窮地
「かはっ」
盛大に血を吐く。
その赤黒い閃光は、私の光の鎧を貫通し脇腹に穴を開ける。
なんとか致命傷は避けたか。
しかし体から力が抜けていく。
さらに一発。肩を貫通し、もう一発、頬をかすり血がパッと宙を舞う。
次の一発は何とか体をひねり、しかし避けきれず太腿に穴を開けた。
くっだめだ、魔力が乱れて翼の制御が効かない。
気を失いそうになるのを気合で耐えるが、体はきりもみしながら落下していく。
「アンフィ―っ!!」
竜体のラフェが、落下する私の下に回り込み、ミモザが私を受け止める。
いけない、ラフェでは体が大きすぎる。蜂の巣にされてしまう。
そう考えている間にも、城から飛んできた赤黒い閃光がラフェの翼の皮膜に穴を開ける。
しかしラフェはそのままぐんぐんと速度を上げる。
白や青の龍たちが、黒龍たちを押さえてくれてる。
白雪も両親と合流した時点でスカイヤと一緒に離脱したようだ。
追撃は……来ない、か?
あれだけの威力の攻撃だ。連続して放てるわけではないのだろう。
なにしろ神級光魔法“武装天使鎧”の装甲を貫いた攻撃だ。
放ったのは魔王級以上の強さを持った奴だ。
ミモザが私の傷を治そうとして、悲痛な声を上げる。
「駄目です!私では治せません!黒い斑点が……。呪いも一緒に喰らっています!」
そうか。これを放ったやつが白雪に呪いをかけた張本人と言うわけか。
城の方から闇のプレッシャーが膨れ上がっていく。
何か来るっ……。
赤黒い閃光を放った何かがっ。
そしてそれは闇の奔流と共に姿を現した。
城から出てきたのは黒刃を二倍にしたような巨大な黒龍。
遠目でもわかるぐらいに黒いオーラが体を覆っている。
こいつは……やばい。
魔王……いや、それ以上の強さを感じる。
その黒龍は空へうねる様に飛び上がり、
「グオオオオオォオォオオオオオォオォオオオ」
雄叫びと共に私たちの後を追う。
ミモザが、
「ラフェっ!敵が追ってくる!」
ラフェは力強く羽ばたきながら、
「私のが早いはず!……くそっ翼の傷があるから微妙かっ」
ミモザがマントを切り裂き、私の傷の応急手当てをする。
「追い付かれたら戦うしかない」
私は“自動体力回復”のスキルを使い、なんとか傷を塞いでいく。
しかし完全回復には程遠い。
まだかなり距離があるが、少しづつだが差が縮まってきている。
時間が欲しい。回復する時間が……。
どれくらい飛んだだろうか。もはや黒龍の顔がはっきりわかるぐらいに近づいている。
もう追い付かれるのは時間の問題か。
「追い付かれる!やるしかない!」
しかしその瞬間。
『そのまま飛び続けて!』
頭の中で声が聞こえた。
前方から青いものが近づいて来る。
スカイドラゴンだ!
王と王妃を置いて戻って来てくれたのか!?
しかしよく見るとスカイドラゴンは鎧を身に着けていない。
それじゃあ、あれは…あれはっ!
ミモザの歓喜の声と私のあげた声が一致した。
「「オルター!!」」
スカイドラゴンに変化してるオルターは私たちと一瞬で交差すると、
「よくも皆を傷つけてくれたなっ!」
そのまま黒龍に飛び掛かった。




