報告
邪神との戦いは終わった。
黒龍族の主だったメンバーが皆戦死しているため、すんなりと白龍の王と王妃は城へと戻ることが出来た。
今日は盛大な宴だ。
城のあちこちで大樽に入った酒がふるまわれ、みな大騒ぎだ。
ティーリンとマナは二人で話込みながら静かに飲んでいる。
その後ろで、
「もっと持ってくるにゃ~」
「ミオには負けない……」
「男の意地をー見せてやる」
「私も参加します!」
ミオとリヨン、レンの飲み比べに、ミモザが参戦してえらいことになってる。
あそこに近づくのはやめておこう。
僕にはまだやることがある。
マントを羽織った僕を見て、王様と話していた姉さまが声を掛けてきた。
「あれ?オルターどこか行くの?」
僕は頷き、
「ちょっと行くところがあるんだ。姉さま、後はまかせました」
まあ主役の勇者が居れば、勇者の弟が抜けても問題ないだろう。
僕は姫のような着物を着たリリアンの手を引く。
「そうやってまたオルターは女の子とデートするのね。今度は誰?リリアン?」
「いやいやいや!はぐれた時にお世話になった人に挨拶に行くだけだよ!」
姉さまはジト目で、
「どうだかね~」
あ、これはお酒が入ってないか?僕はそそくさと、
「じゃ、まかせたから!すぐに帰って来るよ!リリアン、行くよっ」
「ん」
僕は祝勝会で沸く白羅城を後に、スカイドラゴンへと“変化”し、リリアンを背中に乗せ、夜空に飛び上がる。
今回は何の恐れもなく、堂々と空を飛ぶことが出来る。
雲の上へと飛び上がり、そこから飛び出た山の頂に向け全速力で飛行する。
夜空に満天の星が煌めいている。
あのどれかが地球だったりするのだろうか。
僕は少し感傷的になる。
ここから先は、一番高い山を目指せばいいからわかりやすくていい。
そしてしばらく飛行し、あっという間にリンサの家へと着いた。
僕はリリアンを下ろすと、竜化を解き、人間へと戻る。
家の明かりはついている。
「師匠!!オルターです!」
…………。
ってあれ?返事がない。
僕はドアの取っ手に手を掛けると、後ろに気配が!
慌てて振り返ると、剣の平で手の甲を打たれた。
「あまい!いかなる時にも油断せぬことじゃ」
リンサだ。いつものごとく仮面をかぶっている。
ていうか、どうやって家の外に出たんだよ。
これはあんまりな仕打ちだ。僕は痛さで涙目になりながらも、
「報告に来ました」
そう言うと、
「そうかそうか。まあ家の中に入れ。外は寒いだろ」
そう言って家の中へ僕らを誘った。
僕は熱いお茶を一口すすり、
「師匠のおかげで邪龍、邪神に勝つことが出来ました。どうもありがとうございました」
「そうか。邪竜はともかく、邪神に打ち勝つとは、なかなかなかなか」
リンサは上機嫌だ。
僕が持ってきた上質のお酒をくいっと空ける。
「で、どんな邪神だ。邪神と呼ばれる者達にも色々いるからな」
「はい。名はアラク、大地の戦神と名乗ってました」
リンサは驚いたように、
「なに!上級神ではないか!こいつは大金星だ。どのように勝った」
そうして根掘り葉掘り僕から邪神アラク戦を聞きだすのだった。
話が終わると、リンサはしばらく目を瞑り、何か思案しているようだった。
それから一つ頷くと、
「よし、決めたぞ!我もそなたの大陸へ連れて行け」
僕は驚き、
「えっなぜですか?」
「そなたが何体も邪神を倒したからじゃ。さらに今回は上級神じゃ。これからそなたは邪神達に狙われることになる」
リリアンが横から、
「さすがユウ。邪神にもモテモテ」
「いや、邪神にモテてもうれしくないから!」
僕はリリアンにツッコミを入れつつ、
「いやいや、肉体を持った邪神の集団がこの世界には残っているのじゃ」
なんだって!?そんなの初めて聞いたぞ!
リンサはまたクイっと酒をあおると、
「そなたを脅威とみなせば一斉にやってこよう」
そ、それは勘弁してほしい!
「ま、邪神の監視は我が役目。アラクもそなたらが倒せねば、この剣の出番となったことだろうよ」
ぽんぽんと剣の鞘を叩く。
えっ、ということはリンサは邪神より強いのか?
僕の疑問が聞こえたのか、
「こう見えても昔は善なる神々と共に、邪神と戦っていたものよ」
リンサ、あんた一体何歳なんだ!
「……わかりました。では師匠、ぜひ私たちと共に来て下さい」
「おう。ま、よろしくな」
そう言うと仙人リンサはまた上機嫌で酒をあおるのだった。




