聖女アンリ
短いですがきりが良かったのでここまで。
今日の夜、24時前にもう一度更新します。
巨大なドラゴンが人の姿に変わっていく。
先ほどまで竜の体があった場所に、白いワンピースを着た、腰ぐらいまでウェーブのかかった髪がある少女が床に倒れている。
半透明だ。
僕は近づいて聞いてみる。
「まだやりますか?」
……。
幻竜女王はのそりとゆっくり立ち上がった。
うう、比べちゃ悪いけどバンシーみたいで怖い。
無言が怖いよ。
ゆっくりとこちらを向くと、うつむいたまま、上目づかいで言った。
いちいちしぐさがなんか怖いよ!
「いい……。私の負けだ」
よしやった!
「……。では魔法を授けよう」
幻竜女王は僕の額に指先でそっと触れると、もごもごと呪文を唱えた。
僕の頭の中に、知らない魔法への知識が流れ込んでくる。
ん。おお! これはすごい。
今回もらった魔法は“重力魔法”だ。
任意な物や場所の重力を操ることが出来る魔法だ。空間に掛けることも、物体に掛けることもできる。
今まで風魔法で無理やり飛んでいたものを、これからは重力魔法で飛ぶことが出来る。
これはありがたい!
ティノ、ミモザ、マナ、ミランダにももらってもらおう。
そうだ、一応聞いてみる。
「何か技をもらうことは可能ですか?」
「残念ながら私は技を持っていない。すまないな」
「いえ、すごい魔法をもらえたので満足です」
「それはよかった。では我は少し寝る。そなたの目的が達成されるように祈っておこう」
「ありがとうございます」
僕らは目の前にでたゲートにて地上へと移動した。
よし、急いで帰ろう。
ラフェがレッドドラゴンに変化する。
<乗りなさい>
「ラフェ、ありがとう」
僕らはラフェに乗り、ラフェは翼をはためかせ、飛び上がった。
***
港町カザリア
宿屋に直行する。
おかみさんに「ただいまです」と声をかけ、マリーナの部屋へ行き、ノックをする。
「どうぞー」
マリーナが顔を出した。
「お、帰って来たか。首尾はどうだい?」
「ばっちりです」
僕は水色の実を取り出しマリーナに見せた。
「よし。間違いない。では領主の館に行こうか」
僕らは駆け足で領主の館を目指す。
急いで屋敷に入るとメイドさんが驚いてる中、客間に急ぐ。
アンリはやはり寝ていた。
ほっとした。
「それで、これをどうすればいいんですか? 一応6個取ってきました」
「よし。ひとつ貸してくれ」
マリーナはアンリの口を開け、その上でかくりょの実を握りつぶす。
青い液体が握った拳からアンリの口へ滴り落ちる。
「んー。やっぱ口を湿らせる程度じゃだめかな? もう一個行こうか。オルター次は口移しで飲ませてやってくれ。気管に入らないように操作して」
「ええっ、……わ、わかりました」
なんか視線が痛い気もするけど気のせいだよね!
僕は口の上でかくりょの実を握りつぶし、青い液体を口に含む。
口移しでアンリの口に流し込む。
気管に入ると大変なので水流操作で食道へ流し込む。
アンリの体がうっすら青白く光る。
光が収まると、アンリはゆっくりと目を開けた。
そして、
「ここは……?」
焦点の合わない目でぽつりと言った。




