ユニコーン2
城が見えた時点で僕らは山へ入る。城はまだ健在だ。
僕は少しほっとした。
するとリアンが、
『ここで我が妹と契約しよう。そのほうが良いだろう』
そういうと僕の返事を待たず、額の角に光がともる。
「えっ何が起こったの?」
僕が背から降りると、ティーリンもリアンの背から降りた。
リアンの角から魔法陣が出現する。リアンが二歩下がる。と、魔法陣が光り、新たなユニコーンが魔法陣から出現した。
リアンより少し小さく、角もリアンの半分ほどだ。リアンは銀色っぽい体と鬣なのだが、新たなユニコーンは純白の体に、鬣が純白と若干金色だ。
『私の名はティノ。あなたがオルターね。さあ、契約を』
と、ティノと名乗ったユニコーンは思念を飛ばしてくる。
僕は頷くと、ティノに向かい魔法陣を描く。
それから魔力をこめる。
「オルター・ドヴェルグの名において命じる。これよりユニコーンのティノは私の従者となりて、そのすべてをささげることを誓うと」
『誓います』
ティノは私の前に角を差し出す。
僕は、左手の小指を噛んで、血を一滴角に落とす。
すると僕の血は角に吸い込まれた。
魔法陣は光を放つとそのまま小さくなりそれもティノの角に吸い込まれる。
『これからよろしくお願いします。我が主よ』
「こちらこそ」
「え? なに? なになに? なにオルターユニコーンと契約してるの? えっどういうこと?」
「いや僕のことを気に入ってくれたユニコーンがいたんだよ」
ティーリンは目を大きく見開いて小さく言った。
ずるい……
あ、やばい。ティーリンの機嫌を損ねたっぽい。このままじゃ碌なことにならない。
僕は慌てて、
「じゃ、じゃあ、落ち着いた所に行ったら、何か武器を作ってあげるよ」
「……オリハルコンよ。……オリハルコンで作った武器よ!」
「わ、わかったよ」
ここはしょうがないな……でもなんでティーリンは僕がオリハルコン持ってること知ってるんだ。
『よし。ではカンザンまで行くとしようか』
「そうね」
リアンにティーレンが飛び乗り、僕はティノに乗る。
二頭のユニコーンは木々の間を飛ぶように走りだした。
***
カンザンは山の中腹にある強固な城だ。その門の前に展開した兵たちがおり、敵に囲まれている。
なるほど、確かに人間たちが先陣だ。あとはゴブリンか。
「どうしようか。強行突破で行きたいな」
「いい意見ね。私も賛成だわ」
僕は背負っている袋から小さな木で作った魔法のスティックを取り出した。
左手にオリハルコンのトンカチ、右手にスティックだ。
ティーリンは弓と矢を手に持つ。
「風の精霊に矢避けの魔法をかけてもらう。これで弓矢は気にしなくていいわよ」
ティーリンが手のひらを上に向けると、わずかに緑色の人型の精霊が見えて消えた。
「僕も防御魔法を掛けるよ」
ティーリンと僕を中心に六角形の組み合わされた半透明の球体が出現した。そのまま透明の障壁となる。
城の入口まで力づくで突破する。とすると強力な全体魔法だな。しかし人間を殺したくない。
僕は使う魔法を決めた。
「僕が前衛を無力化するよ。ティーレンは後衛の魔族を狙えるかい?」
「わかったわ。大きなのを二体召喚する」
「じゃあ召喚が終わったら突撃しよう」
「了解」
僕は唱えた魔法を開放する。
―――――――超級魔法“スリープフォッグ”
たちまち濃紺の霧がスティックからものすごい勢いで発生し戦場を走る。
霧に包まれた敵兵は、次々とその場で眠り込む。カンザンの前衛たちは何事だ、と呆然とする。
ティーリンが魔法を開放する。
―――――――精霊帝召喚
風をまとった巨人と水でできた衣を着た巨人がティーレンの前に現れる。
精霊帝とは精霊の最高位に位置する存在。それを召喚するのはハイエルフのみに許されている。
風の精霊帝と水の精霊帝は、後衛へ襲い掛かる。
水の精霊帝は水のないところに濁流を起こし敵を押し流す。
風の精霊帝は猛烈な風を起こし後衛の魔族たちを文字通り吹き飛ばす。
その隙にユニコーン達は霧の上を走りあっけなく城門へたどり着く。
「賢者マリーナの弟子オルター! 助っ人に来ました!」
兵士たちは呆気にとられ僕たちを見ていた。




