撤退
切り飛ばした轟炎の左腕がくるくると回転しながら落ちていく。
「アアアアアアア!ガアッ!!!」
しかし轟炎はその場で体をひるがえし、勢いをつけ尾を僕に叩きつけた。
僕はそれを喰らい、吹き飛びながら反省する。
くそっ今のだって朱雀十剣を使えば受けながせたはず。
僕もまだまだ甘いっ。
轟炎はいまいましげに僕を睨みつけると、
「ガアッ!!!!!」
天に向かって咆哮する。
すると……。
切り飛ばしたはずの左腕が再生した!?
“再生”のスキル持ちだったか!
そしてそのまま両手を前に突き出すと手のひらから魔法陣が生まれる。
何をする気だ!?
いや、落ち着け。何が来ても朱雀十剣がある限り大丈夫だ。
僕はあらゆる事象に対応するために、気と魔力を練り上げる。
轟炎が吠える!
「……来い!我が眷属よ!」
次の瞬間。
大量の黒龍達が魔法陣から次々と現れる!
召喚魔法か!
ここで使えるのか!?
僕が蓬莱大陸で魔神たちを召喚しようとしても、出来なかったからてっきり召喚は出来ないと思ったのだが、何か条件があるのか?
「お前たちに後はまかせる。いけ!やつを食い殺せ!」
いくぶん小さいが、総勢五十体ほどの黒龍の群れだ。
轟炎と戦いながらだとさすがにきついな。
黒龍達が僕に向かって襲い掛かって来るのと同時に、轟炎は後ろを向いて逃げ去って行く。
逃げるのかよっ。
くそっ黒龍達が邪魔でこれでは追いつけない。
僕は追うのを諦め、黒龍達に向かい刀を振り上げた。
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僕は黒龍達を殲滅した後、白虎の城へと戻り、呪いに侵されていた姉さまを治療する。
城には先に着いていた白雪の両親、王と王妃がいて、作戦が成功したことを知らされた。
王と王妃を救出するために、少数精鋭で乗り込んでいたらしい。
僕は慌てて姉さまたちの後を追ったから、いまいち状況が分かっていなかったけど、やっと事態が飲み込めた。
それにしても……。
あの轟炎と言うのは何者だ。
姉さまだって昔の魔王に敗北した姉さまではない。
今の姉さまに呪いをかけるなんてかなりの実力者だ。
邪神に近い力を持っているという事になる。
それを姉さまの様子を見に来た龍の王に伝えると、
「邪龍じゃな。轟炎め、どうやったか邪神の力を取り込んだのであろう。以前起こった邪龍戦争。あれの再来じゃ」
憂う表情で返事が来た。それから、ベットで横になっている姉さまに向かい、
「人族の勇者よ。どうか我らに力を貸してはもらえないだろうか。邪龍相手に戦えるのは伝説によると人族の勇者しかおらぬゆえに」
それを聞いた姉さまはベッドから降りながら、
「ええ。乗り掛かった舟です。最後まで共に戦いましょう」
そう言いながら手を差し出し、龍の王と握手した。
それから僕は……。
皆に再会して一体どこに行ってたんだと、もみくちゃにされたのだった。




