玄武城
僕と姉さまは蘭青将軍の案内の下、玄武の城、玄主城を目指し馬を走らせていた。
なぜ馬かと言うと、竜で移動できるのは白虎の領地内だけだったからだ。
関所を通り、玄武の領域に入ってからは、馬を調達し移動していた。
時間がかかるが、玄武族に敵認定されてもつまらない。
馬で五日の距離を途中何度も休憩し、馬を交代させながら進む。
帰りは空を飛ぶ許可を得て、飛んで帰れば十分間に合うだろう。
そして五日目。
僕と姉さまは玄武の城、玄主城の前に立っていた。
地球で言う所の中世の中国にありそうな城だ。
巨大な門を開け、巨大な中庭を通る。
すべて赤で塗られた木造の建物たちが僕らを迎え入れる。
城下町についた時点で使いを出していたおかげか、すんなりと謁見の間まで通される。
王座の間に座っていたのは、髪と髭を伸ばすだけ伸ばした老人だった。
儀仗兵たちの他には、黒髪の全身ミスリルの鎧を着た屈強な男が老人の斜め前に控えている。
蘭青将軍が膝を折って挨拶をする。僕と姉さまもそれにならう。
「お久しゅうございます、閣下」
「うむ。楽にしてよいぞ。そなたも元気そうで何よりじゃ」
そして僕と姉さまをじろりとにらむ。
老人のくせにやたらと鋭い眼光だ。
「で、勇者と名乗るのはどちらだ」
姉さまが一歩前に出る。
「は。私でございます陛下。ラマス大陸が勇者、アンフィと申します」
玄武王はじろじろと姉さまを見ながら、
「ふむ。まだだいぶ若いの。邪神が復活し、勇者が現れたから、我が国の国宝をよこせと言うか」
一癖も二癖もありそうな老人だな。
これはしぶりそうだ。
蘭青将軍が助け舟を出す。
「陛下。邪神が復活しております。このままでは玄武の領地に侵攻するのも時間の問題ですぞ」
そんな蘭青将軍をじろりと睨み、
「わしはまだ邪神の復活など信じておらんよ。報告もきとらん」
姉さまが、
「ではどうすれば私に武器を貸していただけますか」
玄武王がふーむと唸る。
「……そうじゃな、お主が勇者と証明できれば与えんでもない。……頑鉄よ」
「ハッ」
玄武王は傍らに控える黒髪の屈強な男に声を掛ける。
「この男は頑鉄と言う。三人おる大将軍の一人じゃ。そうだな、この男と戦ってみよ。本物の勇者であれば玄武族の将の相手など余裕であろう?」
姉さまは即答する。
「それをもって勇者と認めていただけるのならば」
玄武王は立ち上がり、宣言した。
「ふむ。では勝負は本日、正午からとする」
僕らは頭を下げ、一度謁見の間を後にする。
「玄武王が頑固とは知ってはいたが、まさかこんなことになるとは」
蘭青将軍が思わず愚痴る。
姉さまが蘭青将軍をなだめる。
「いいわよ。問題ないわ。あいつ相手にひと暴れすればいいんでしょう」
僕は少し考えてから、袋から刀を出し姉さまに渡す。
「なんかいやな予感がするんだ。御守り代わりにこれをもっていって」
姉さまは刀を受け取り、鞘から引き抜く。
ヒヒイロカネ独特の七色の光が鈍く光る。
「前に邪神配下の持っていた剣を打ち直したんだ。一応持っていって」
姉さまはそれを自分の腰に挟んだ袋に仕舞いながら、
「聖剣と神刀があるから、使わないと思うけどね。ありがと、借りとくわ。」
一度城を出て、城下町で食事と休憩を取る。
そうこうしているうちに、時間は過ぎ、約束の時間、正午になった。




