模擬戦と新しい技
明日は一日二回更新します。よろしくお願いします。
僕らはカザリアに向かって馬を走らせている。
カザリアにはおよそ半日で着くはずだ。
「そろそろ休憩にしよう」
お日様が真上だ。
僕はティノから降りる。
宿のおかみさんに作ってもらったサンドイッチをお昼に食べながら、ふと思いついたことをミオに言ってみる。
「ミオ、ちょっと僕と手合わせしてみない?」
「ご主人様とかにゃ?」
「うん。自分がどのくらい強いか確かめておきたいんだ」
それでリヨンとの強さの差もわかるしね。
「やるにゃ!」
あ、なんかミオやる気満々だ。
「武器は無しでね? 素手でやろう」
「いいにゃんよ!」
僕らはサンドイッチを食べ終わると、立ち上がって向き合った。
みんなが興味深げに見守ってる。
「行くよミオ。お手柔らかにね」
「いつでもいいにゃんよ」
ミモザが、
「思いっきりやっても大丈夫ですよ。死なない限り癒しますから」
よ、余計なことをっ。
うう。ぼこぼこにされる予感。
よし!
先手必勝!
僕はミオの懐に飛び込み、渾身の、
“彗星拳”!!
ミオは上体を思いっきりそらし、避ける!
この距離で避けるかっ!! パワーワードまで唱えたのに!
そのまま僕の顎にサマーソルトキック!
チッと鼻先を掠めていくミオのつま先。
あっぶねっ。
体勢を崩されよろめく僕に、一回転したミオは、追撃で左手の爪を袈裟懸けに振り下ろす。
僕は避ける! 体勢を立て直す!
「にゃっ!」
ミオはそのまま流れるように右手の突き!
左肩の鎧で防ぐ、が、その姿勢のまま1mぐらい押される。
ここで体勢をもう一回崩すとそのまま押し切られてしまう。
やばいリーチが全然違うから、僕の攻撃が届く気がしない。
なんとか威力のある連打で一度引き離したい!
その時、ぼくの頭の中を閃くように新しい技の予感が走った。
なぜだが、おそらくこの予感は正しいとの確信がある。
「ミオ、いくよっ」
「にゃ!?」
僕はパワーワードを唱える!
“流星拳”!!!
一秒間に何発もの流星のごとく繰り出される僕の拳撃!
さすがのミオも両手を胸の前でボクサーのように防御する。
が、僕はお構いなしだ!
パワーワードと技が一致したからか、連撃を止めることなく繰り出すことが出来る!
防御をこじ開けるように連撃を繰り出し、ついにはミオの両手を跳ね上げさせる。
この前のリヨンとミオとの模擬戦でのちょうど逆だ。
驚愕したミオの顔、防御があいた腹部に、
“彗星拳”!!
を、寸止めする。
……。
……。
時間が止まる。
これは寸止めしなければ確実に彗星拳は入っている。
ミオが目を丸くしている。
「ま、まいったにゃ」
まじかっ!? ミオに勝ってしまった。
自分が一番驚く。
「ご主人様、すっごい技だったにゃ!」
「ああうん、なんかふいに思いついたんだよ」
それを見ていたマリーナが感慨深げに、
「新しい技を思いつくとは、オルターの歳では考えられないね。さすがは勇者の弟と言ったところかね」
マリーナによると、普通は何年も研鑽を積んだ武術の達人が、新しい技とパワーワードの組み合わせを作り出すらしい。
「やっぱご主人様はすごいにゃ」
ミオは尊敬のまなざしだ。
よかったミオに幻滅されなくて……。
これでまだ僕の矜持は保たれるよ。
僕らはカザリアに向かって馬を走らせる。
僕とマリーナはユニコーンのティナとリアンだ。
どれくらい進んだだろうか。
進行方向に煙が上がっている。
「マリーナッ!あれは襲われてないか!」
僕は焦ってマリーナに言う。
「いけない、これは予想が当たってるんだろうね」
「僕らが先に行きましょう!」
僕は言う。
「ミオ、ティーリン、こっちに乗って!」
「はいにゃ!」
「わかったわ!」
ミオは素早く猫に変化すると馬の背から僕のほうへと飛び移る。
ティーリンも自分の馬の上に立ち、重さを感じないふわっとしたジャンプで僕の後ろに飛び乗る。
「僕らが先に行きます。ミモザが指示を! リヨンはミモザの言うことを聞くように!」
「はいっ!」
「状況によって、撤退も考えるように!」
「わかりました!」
ミモザが真剣なまなざしで頷く。
「ではカザリアで会おう!」
ティノは本気を出して走り出し、景色が流れるように過ぎていく。
僕は心の中で祈る。
どうか間に合いますように。
戦闘シーンがうまく書けてるといいのですけど。




