表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
勇者の弟12歳  作者: 山吹向日葵
第五章
65/379

夢幻の墓場

 一週間。


 アンリは目を覚まさなかった。


 僕らは宿屋の一階で朝食をとりながら話し合いだ。


「エリクサーで効果がないとなると、私にはお手上げだね」


 マリーナはエリクサーを使ったが、それすら効果がなかった。


 マリーナが匙をなげる。


 ミモザが、


「心と体は何も問題がありません」


 と言うことは、残るのは魂に問題がある、と言うことだろうか。


「魂に影響を与える魔法や道具、そんなものがあるんですか?」


 マリーナに聞く。 


「たとえば原因とみられる、女神降臨。これは魂さえ削って唱える魔法だね」

 

「と言うことは、魂のエネルギーが足りてない、と言うことですか?」


「まあそういう予測は立つが……。まてよ……。アストラルサイドからの回復か。ありうるな……」


 マリーナは考え込んだ。

 ふと、何か心当たりがあったらしい。一つ頷くと、


「レイスが持っている、かくりょの実。唯一、錬金素材で実態がよくわかってないものだ。効果は精神力を復活させる。が、しかしこれはかくりょの実の効果の一部らしい。この実は魂にすら影響があると言われている」


 おお。さすがマリーナ。僕は答える。


「取りに行きます。どこに行けば?」


「狙って取ってくるならダンジョンしかないね」


 カレンが呻く。


「まさか……。あそこですか。……夢幻の墓場」


 マリーナが頷く。


「そう。全階層実体の無いモンスターの巣窟。ここで力尽きた冒険者はそのままゴーストとなって永遠にダンジョンをさまようという」


 うわなにその最悪のダンジョンは。


「そのせいでもっとも人気のないダンジョンだね。全十階層と言われてるが、ダンジョンボスが何かわかってないからそれも眉唾だ」


 カレンが懐から紙の束を取り出す。


「む、む、夢幻……。あ、ありました!」


 カレンが取り出したのは夢幻のダンジョンマップだった。いつも持ち歩いてたのか……。


「場所はシーサの南東だね。行くメンバーは、オルター、ティノ、ミモザは決定で、紅の牙から僧侶ミランダいいかい?」


 カレンが頷いた。と、マナが立ち上がった。


「私も行かせてください!」


 マリーナは驚いたように、


「わ、わかった。では、オルター、ティノ、ミモザ、マナ、ミランダ。このメンバーだね」


「僕が竜になれば数時間で行って帰れます」


 ラフェが口を出した。


「それは私がするわ。あなたはあんまり竜化しないほうがいい」


 ラフェ居たのか。ラフェはしょっちゅういなくなるから、いるかいないかよくわからないんだよね。


 僕はカレンからマップを受け取ると、


「わかった。じゃあラフェにお願いするよ。よし。おかみさんにお弁当作ってもらったら出発します。善は急げだ」


 



 ***





 夢幻の墓場一階。


 ここはごつごつした赤い岩肌のダンジョンだ。

 カレンのメモによるとここのモンスターは、わずか四種類。


 ゴースト、バンシー、レイス、ワイト、のみ。


 ただし、ゴーストは生前の力をパワーダウンはするものの使うことが出来、魔法使いのゴーストなどは非常に厄介だ。

 バンシーは、悲鳴を上げて、精神に直接ダメージを与えてくる。

 レイスは掴まれると精神力を吸われてしまう。霊体であるから壁の中からいきなり出てきたりする。

 ワイトは他のモンスターの親分格だ。王様のような恰好をしていて、他の悪霊たちに命令をすることが出来るらしい。リッチの幽霊バージョンみたいなものか。


 一階から五階までは、ゴーストのみだった。


 僕らはホーリーシンボルを掛けた武器で次々とゴーストたちを退けていった。

 効きそうなのに、闘気剣は効かなかった。

 

 しょうがなく、トンカチに直接ホーリーシンボルを掛けて殴っていく。

 まあそれでも一撃で倒せてしまうので、もしかしたら最初から魔力を宿しているヒヒイロカネは、それだけで霊体にダメージを与えることが出来るのかもしれない。

 

 試してみようとは思わないが……。

 

 気配察知のスキルが役に立つ。

 これのおかげで壁の中からいきなり現れるモンスターも、事前にどこから来るか知ることが出来る。


 六階、七階はゴーストにバンシーが混ざってきた。


 バンシーは霊体のくせに壁抜けが出来ないらしく、能力は厄介なのだけど、見かけた瞬間に遠くからホーリーライトの呪文で消滅させることが出来た。

 やはり僧侶が二人だと安心できる。

  

 八階への階段の前に休憩所があった。ここも、部屋になっていて、真ん中に小さな噴水がある。

 今日はここで休むことにした。


 次の階層から目的のレイスが出てくるのだけど、みんなの魔力もだいぶ減っているので、休ませることにした。


 みんなで宿屋のおかみさん特性のお弁当を食べる。


 「じゃ、順番で見張りにしましょう。ミランダさんからね」


 「はぁい」


 ミランダさんは紅の牙の僧侶だ。あんまり話したことはないけど、おっとりした性格だ。

 あらあら言いながらメイスで敵を消滅していってた。


 今日は、ミオがいないからなんかさみしいなぁ、と思ってティノの後ろに横になったら、マナが僕の後ろに丸くなってくっついてきた。


 「今日は私がミオの代わりをしますね」


 と耳元で小声でささやかれた。


 ミモザがしまった! みたいな表情になってた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
script?guid=on
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ