龍の邪神
絶え間なく降り注ぐ電光と共に、轟音が辺り一面に鳴り響く。
「朱雀十剣!!対雷式、一っ!!!!」
「“電撃剣”!!!」
僕が雷を朱雀十剣で打ち消していくのと同時に、姉さまも自身の剣で電撃を受け止めていく。
味方の陣営のあちこちから火の手が上がっていく。
一分か、五分か……それとも二十分か……。
轟音が鳴りやんだのは果たしてどれだけ経ってからだっただろうか。
怒号とうめき声が辺りを充満していく。
「これは酷い……」
「ひどいにゃ……」
皆がテントから出てくる。
僕と姉さまのおかげで比較的このあたりの被害は少ない。
姉さまは空の一角を睨むと、
――――神級光魔法“武装天使鎧”
呪文を唱え空へと飛び出す。
僕もあわてて、同じ呪文を唱え、姉さまの後を追おうとしたところに、
「敵襲だーっ!!」
味方の兵士が声を上げた。
丘の上の陣地から下方を見る。
なんだあれは。
黒い蠢くものが攻めてきている!
「黒い骸骨の兵だにゃ」
夜目の利くミオが敵の正体を知らせる。
僕は空を見上げる。
姉さまだけでは危険だ。
「悪い、僕は姉さまを追う。他の皆は地上で敵の相手を頼む」
「わかたにゃ」
「「はいっ!」」
「兵の回復は私が」
「お気をつけて!」
「こっちはまかせろっ」
僕は頷くとすぐに背中の翼を羽ばたかせ姉さまの後を追う。
空高く雲の上。
姉さまはその黒い邪龍と向かい合っていた。
あれは……。
轟炎か……?しかしこのプレッシャーは……。
いや、轟炎の頭の上に誰かが立っている。全身に漆黒のマントを纏い姿は窺い知れない。
距離があるのにやたら届く声でそいつは言った。
「ふん。ハエが一匹増えおったか」
姉さまが轟炎に剣を突き付け、言い放つ。
「言ってくれるじゃないの。そのハエの強さ、思い知らせてやるわ」
僕は姉さまの隣に並び飛ぶ。
よかった。一人で特攻してはいなかった。
邪神と轟炎の組み合わせだ。一人で勝てる相手じゃない。
……二人でもどうなるかはわからないが。
「くくく。まあ昼間のお返しだ。ずいぶん我が軍を虐めてくれたらしいからな。そちらも同じぐらい減ってもらわねば不公平というものだろう」
姉さまはぎりりと歯を食いしばり、
「お前を倒して、すべてを終わりにする」
「あっはっはっは。ハエの割にはよく囀るわ」
邪神がそう言い終わった瞬間。
手のひらを僕らに向けて伸ばし、そこから極太の電撃を放つ。
僕と姉さまは同時にその電光の中へと飛び込んだ。
姉さまの剣と僕の刀が電撃を絡めとる!
高速で邪神へ向かいカウンターで技を放つ!
「“真竜雷撃剣”!!!」
「対雷式、三ッ!雷王電撃斬っ!!!」
威力を上乗せし、斬りかかる!
「ほう、やるではないか」
しかし邪神は右手で姉さまの剣、左手で僕の刀を受ける。
僕は驚愕する。
喋る余裕すらあるなんてっ。
硬いものに打ち付けたかのような衝撃を受け、僕と姉さまは弾き飛んだ。
くそっ分かっていたがやはり強い。
だけどまだまだっ。
姉さまは光の魔力を、僕は神気を練り上げる。
お互いの体から純白のオーラが立ち昇る。
「ほう。これはなかなか」
感心したようにそう言うと、邪神は自身の黒いオーラを膨れ上がらせる。
辺りが黒いオーラに侵食されていく。
なんだこれは!?
「くくっどれ、揉んでやろうか。掛かって来るがいい」
邪神はそう言い放ち、マントを投げ捨てた。




