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勇者の弟12歳  作者: 山吹向日葵
蓬莱大陸編
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決戦6 女神フレリス


 私は意識を持っていかれそうなのを必死に耐える。


 ここで意識を失うと、おそらく私は二度とこの世に帰ってこれない。


 女神が私に問う。


『……人の子よ。私を呼んだのはそなたか』


 必死に意識を繋ぎとめる。


 大事な人の顔を思い浮かべる。


 また再び会うために。


『狂気に包まれる私を日が暮れたにも関わらず、表の顔で召喚するとは』


 女神の言葉には若干感心が含まれて感じられた。


『それでそなたの望みは何か』


 ……私の望みは……あの捉えられている少女を救い出すことと、……邪神アラクを倒すこと。


『ふむ。後者はともかく少女を助けるのはたやすい事よな。待っておれ』


 と言った瞬間、リリアンの体を拘束していた鎖がはじけ飛んだ。


 術者たちが驚き慌てる。


 そしてリリアンの体が掻き消えると、次の瞬間には私の前に現れる。


 女神は私の体を操り、リリアンを鞍に乗せると、自分は宙に浮かび上がる。


『レッドドラゴンよ。その子はまかせるぞ』


『承知した』


 ラフェが返事をし、リリアンを鞍に乗せたまま上昇する。


 黒龍達が追おうとしたが、女神が手をかざすとその動きが止まった。


『では次の願いか。アラクとはまた懐かしい名を聞いたな』


 

 そして女神はそうつぶやくと、私の体は宙を飛び、アラクとの戦場へと向かったのだった。











 一斉に放った必殺の僕らの攻撃を、邪神アラクは次々とはじき返す。


 僕と姉さまの攻撃をその武器で受け止め、ミオの攻撃のことごとくを二本の腕で捌ききる。


 紅の牙の“彗星斬り”は防御するまでもない、と、蜘蛛の体の表面に弾かれる。


 リヨンの“降龍”を、残った腕で装備した武器で受け止める。


 眼前に現れた三人のティーリンを頭突きで吹き飛ばし、しかしそこを限界まで細く発現させたマナの“エターナルフレアソード”が目を狙って突き伸ばされる! 


 それを首を振って逃れるが、避けきれず、頬をかすめた!


 一瞬で長く伸ばしたためか、その瞬間にエターナルフレアソードは消えてしまったが、その攻撃は頬を焼き、初めてアラクを傷つける。

 

 しかし全員で総攻撃してかすり傷一つか!?


 いやまだだ、僕らの攻撃はまだ終わっていない!


 いつの間にか走り込んだリヨンが、アラクの巨大な足に向けて、死角から攻撃を放つ!


 最初に“降龍”を放ったのは上へと意識を向けさせるためだったのか!




“白神拳・神撃”ホワイトフィスト・ゴッドブレイク!!」




 その神を倒すために作られた究極の技が、高められた気と共に放たれ、八本の足のうちの一本をあらぬ方へとへし折った。


 アラクの顔が驚愕に歪む。


「俺の体に傷をつけるかっ!!」


 当たりさえすれば攻撃は効く!


 エターナルフレアソードはアラクの皮膚を焼き、リヨンの攻撃は足をへし折った。


 しかし次の瞬間、


「うぬっ!!」


 アラクが気を張ると折れた足が元通りに戻る。


 くそっそんなに簡単にはいかないか。


 さすがに“再生”は持っているか。


 それでも、それでもやるしかない。


 僕らは折れかけた心をまた燃え上がらせ、アラクに向けて再び闘志を燃やす。 



 そこへ月の光が辺りを強く照らし出した。



 いや違う。


 頭上から薄く光を纏った人物が降りてくる。


 強い力を感じる。


 あれは……女神か!?


 間に合わなかったのか……!?


 違う、あれは、あの鎧姿はミモザか!?ミモザがなぜ!?


 アラクが呆然と言葉を掛ける。



「お前は……フレリス……なぜだ、なぜフレリアではない!?」



 それにはフレリスと呼ばれたミモザが答える。



「ふふ。この少女が命を賭してフレリアの召喚を遮り、私、フレリスを召喚したのですよ」



 なんだって!?自分の流派以外の“女神召喚”だって!?


 それは最悪自分の魂すら代償にしているはずだ。



「女神召喚だと!なるほど、ならばその器を壊し、今一度狂気の女神フレリアをこの世に顕現させるまでだ」



 邪神アラクは黒いオーラをほとぼらせ、身に纏う。



「この少女の願いによって、あなたの力を封じさせてもらいます」



 女神フレリスがその身から光を放ち邪神アラクを照射する。



 僕らの頭に女神フレリスの声が響く。

 



『今です、みなさん。アラクの“再生”と“力の一部”を封じました。私にできるのはそこまでです。あとは人が決着をつけるのです』




 僕らは頷くと、また再び邪神アラクへと立ち向かっていく。



 ミモザが起こした奇跡を無駄にしないためにも。



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