月夜の白雪
僕とリリアンはリンサを連れ、白羅城へと帰ってきた。
僕の仲間には、「世話になる。よろしく頼む」と簡単に挨拶だけで済ませ、しかし挨拶だけですまなかったものが居た。
白龍の王、碧炎王だ。
「まさか仙人リンサ様か!蓬莱山に住から降りてこられたのか!」
「ふふん。白龍の王か。今回の件はすまなかったな。気づくのが遅れたわ」
いや、僕は知ってる。
今回は僕らがいることで、リンサは邪神との戦いを僕らに任せていたという事を。
「いえいえとんでもない。リンサ様にふがいない所を知られてしまい、これはもう、なんといってよいのやら」
額の汗を拭きながら王があたふたとしている。
うーん、確かに少し頼りない感じの王だな。白龍の王は。
「それで我は蓬莱大陸から離れることになった。蓬莱大陸の事はよろしく頼むぞ」
これには碧炎王も吃驚仰天、
「なぜゆえに!?蓬莱大陸の守護者ともいえるあなた様が一体どちらに」
飛び掛からんばかりにリンサにむかって話しかける。
その気迫に少々押されながら、
「現存している邪神達の動きが気になる。次に邪神共が動き、狙われるとしたら邪神を倒したこの者達だ」
「さようですか……。なるほど、ならば蓬莱大陸よりはラマス大陸の方が邪神に襲われる可能性が高いと」
何やら思案しているが、まさかどちらがより安全か、などと考えているのではないだろうなこの王は。
「にゃにがじゃしんにゃー。ミオがいればみんにゃぽぽぽぽいにゃー」
ミオ、大分飲んでるなー。明日大丈夫かなこれは。
あ、ミモザとマナがつぶれてる。
カレンとシズカもか……。
半巨人族のレミだけまだ残ってるな。
あっそこにぼろきれのようにつぶれてるのはレンじゃないか……。
なにがあったんだ。男の意地はどうなった……。
「おうー、邪神なんてガシンと一発でのしてやるぞー」
リヨンがそう言ってグイっと杯から酒を飲んでいる。
リヨンが言うと冗談に聞こえないからなぁ。
「ふふっ。頼もしい仲間ではないか」
リンサが楽しそうに言う。
「頼りになる仲間たちです」
するとミオが僕の袖をもってお酒の方へと引っ張る。
「オルターも来るにゃー。ユウになればお酒ものめるにゃよ?」
そうだ、本来あるべき大人の僕の姿になればお酒も飲める。
あまり人前で姿を変えたくはないけど、たまにはいいか。
「分かったよ、ちょっとまって」
僕は“竜魔法”を使い、大人の姿になって、宴会に混ざるのだった。
そして皆が酔いつぶれた深夜。
僕は侍女に連れられて、白雪の寝所にやって来ていた。
廊下から部屋に入ると下は畳が敷かれている。
窓がガラスではなく、クリスタルの一枚板をはめ込んだ巨大なものだ。
寒い季節なのに暖かいのは火鉢が置かれているせいか。
「今回の事はなんと礼を言ってよいのかわからぬ」
気にすることはない、と僕が言うと、白雪は月の明かりの中で薄く笑った。
「ラマス大陸との交易を持つことだけで礼になるとはとても思えぬ」
そして肩から着物を落とすと、すらりとした白雪の肌が月の光に照らされ、白くぼうっと光る。
「わらわからの礼じゃ。受け取ってくれるかの」
僕はその幻想的な美しさに見とれ、そっと白雪へと近づいた。
その白い肌へと手を伸ばす。
そして白雪は僕へと体を預けた。




