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勇者の弟12歳  作者: 山吹向日葵
第五章
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聖女アンリ

短いですがきりが良かったのでここまで。

今日の夜、24時前にもう一度更新します。


 巨大なドラゴンが人の姿に変わっていく。


 先ほどまで竜の体があった場所に、白いワンピースを着た、腰ぐらいまでウェーブのかかった髪がある少女が床に倒れている。


 半透明だ。


 僕は近づいて聞いてみる。


「まだやりますか?」


 ……。


 幻竜女王はのそりとゆっくり立ち上がった。


 うう、比べちゃ悪いけどバンシーみたいで怖い。


 無言が怖いよ。


 ゆっくりとこちらを向くと、うつむいたまま、上目づかいで言った。


 いちいちしぐさがなんか怖いよ!


「いい……。私の負けだ」


 よしやった!


「……。では魔法を授けよう」


 幻竜女王は僕の額に指先でそっと触れると、もごもごと呪文を唱えた。


 僕の頭の中に、知らない魔法への知識が流れ込んでくる。


 ん。おお! これはすごい。


 今回もらった魔法は“重力魔法”だ。


 任意な物や場所の重力を操ることが出来る魔法だ。空間に掛けることも、物体に掛けることもできる。


 今まで風魔法で無理やり飛んでいたものを、これからは重力魔法で飛ぶことが出来る。


 これはありがたい!


 ティノ、ミモザ、マナ、ミランダにももらってもらおう。


 そうだ、一応聞いてみる。


「何か技をもらうことは可能ですか?」


「残念ながら私は技を持っていない。すまないな」


「いえ、すごい魔法をもらえたので満足です」


「それはよかった。では我は少し寝る。そなたの目的が達成されるように祈っておこう」


「ありがとうございます」


 僕らは目の前にでたゲートにて地上へと移動した。


 よし、急いで帰ろう。


 ラフェがレッドドラゴンに変化する。


 <乗りなさい>


 「ラフェ、ありがとう」


 僕らはラフェに乗り、ラフェは翼をはためかせ、飛び上がった。





 ***





 港町カザリア


 宿屋に直行する。


 おかみさんに「ただいまです」と声をかけ、マリーナの部屋へ行き、ノックをする。


「どうぞー」


 マリーナが顔を出した。


「お、帰って来たか。首尾はどうだい?」


「ばっちりです」


 僕は水色の実を取り出しマリーナに見せた。


「よし。間違いない。では領主の館に行こうか」


 僕らは駆け足で領主の館を目指す。


 急いで屋敷に入るとメイドさんが驚いてる中、客間に急ぐ。


 アンリはやはり寝ていた。


 ほっとした。


「それで、これをどうすればいいんですか? 一応6個取ってきました」


「よし。ひとつ貸してくれ」


 マリーナはアンリの口を開け、その上でかくりょの実を握りつぶす。


 青い液体が握った拳からアンリの口へ滴り落ちる。


「んー。やっぱ口を湿らせる程度じゃだめかな? もう一個行こうか。オルター次は口移しで飲ませてやってくれ。気管に入らないように操作して」


「ええっ、……わ、わかりました」


 なんか視線が痛い気もするけど気のせいだよね!


 僕は口の上でかくりょの実を握りつぶし、青い液体を口に含む。


 口移しでアンリの口に流し込む。


 気管に入ると大変なので水流操作で食道へ流し込む。


 アンリの体がうっすら青白く光る。




 光が収まると、アンリはゆっくりと目を開けた。


 そして、


「ここは……?」


 焦点の合わない目でぽつりと言った。




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