決戦6 女神フレリス
私は意識を持っていかれそうなのを必死に耐える。
ここで意識を失うと、おそらく私は二度とこの世に帰ってこれない。
女神が私に問う。
『……人の子よ。私を呼んだのはそなたか』
必死に意識を繋ぎとめる。
大事な人の顔を思い浮かべる。
また再び会うために。
『狂気に包まれる私を日が暮れたにも関わらず、表の顔で召喚するとは』
女神の言葉には若干感心が含まれて感じられた。
『それでそなたの望みは何か』
……私の望みは……あの捉えられている少女を救い出すことと、……邪神アラクを倒すこと。
『ふむ。後者はともかく少女を助けるのはたやすい事よな。待っておれ』
と言った瞬間、リリアンの体を拘束していた鎖がはじけ飛んだ。
術者たちが驚き慌てる。
そしてリリアンの体が掻き消えると、次の瞬間には私の前に現れる。
女神は私の体を操り、リリアンを鞍に乗せると、自分は宙に浮かび上がる。
『レッドドラゴンよ。その子はまかせるぞ』
『承知した』
ラフェが返事をし、リリアンを鞍に乗せたまま上昇する。
黒龍達が追おうとしたが、女神が手をかざすとその動きが止まった。
『では次の願いか。アラクとはまた懐かしい名を聞いたな』
そして女神はそうつぶやくと、私の体は宙を飛び、アラクとの戦場へと向かったのだった。
一斉に放った必殺の僕らの攻撃を、邪神アラクは次々とはじき返す。
僕と姉さまの攻撃をその武器で受け止め、ミオの攻撃のことごとくを二本の腕で捌ききる。
紅の牙の“彗星斬り”は防御するまでもない、と、蜘蛛の体の表面に弾かれる。
リヨンの“降龍”を、残った腕で装備した武器で受け止める。
眼前に現れた三人のティーリンを頭突きで吹き飛ばし、しかしそこを限界まで細く発現させたマナの“エターナルフレアソード”が目を狙って突き伸ばされる!
それを首を振って逃れるが、避けきれず、頬をかすめた!
一瞬で長く伸ばしたためか、その瞬間にエターナルフレアソードは消えてしまったが、その攻撃は頬を焼き、初めてアラクを傷つける。
しかし全員で総攻撃してかすり傷一つか!?
いやまだだ、僕らの攻撃はまだ終わっていない!
いつの間にか走り込んだリヨンが、アラクの巨大な足に向けて、死角から攻撃を放つ!
最初に“降龍”を放ったのは上へと意識を向けさせるためだったのか!
「“白神拳・神撃”!!」
その神を倒すために作られた究極の技が、高められた気と共に放たれ、八本の足のうちの一本をあらぬ方へとへし折った。
アラクの顔が驚愕に歪む。
「俺の体に傷をつけるかっ!!」
当たりさえすれば攻撃は効く!
エターナルフレアソードはアラクの皮膚を焼き、リヨンの攻撃は足をへし折った。
しかし次の瞬間、
「うぬっ!!」
アラクが気を張ると折れた足が元通りに戻る。
くそっそんなに簡単にはいかないか。
さすがに“再生”は持っているか。
それでも、それでもやるしかない。
僕らは折れかけた心をまた燃え上がらせ、アラクに向けて再び闘志を燃やす。
そこへ月の光が辺りを強く照らし出した。
いや違う。
頭上から薄く光を纏った人物が降りてくる。
強い力を感じる。
あれは……女神か!?
間に合わなかったのか……!?
違う、あれは、あの鎧姿はミモザか!?ミモザがなぜ!?
アラクが呆然と言葉を掛ける。
「お前は……フレリス……なぜだ、なぜフレリアではない!?」
それにはフレリスと呼ばれたミモザが答える。
「ふふ。この少女が命を賭してフレリアの召喚を遮り、私、フレリスを召喚したのですよ」
なんだって!?自分の流派以外の“女神召喚”だって!?
それは最悪自分の魂すら代償にしているはずだ。
「女神召喚だと!なるほど、ならばその器を壊し、今一度狂気の女神フレリアをこの世に顕現させるまでだ」
邪神アラクは黒いオーラをほとぼらせ、身に纏う。
「この少女の願いによって、あなたの力を封じさせてもらいます」
女神フレリスがその身から光を放ち邪神アラクを照射する。
僕らの頭に女神フレリスの声が響く。
『今です、みなさん。アラクの“再生”と“力の一部”を封じました。私にできるのはそこまでです。あとは人が決着をつけるのです』
僕らは頷くと、また再び邪神アラクへと立ち向かっていく。
ミモザが起こした奇跡を無駄にしないためにも。




