。私も知りません」


「その時は私とリヨンと紅の牙の三人で相手するわ」


 ティーリンが言った。


「この時のために作ってもらったオリハルコンのレイピア。この武器の効果は防御力無視。たとえ黒い炎が阻んでも、確実にダメージを与えられる」


 みんなが驚愕する。そんな効果を付けられるのか! 


「ハイエルフには誰にも言えない秘伝があるの。そのうちの一つを使って作ったわ。そうそう作ることはできないけど。運が良かったわ」 


「じゃ、ミオがダメならティーリンに前衛は任せる」


 ティーリンは頷いた。


 マリーナが、


「バンロに帆船を出してもらい、鹵獲したガレオン船と二船で行くのはどうだろうか」


 と言うと、領主ヘルムートが、


「出すだけでいいなら、私の権限だけでも出せる。戦わないでいいのなら問題ない」


「鹵獲したほうの船員も用意してもらいたいのだが可能か?」


「うむ。その点も問題ない」

 

「よし。では最短でいつになる?」


「船員と食料などを準備するのに急がせるが、五日は欲しい」


「では五日後に。みんないいかね?」



 皆、頷いた。特に問題はない。



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