vs盗賊
山道から街道に出て街道を東に歩く。
目指すは独立国家城塞都市ランドルだ。
ハイドワーフの里で作られた武具は、古の契約により主にランドルに売り払われる。
もとは小さな町だったその都市は、唯一ハイドワーフと取引が行われたことから、あっという間に大きくなり、堅固な城塞都市となったのだ。
ハイドワーフは武具をランドルに収め、酒と貨幣を得る。そんな取引を何百年も行ってきた。
ハイドワーフ程ではないが、エルフも工芸品を持ち込むため、工芸品の取引が盛んな都市となっている。
僕も師匠のお供で何回か行ったことがある。
街道を歩き3時間ぐらいたったころだろうか。
剣戟の音が聞こえてきた。マリーナが手を横にし、僕たちを止める。
そして目をつむった。
「……盗賊だね。十二、十三人ぐらいか。馬車を襲ってる。護衛が戦っている。ああ、これはダメだね。盗賊に魔法使いがいる」
「大変だ、助けに行きましょう」
マリーナはじっと僕を見つめた。そしてあきらめたように顔を振った。
「確かに経験を積むというにはいいかもしれないね。二人でやってみなさい。危なかったら止めるよ?」
僕とティーリンは顔を見合わせ、頷くと一緒に駆け出した。
僕とティーリンは馬車まで走る!
僕は街道、ティーリンは道ではない木々を伝わって、それでも僕の全速力と同じぐらいの速度で馬車へと向かう。
魔法が届く限界まで近づくといったん止まる。
「助太刀します!」
僕は大声でそういうと、馬車に防御魔法を使う。
馬車を中心に六角形を組み合わせた半透明な結界をドーム型に展開する。
結界は馬車に半分乗り込んで中の者を引っ張り出そうとしていた盗賊を、結界の外まで弾き飛ばす。
護衛五人のうち、1人は地面に倒れて動かない。血がジワリと地面に広がってゆく。
そこで僕は大変なことに気づいた。
武器を持ってない!!
小刀は袋の中だ。さっき走り出したときに置いてきてしまった。
やばいどうしよう……。
魔法を使おうにも発動体を持っていないので、攻撃魔法など微々たるダメージしかいかないだろう。
それでも牽制にはなるかな!?
などと目まぐるしく考えていると、ふと腰から吊り下げていたトンカチがあることを思い出す。
あわててトンカチを腰から外し、身構える。
右手にオリハルコンのトンカチ、左手にミスリルのトンカチだ!
それを見た盗賊が爆笑する。
「武器はトンカチだってよ!」
ゲラゲラ笑われた。くそー
「あとで相手してあげるからちょっとまっててねー」
盗賊たちは笑いながら視線を護衛たちに戻す。
僕は全力で走り出す。
一人の盗賊がにやにやしながら、こちらを向いた。
「ちょっと遊んでやるか」
「傷つけるなよ!子供は高く売れるからな」
「わかってらい」
盗賊が蛮刀を僕に向けてふるう。峰打ちだ。生け捕りにするつもりらしい。
僕は振り下ろされる蛮刀にむかい白刃どりのような形で両手のトンカチをふるう。
金属と金属が触れ合う甲高い音とともに、蛮刀は刀身の半ばで折れ飛んだ!
盗賊は呆気に取られて一瞬動きを止めた。
その一瞬で十分だった。
僕は瞬時に盗賊のわきに入り込み、同時に盗賊の心臓の位置にトンカチをふるう。
一秒間に左右で二十発以上のトンカチの連打だ!
「あふぇぅ!! 」
盗賊は体上の金属鎧を粉々に分解させ、きりもみしながら吹っ飛んだ!
隙をついて、隣にいた盗賊と隣の隣にいた盗賊も、同じように、トンカチで連打をいれる。
「ほぅおふ」
「おひゅぅお」
盗賊たちは、変な声を出しながらくるくると宙を舞った!
「こ、こいつ! 」
慌ててこちらを向いた盗賊も
―――遅い!
「もゅぅあああん」
連打で吹き飛んだ。
次の盗賊は蛮刀を僕の頭に向けて振り下ろした! 今度は峰打ちじゃない本気だ!
でも全然遅い!
僕は左右両方のトンカチで蛮刀を先の方から1㎝単位で削り取っていく!
盗賊が振り抜いた刀にはつばと持ち手しか残っていなかった!
「なんだとおおおおおおおおおお」
間髪入れず胸に連打を受けた盗賊は、やはりきりもみしながら吹き飛んだ!
「ぎゃっふぅぅん」
あとは簡単だった。
僕は縦横無尽に盗賊たちの間を走り、刀を片っ端から折っていった。
盗賊たちにしてみれば、もうどうにもならなかった。
刀で斬ろうとすれば刀を折られ、素手で殴ろうとすればトンカチで打たれる。
打たれた盗賊はみんなきりもみしながら吹き飛んでいく。
「むっほぉおおぉお」
「ちょまぁぁぁふぇ」
「そこぉうひぃ」
しかしそこで魔法が飛んできた。
油断していた。
すでによけれる距離ではなく、大きな火の塊が目の前に迫ってくる。
もうどうにでもなれ、と右手のトンカチで火の塊を叩く!
ぼふん
ファイヤーボールはオリハルコンのトンカチに叩かれると消滅した。
「なななにいーーーーーっ! 」
魔法使いはそこで森の中から飛び出したティーリンに剣の柄で頭を殴られ倒れ伏した。
……
…
気が付いたら盗賊は一人しか立っていなかった。
ちょっと豪華な鎧を着てるし、こいつが盗賊の頭だろう。
「お、俺の武器は折れねえぜ。魔法の刀だからな!」
確かに刀が薄く光っている。強化系の刀だな。
しかし…
「おっふぅぅぅぅぅん」
うん、結果は一緒だった。刀は粉々に砕け、変な声を上げながら吹き飛んでゆく。
ふと僕は視線を感じそちらを見ると、
「ジト~」
ティーリンがジト目で僕を見てた。
僕は焦った。
そいえばティーリンは全然戦闘に参加してなかった。
魔法使いをどついただけだ。
慌ててフォローを入れる。
「ティーリンありがとう。厄介な魔法使いを押さえてくれて、助かったよ」
そう言うと少し気をよくしたのか、次はもっと敵をよこしなさいよ、と言われた。
ティーリンは意外と好戦的だった…。
倒れていた護衛の男は、回復魔法の使える仲間に魔法をもらって、何とか一命はとりとめた。
もう少し遅ければ危なかったらしい。




